表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/34

暗闇の中で




 ジャーコン商会倉庫前。

 たくさんの荷役が何台もの馬車に荷物を積み込んでいる、激しい状況だった。

 大きな怒鳴り声、罵声。殺気だっているのか元からかわからないけれど、怖い……。

 

 もし見つかったら、命の危険すらありそう。


 やっぱり別の方法を探るべきかしら。


 そんな気持ちも沸いてしまうけれど……。


「……でも、早く伝えなくちゃ…………」


 わたくしが生きていること。

 無事なこと。

 だから戦争の必要なんてないこと。

 もう一度結婚式だってやり直せばいいのだわ。


 誰も、戦争なんて望んでいないのですもの。


「……よし。行くわよ」


 まだ手の付けられていない荷物の山へ、荷箱の影に隠れながらそろそろと向かう。

 心臓はドキドキうるさい。

 見つかったらどうなるかわからない。

 

「バカやろう! もっと丁寧に運べ! 中身壊れたら弁償だぞ!!」


 すぐ近くで大きな怒鳴り声。

 空気がビリビリする。

 その声の主が遠ざかるまで、息を潜めてじっと祈って……。


 ザッザッと足音が遠ざかる。


 ほっと息を吐いて、わたくしはとうとう荷物のひとつに忍び込んだ。


◇◇◇


 ガタガタと揺れている。

 真っ暗で、狭苦しくて、息苦しくて……カビ臭い。

 胸が悪くなりそう。

 必死に体を小さく丸めて、袖で鼻と口を抑えて耐える。

 どのくらいかかるのか。そもそもどのくらい経ったのか。わからない……。そのことがまた怖くて。


 わたくしは、もう、ずっと怖いのだわ……。


 暗闇の中で運ばれていると、考えたくないことも次々思い浮かんでしまう。

 ばぁやは元気かしら。

 わたくしが死んだと聞かされた時はどう思ったかしら。

 そもそも……わたくしが居ないことにばぁやは気付かなかったのかしら。

 それもなんだか不自然……。


 ぞくりとする。


 嫌な考えが脳裏をよぎる。


 フェルダー……。

 冷酷に、仲間の命を奪うような男……。

 わたくしを攫うときに、ばぁやを……もし……手に掛けていたら……?


「っ…………!!」


 そんなこと。いくらなんでもそこまで。きっとしないわ。そこまで酷いこと。


 でも。


 もし、そうだったら……。


 許さないわ、フェルダー。


 最悪な暗闇の中、フェルダーへの怒りは、わたくしの心を恐怖から遠ざけた。

 皮肉なことね……。


 ◇◇◇


 やがて、揺れや音が静かになって……。

 ガタガタと積荷を下ろす音が聞こえて……。


 わたくしは、無事に王都に辿り着いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ