次の影
みんなと仲良くなれて、クラスの空気もすっごく良くなった!
毎日が、本当に楽しい。
でも、なんでだろう…。
教室のうしろのほうから、藤沢くんがずっと僕のことを見てる気がする。
なんだか、ちょっとだけ、こわいな…。
教室の空気が塗り替わる
週が明けた月曜日。学校には、ちょっとした、しかし誰の目にも明らかな変化があった。
玲央が「おはよう」と教室のドアを開けた時だ。以前なら、遠巻きに様子を窺うか、あるいは無視を決め込んでいたはずの二人が、玲央の元へ駆け寄ってきたのだ。
「玲央、おはよ!」
「土曜日、すっごく楽しかったね!」
田中美優と田代環が、屈託のない笑顔で声を掛けてきた。
「美優、環、おはよ!うん、土曜日すっごく楽しかったよね〜!」 玲央も、満面の笑みで応じる。
先週までの、あの険悪で、息苦しいような雰囲気を知っているクラスメイトたちは、一瞬、何が起きたのか分からないという顔で三人を凝視した。あの田中と田代が、水沢と、下の名前で呼び合って、親しげに笑っている。その光景は、教室の空気を一瞬にして塗り替えるほどのインパクトがあった。男子生徒たちも含め、クラスの誰もがそのあまりの変化に面食らった顔をしている。
しかし、それが敵意ではなく、間違いなくハッピーな変化だと分かると、教室の雰囲気は一気に和やかなものになった。
温かい空気と、暗い瞳
その温かいムードは、担任の村山先生が入ってきてからも続いた。
朝の会が始まる前の、賑やかな時間。環が、思い出したように玲央に言った。
「ねえ、玲央ー。玲央の写真さ、姉貴に見せたら、すっごく興味持ってさ。『この可愛い子だれ!?今度遊びに連れてきて!』って言うんだよ。いつ来れる?」
「えー!見せたの?どの写真?」
「んー、全部見てたよ。アクシーズのとか」
「もう、個人情報〜!」 玲央が、少しだけ不満そうに頬を膨らませると、環は「ごめんごめん」と軽く手を合わせて謝る。その親密なやり取りを見ていた村山先生が、心底びっくりしたという顔で口を挟んだ。
「お前たち、いつの間にそんな仲になったんだ?」 すると、美優が少し誇らしげに報告する。
「先生!わたしたち、土曜日に、木綿花や彩花も入れて五人で遊んだんです。すっごく楽しかったんですよ!」
「そうか……」先生は、玲央の顔を見て、本当に嬉しそうに微笑んだ。「水沢、良かったな」
「うん。先生、ありがとう!」
玲央は、心配をかけた先生に、満開の花のような、かわいすぎる笑顔を向けた。
教室が、温かい空気に包まれる。
だが、その光景を、教室の後ろの方の席から、一人だけ不穏な表情で見つめている生徒がいた。
藤沢だった。彼は、楽しそうに笑う玲央と、その周りに集まる友人たちを、何かを値踏みするような、暗い瞳でじっと見つめているのだった。




