表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/31

慟哭と目覚め



ァァァァァァァァァァアアアアアアア――――



 ………………


 …………


 ……


 …


 だれかが。


 泣いてる?


 嘆いている?


 恐ろしいほどの慟哭に震える。


 血を吐くような悲しみと苦しみが、押し寄せるよう。

 剥き出しの痛みに切り裂かれるよう。


 それも。


 ふいに。


 ぜんぶ。



 パチンと弾けるようになくなってしまう。



 ………………


 …………


 ……


 …


 ・



◇◇◇



「ァァァァァァァァァァあああ!!!!」


 地の底から噴き出すようなその声は、わたくしの喉から搾り出されていた。


「あっ……ぁ、……は、ぁ……?」

「お嬢様……!」

「……え」


 目を開けると、そこはいつものわたくしの寝室。ベッドの上。天蓋があって。脇には、泣き腫らして真っ赤な目をしたばぁやがいて、わたくしの手を握りしめていて。


「お目覚めですな……」


 少し嗄れた声が聞こえて視線を向けると、白髪の目立つ黒髪の……


 ゴト


 杖をつく、いつもの、足音……。


「………………フェル……ダー?」

「……、感激ですな、お嬢様。三日三晩高熱にうなされても、私のことを覚えていてくださるとは……」

「………………イヤミ、ね?」


 なんだかぼんやりして、フェルダーのイヤミが上滑りだわ。

 三日三晩の高熱。

 わたくしは……。


 変だわ、なんだかちっとも頭が働かない。


 フェルダーの手がわたくしの脈を測るように手首に触れる。

 聴診器で心音を聞かれて、目を照らしながら覗き込まれて、口をあーんして。


「特にこれといった所見はありませんな。念のため、薬湯を出しておきます。ジーナさん、お嬢様にしっかり飲ませていただくように」

「えぇ、はい! それはもう!」


 わたくしの意思を無視してばぁやとフェルダーが話を進めている。

 

「なんだか……頭がぼんやりするわ……わたくし……どうして……」


 ここに居るの。

 この違和感はなに?

 

「っ――」


 体が。

 急にあちこちが熱くて痛い!

 手足がバラバラになりそう……!


「イヤッ……!」

「お嬢様……!? お嬢様、どうされました。フェルダー先生、お嬢様が……!」


 怖い。痛い。熱い。


「お嬢様……。ご心配いりませんよ。お嬢様は……なにも……」

「フェルダー……?」


 パサパサの白髪頭の隙間から、真っ暗な影みたいに隈の濃い目が覗いて。

 血の色みたいな目が、まっすぐわたくしを捉えて射抜く。


「あなた……相変わらず酷い顔ね……」


 わたくしの言葉に、フェルダーは口を歪めるみたいに笑って。


「今夜は……ゆっくりお休みください、お嬢様」


 ゴツ。

 杖をついて立ち上がるフェルダーが、踵を返して部屋を出て行く。


「フェルダー先生のおっしゃる通りですよお嬢様。さっそく薬湯を飲んで」

「ばぁや。……フェルダーは、いつから杖をついていて?」

「……? お嬢様? フェルダー先生なら、もうずっと前から杖をおつきじゃありませんか」

「……そ、う。そう……。そう……? そうだったわ、ね」


 わたくしは。

 何か釈然としないまま、ばぁやの入れた薬湯を飲んで。

 すぐに、眠くなってしまったわ――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ