慟哭と目覚め
ァァァァァァァァァァアアアアアアア――――
………………
…………
……
…
だれかが。
泣いてる?
嘆いている?
恐ろしいほどの慟哭に震える。
血を吐くような悲しみと苦しみが、押し寄せるよう。
剥き出しの痛みに切り裂かれるよう。
それも。
ふいに。
ぜんぶ。
パチンと弾けるようになくなってしまう。
………………
…………
……
…
・
◇◇◇
「ァァァァァァァァァァあああ!!!!」
地の底から噴き出すようなその声は、わたくしの喉から搾り出されていた。
「あっ……ぁ、……は、ぁ……?」
「お嬢様……!」
「……え」
目を開けると、そこはいつものわたくしの寝室。ベッドの上。天蓋があって。脇には、泣き腫らして真っ赤な目をしたばぁやがいて、わたくしの手を握りしめていて。
「お目覚めですな……」
少し嗄れた声が聞こえて視線を向けると、白髪の目立つ黒髪の……
ゴト
杖をつく、いつもの、足音……。
「………………フェル……ダー?」
「……、感激ですな、お嬢様。三日三晩高熱にうなされても、私のことを覚えていてくださるとは……」
「………………イヤミ、ね?」
なんだかぼんやりして、フェルダーのイヤミが上滑りだわ。
三日三晩の高熱。
わたくしは……。
変だわ、なんだかちっとも頭が働かない。
フェルダーの手がわたくしの脈を測るように手首に触れる。
聴診器で心音を聞かれて、目を照らしながら覗き込まれて、口をあーんして。
「特にこれといった所見はありませんな。念のため、薬湯を出しておきます。ジーナさん、お嬢様にしっかり飲ませていただくように」
「えぇ、はい! それはもう!」
わたくしの意思を無視してばぁやとフェルダーが話を進めている。
「なんだか……頭がぼんやりするわ……わたくし……どうして……」
ここに居るの。
この違和感はなに?
「っ――」
体が。
急にあちこちが熱くて痛い!
手足がバラバラになりそう……!
「イヤッ……!」
「お嬢様……!? お嬢様、どうされました。フェルダー先生、お嬢様が……!」
怖い。痛い。熱い。
「お嬢様……。ご心配いりませんよ。お嬢様は……なにも……」
「フェルダー……?」
パサパサの白髪頭の隙間から、真っ暗な影みたいに隈の濃い目が覗いて。
血の色みたいな目が、まっすぐわたくしを捉えて射抜く。
「あなた……相変わらず酷い顔ね……」
わたくしの言葉に、フェルダーは口を歪めるみたいに笑って。
「今夜は……ゆっくりお休みください、お嬢様」
ゴツ。
杖をついて立ち上がるフェルダーが、踵を返して部屋を出て行く。
「フェルダー先生のおっしゃる通りですよお嬢様。さっそく薬湯を飲んで」
「ばぁや。……フェルダーは、いつから杖をついていて?」
「……? お嬢様? フェルダー先生なら、もうずっと前から杖をおつきじゃありませんか」
「……そ、う。そう……。そう……? そうだったわ、ね」
わたくしは。
何か釈然としないまま、ばぁやの入れた薬湯を飲んで。
すぐに、眠くなってしまったわ――。




