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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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王都マンダカル

マリアガ王国の王都マンダカル

2000年もの歴史を誇る惑星最大の都市であり、中心の王城を囲む堅牢な城壁が3重に張り巡らされ

ダンジョン国家の威容を物語っている。

もっとも古い1層目の城壁内は、国の中枢機関に研究所や王立大学、王族·貴族らの住居が立ち並ぶ。

そして最も広い2層目の城壁内は王都の暮らしそのものである、商店に工場や住宅と区画ごとに整理され

上空から見ると碁盤の目のように整然と建物が立ち並び、四方に学校や公園、闘技場に広場が配置されて

有事に備えている。2層目を見るだけで優秀な者が計画した都市だと一目で納得するだろう。

そして外周部となる3層目の城壁内は、この王国がダンジョン攻略を礎に興った国であることが伺える。

城壁に沿って100近くのギルドが立ち並び、それぞれの区画を守っており、ギルドを中心にギルド員である

ガーダーたちが居を構える。

その裏側には魔獣の素材を処理するための精肉、皮や骨の加工工場が軒を連ね。

技術者や職人、商人たちの住居や飲食店、宿屋が城壁にへばりつくように立ち並んでいた。


ほぼ円形の城塞都市マンダカルの中央に王城が鎮座し、その王城の最上階の中央には国王パイス·サンドゥ

が重厚な玉座に腰を下ろし、朝から続く不穏な報告に眉をしかめていた。


ダラス宰相の横に立つ、若い執務官がガーダーの集めてきた報せを読み上げる。

「昨日の昼頃に爆発とともに噴煙を上げ続けているサランドル·ダンジョンですが、ダンジョン内にいた

ガーダーの生存は上層部にいた数十名のみ生存が確認されております、上層の魔獣たちは何かに追われるように

散開していき、現在は中層部の魔獣たちも裾野を下り始めている頃だろうと報告が入っております」


「よりによって、余の代でダンジョンの噴火が起こるとは……近隣の村の避難誘導は進んでいるか?

ダンジョン近くの村では魔獣による被害が出ているのではないか?」

玉間にパイス·サンドゥの声が響く、齢300を超えるハーフエルフの国王の身体は痩せ細ってはいるが、眼光鋭く

その声の響きからも、聴く者に畏敬の念を抱かせるには十分な重さを含んでいた。


その国王の問いにダラス宰相が立ち上がり答える。

「それが巡回中のガーダーの報せによりますと、付近のいくつかの村で異様な武装に槍や細く長い剣を持った

異国の戦士が村に迫っていたゴブリンなどの下層の魔獣を退治したという報告が多数入っております。」


「なぜ異国の戦士だとわかるのだ?」


「それが……言葉が通じないということです」


「なんだと!?つまりブランデン大陸の外から海を渡ってきたというのか?そのような武装をした戦士が

何人も我が国に突如現れたと?」

ブランデン大陸にはマリアガ王国を含む20ほどの国が点在しており、共通の言語で統一されている。

もっとも近くに位置する別の大陸までは船で数ヶ月の距離と離れており、交流は限られていた。


「それが……申し上げにくいのですが、その異国の戦士と思われる一団が外郭の検問所に現れました

身分証も持たず、言葉も通じないため現在検閲所で軟禁しております。いかがいたしましょう……」

治安局長のハリスが立ち上がり、国王の指示を待つ。


「我が王国の民の命を救ってくれたのが事実であれば追い返すわけにもいくまい!?外交問題に

発展しかねん……かといって魔獣を倒すほどの戦士に王都内を自由に歩かせるわけにもいかん

ハリスよ、軟禁を解き3層内のみの入都を許可する、案内役をつけさらに監視の目を怠るな

今は異国の戦士よりも、サランドル·ダンジョンの様子と魔獣の動きを把握せねばならぬ」

苦しそうな咳をした後にセルザ将軍の名を呼ぶーーパイス·サンドゥ国王


セルザ将軍に指示を伝えると、王都マンダカル防衛のために動き出す。


『サランドル·ダンジョンの噴火と、突然の異国の戦士らの来訪……果たして無関係なのだろうか?

もしもダンジョンの恵みが途絶えたら、この国は終わりだがな』

さらに額にしわを深く刻む国王だった。



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