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玲央のカラフル・デイズ  作者: ぺへほぽ
第1章:はじまりの季節と、私の選択
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危なくて、一人にしておけない

悠斗のお母さん、面白すぎ!僕のこと「天使」だって!


悠斗が心配してくれてたのは、藤沢くんのことだったんだ。


「危なくて、一人にしておけない」なんて真剣に言われちゃって…もう、僕の心臓がもたないよ…。

嵐のような歓迎

悠斗の家の呼び鈴を鳴らすと、「はーい」という明るい声と共に、悠斗のお母さんが出迎えてくれた。


「まあ、玲央ちゃん!いらっしゃい!って、きゃあ!ちょ、ちょっと待って、何その格好、かわいすぎじゃない!」


お母さんは、玲央の姿を上から下まで舐めるように見つめ、マシンガントークが始まる。


「え、うそ、天使?天使がうちの玄関に舞い降りたのかと思った!ねえ、そのトップス何!?白かと思ったら袖がふわっふわのシースルーじゃないの!超かわいい!で、スカート!そのくすみブルーのチェック柄、上品すぎ!丈も完璧じゃない!足、ながっ!ほそっ!(ちょっとめくりながら)あら、これパンツになってるの?賢いわねぇ!靴下も見て!ちゃんとレースついてるじゃないの!もう、靴まで可愛いし!あ、髪!髪も見て!そのキラキラの星のピン!誰がやったの!?玲央ちゃんが自分で!?もう、完璧すぎておばさん、めまいしてきたわ!ねえ、悠斗!悠斗ちょっと見なさいよ!うちの玄関に本物のアイドルがいるわよ!どうしよう、サインもらっとくべき!?」


はぁ、はぁ、と一人で興奮して息を切らしたお母さんは、うっとりとした目で玲央を見つめ直す。


「はぁ〜……眼福、眼福……。ねえ、お願い、玲央ちゃん」


そして、その熱に浮かされたような瞳のまま、こう続けた。


「そのふわふわしたほっぺ、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ触らせて……」 「…はぁ。幸せ」 と悪ノリを始めた。その時だった。


「母さん、何してんだよ!」


階段から下りてきた悠斗が、呆れた声で母親を制する。玲央は、ナイスタイミングで現れた親友に、助け出された格好になった。


白馬の王子様

二階に上がっていく二人をお母さんは、「後でお茶を持っていくからね〜。二人とも、仲良くねっ」と、玲央が少し恥ずかしくなるような、意味ありげな言い方で見送った。


玲央は、久しぶりに悠斗の部屋に足を踏み入れた。女の子になってからは、初めてだ。なんだか少しだけ、空気が違うように感じる。


悠斗は、玲央の可愛すぎる格好に、明らかにドキドキが止まらない様子だった。何か言いたげなのに、言葉がうまく出てこない。玲央は、そんな悠斗の様子を見て、自分から切り出すことにした。


「ねえ、さっき去り際に、すごく心配そうな顔してたよね。何かあったの?」


その言葉に、悠斗は少し話しづらそうにしながらも、とつとつと語り始めた。


「……先週の、藤沢のことなんだけどさ。あいつの言い方、すごく気になってるんだ。玲央と付き合いたいって言ってたよな。でも、あいつ、普段の話とか聞いてると、付き合いたいっていうより、自分の思う通りにしたいだけみたいな、嫌な雰囲気があるんだ。もちろん、憶測だけで言うのはあいつにも失礼だって分かってる。でも……玲央が、辛い目にあったりしないようにって思って。……思い切って、言った」

挿絵(By みてみん)

そこまで話した時だった。「おじゃまですかね〜」と、からかうような声と共に、悠斗のお母さんがお盆を持って部屋に入ってきた。


「母さん!」


悠斗は母親に出ていってほしいオーラを全開にするが、お母さんは全く気にする様子もなく、話に加わりたいようだ。お母さんは、玲央に許可を求めるように、「ねえ、玲央ちゃん。おじゃま虫も、いてもいいですかね?」と首を傾げる。玲央は断り切れず、「あ、はい。大丈夫です」と答えてしまった。


居場所を確保したお母さんは、しばらく玲央の可愛さを語り、また「悠斗のお嫁さんに」という話を始める。


「玲央に心配なことを伝えてる、大事な話の最中なんだから!ほんとにおじゃま虫なんだけど!」


悠斗が本気で追い払おうとすると、「まあ、玲央ちゃんに心配なこと?」とお母さんはなぜかワクワクした顔で聞き返した。


「人生経験豊富なお母さんのアドバイス、いいかもよ?ねっ?」


玲央に同意を求められ、「……はい」と答えるしかない。悠斗は、大きなため息をついた。


「で、どんな心配なのよ?」と切り出すお母さんに、悠斗はもう一度、さっきの話から始めた。


「……で、藤沢の動き、オレもちょっと見張ってるからさ。だから、何かイヤなこと、言われたりされたりしたら、すぐに教えてくれ。すぐに助けるから」


その言葉に、玲央は胸がきゅん、と音を立てるのを感じた。何も言えずに、顔が真っ赤になる。


息子の殺し文句と玲央の乙女な反応を見たお母さんが、目を輝かせた。「悠斗、まるで白馬の王子様みたい!お姫様の玲央ちゃんを守るのね!」


「もう、本当に出てってくれ!」 悠斗の絶叫で、お母さんはようやく「はいはい」と笑いながら退散した。


俺が説教しようと思ってたのは、それだ!

再び二人きりになった部屋で、玲央は「お母さん、面白いね」と笑う。


「あれで、本人はまじめに言ってるつもりらしいんだよ。手に負えないだろ」 悠斗は、心底疲れたというようにため息をついた。


それから玲央は、悠斗の気遣いに心からの感謝を伝えた。「ありがとう。何かあったら、絶対に悠斗に相談するね」と言う。


話が一段落したところで、悠斗が切り出した。


「なあ、玲央さ。その服って……」


「あ、これ?これね、出がけにお姉ちゃんがコーディネートしてくれたの。悠斗の家に行くって言ったら、『じゃあ、おしゃれしなきゃ!』だって」 玲央は、少し楽しそうに続ける。


「でも、せっかくこんなに可愛くしてもらったから、そのままこの格好で来ちゃった。ねえ、悠斗。……僕、かわいい?」 その一言に、悠斗の表情が険しくなった。


「それだよ!玲央、それなんだ!俺が説教しようと思ってたのは!」


急に強い口調になった悠斗に、玲央はびくっとして体をすくませる。そのいたいけな反応に、悠斗はしまった、という顔になった。


「あ……いや、ごめん。玲央が悪いんじゃないんだ。だけど、玲央。お前も男だったんだから、分かると思うけど……玲央みたいに、かわいい……っ」 そこで、悠斗の言葉が詰まる。


(あ、ついにかわいいって言わせた!)


玲央は心の中でガッツポーズをした……つもりだったが、その勝利の感覚は、すぐに猛烈な恥ずかしさに変わった。玲央は、カッと熱くなった顔を隠すように、俯いてしまう。


気まずい沈黙が、部屋を支配する。二人とも、この長い沈黙に耐えられないのに、話し出すきっかけが掴めない。


しばらくして、やっと玲央が、消え入りそうな声で言った。


「……僕が、悪いよ。聞き方、まちがえた。……言われると、恥ずかしいものだね」


「あのなぁ……」観念したように、悠斗が口を開いた。「はっきり言うぞ。玲央は、その辺の誰よりもかわいいよ。それだからこそ、変なことしようとする男が寄ってきたりするんだって、分かっててほしいんだ。それなのに、そんな格好で、無防備に『かわいい?』なんて聞くな。危なくて、一人にしておけないだろ」


悠斗が、本気で自分のことを考えてくれている。そのことが、ひしひしと伝わってきた。


同時に、(どの辺が、どういうふうにかわいいのかな?)なんて聞きたくなる自分の気持ちに気づき、何か変だ、と感じる。玲央は、からかうような言い方をぐっとこらえて、顔を上げた。


「ありがとう、悠斗。ちゃんと気を付けるし、心配なことがあったら、絶対に悠斗に頼るね。ほんとに、助かる」

安心して、ふわっと花がほころぶような表情をすると、悠斗はさっと顔を背けた。


「おまっ……、ぐっ」 変な擬音のようなものを発して、悠斗はすっと立ち上がる。


「……家まで、送るぞ」


ぶっきらぼうだけど、その言い方に頼もしさを感じて、玲央は「ありがとう」と微笑んだ。


玄関まで見送りにきたお母さんに、玲央が「おじゃましました」と言うと、悠斗は「心配だから、送っていく」とぶっきらぼうに告げる。お母さんは、意味ありげにニヤニヤしながら言った。


「あらあら、少しでも長く一緒にいたいのねぇ」


悠斗が、また心底あきれた顔をしたのは、言うまでもない。


あんた、ほんっと、やるじゃない……!

悠斗に送ってもらって帰宅した玲央は、リビングで待ち構えていたお姉ちゃんに、根掘り葉掘りすべてを聞かれることになった。


悠斗が藤沢のことを心配してくれていたこと、悠斗のお母さんが乱入してお嫁さん話で盛り上がったこと、そして、悠斗に「かわいい」と言わせようとして、逆に説教されてしまったこと。


玲央が、悠斗についに「かわいい」と言わせたと心の中でガッツポーズをした瞬間、猛烈に恥ずかしくなって、二人で長いこと沈黙してしまった場面を話すと、お姉ちゃんのニヤニヤが止まらなかった。


「あんた、ほんっと、やるじゃない……!」


その言葉が、褒め言葉なのか何なのか、玲央にはもう分からなかった。

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