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違和感

 冬の気配が濃厚になってくると、アカデミー内の空気もどこかソワソワと浮ついているよう。


 話題は間もなくの新年祝賀の式典のことも増えてくる。


「………………」

「ルティカ様……どうなさったのですか、難しい顔をなさって……」

「あ、あら、ミレイさん! ご機嫌よう。えぇ、わたくし、どんな顔をしていて……?」

「はい、ご機嫌麗しゅう。……え、と、どんなと言われると……。なんだか、うぅん……」


 アカデミーの正門で行き合った幼友達のミレイさんといつも通りのご挨拶を交わすものの。

 ミレイさんは頬に手を当てながら、じっとわたくしを見つめて、右にかくん、左にかくんと首を傾げている。

 わたくし自身拭い去れない奇妙な違和感をずっと抱えているから、それが知らず顔に出たのかもしれなくて……。


 でも、わたくしが抱えている違和感を誰かに話せば、きっと頭のおかしい女と思われるだけ……。

 

「……なんでしょうか、なんだか……少し、落ち着かれた……?」


 ミレイさんの口からようやく出てきた言葉に、わたくしはピンと来なくて困惑してしまう。


「あっ、あの……少し前まで、今度の新年祝賀の式典に出られるかどうかとか、どんな神託がくだるかとか、折に触れて話されていたのに……最近はちっとも」

「あ……、そ、そう……ね? そういえば、そう……だわ……」


 ミレイさんに言われてわたくしもハッとする。

 新年祝賀の式典は、わたくしにとって……いいえ、誰にとっても憧れのもの。

 式典に出ることが許されるのは、高位の貴族や王族、または特別な功績を打ち立てたりした方に限られる。貴族の中でも立派に大人と認められる年齢になるまでは許されない。

 だから……わたくしは……ずっと憧れていた。

 式典に出られるということは、わたくしも大人になったということで……。

 

 それに。


 神託……。


 もしも、わたくしに神託がくだされたら……。

 それが結婚の相手を示すものなら……。

 そのお相手は……。


「ルティカ様……? どうされたの、やっぱり少し……もしや体調がお悪いのではありませんか?」


 打ち沈んでいく思考にとらわれて、わたくしったらつい黙り込んでしまったわ!


「いいえミレイさん! なんともありませんわよ! 実はお兄様から手紙が来て……祝賀の式典に出ることを許されたの。それで……いざとなると緊張してしまうのよ、このわたくしとあってもね……! おほほ!」

「まぁ……。そうだったのですね。おめでとうございます、ルティカ様」


 ミレイさんが目を丸くして驚いた顔をする。

 彼女の家格では式典に出席はそもそもできもしないから、その眼差しには羨望が混ざっても仕方のないこと。

 

「新しい年は、どんな神託がくだるのでしょうね」


 ミレイさんが無邪気に言う。

 

 わたくしは。


 一瞬。あたりの音も空気すらもが遠のいて息苦しいような感覚。

 胸の奥が妙に冷えていく。

 ズキリと胸が痛むような心地に思わず手でおさえる。


「ルティカ様……?」


 ミレイさんの訝しむような声、視線。


 健康に問題があると思われたら、わたくしの将来に暗雲が垂れ込める。

 知られるわけにはいかない。


 わたくしはなんともない顔でにこりと微笑んで見せて。


「考えるとドキドキしてしまうわね」


 そう、誤魔化した。

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