暗闇の中で
ジャーコン商会倉庫前。
たくさんの荷役が何台もの馬車に荷物を積み込んでいる、激しい状況だった。
大きな怒鳴り声、罵声。殺気だっているのか元からかわからないけれど、怖い……。
もし見つかったら、命の危険すらありそう。
やっぱり別の方法を探るべきかしら。
そんな気持ちも沸いてしまうけれど……。
「……でも、早く伝えなくちゃ…………」
わたくしが生きていること。
無事なこと。
だから戦争の必要なんてないこと。
もう一度結婚式だってやり直せばいいのだわ。
誰も、戦争なんて望んでいないのですもの。
「……よし。行くわよ」
まだ手の付けられていない荷物の山へ、荷箱の影に隠れながらそろそろと向かう。
心臓はドキドキうるさい。
見つかったらどうなるかわからない。
「バカやろう! もっと丁寧に運べ! 中身壊れたら弁償だぞ!!」
すぐ近くで大きな怒鳴り声。
空気がビリビリする。
その声の主が遠ざかるまで、息を潜めてじっと祈って……。
ザッザッと足音が遠ざかる。
ほっと息を吐いて、わたくしはとうとう荷物のひとつに忍び込んだ。
◇◇◇
ガタガタと揺れている。
真っ暗で、狭苦しくて、息苦しくて……カビ臭い。
胸が悪くなりそう。
必死に体を小さく丸めて、袖で鼻と口を抑えて耐える。
どのくらいかかるのか。そもそもどのくらい経ったのか。わからない……。そのことがまた怖くて。
わたくしは、もう、ずっと怖いのだわ……。
暗闇の中で運ばれていると、考えたくないことも次々思い浮かんでしまう。
ばぁやは元気かしら。
わたくしが死んだと聞かされた時はどう思ったかしら。
そもそも……わたくしが居ないことにばぁやは気付かなかったのかしら。
それもなんだか不自然……。
ぞくりとする。
嫌な考えが脳裏をよぎる。
フェルダー……。
冷酷に、仲間の命を奪うような男……。
わたくしを攫うときに、ばぁやを……もし……手に掛けていたら……?
「っ…………!!」
そんなこと。いくらなんでもそこまで。きっとしないわ。そこまで酷いこと。
でも。
もし、そうだったら……。
許さないわ、フェルダー。
最悪な暗闇の中、フェルダーへの怒りは、わたくしの心を恐怖から遠ざけた。
皮肉なことね……。
◇◇◇
やがて、揺れや音が静かになって……。
ガタガタと積荷を下ろす音が聞こえて……。
わたくしは、無事に王都に辿り着いたのだった。




