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玲央のカラフル・デイズ  作者: ぺへほぽ
第1章:はじまりの季節と、私の選択
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全部玲央のおかげ

カフェでおしゃべりして、みんなと、もっともっと仲良くなれた。


「玲央のおかげだよ」なんて言ってもらえて、すっごく嬉しかったな。


僕の心の中のことも、正直に話せたんだ。みんなが聞いてくれて、本当によかった。

「あーー楽しかった!」


「ほんと、笑いすぎた!」


イオンモールの中にあるスターバックス。口々にそう言いながら、五人はそれぞれのドリンクを片手に席に着いた。今日一日のお買い物(と言うより、玲央を弄り倒す遊び)の話で盛り上がる。


ドリンクが半分ほど減ってきた頃、美優がふっと真剣な顔になって口を開いた。


「ねえ、玲央。昨日、玲央が言ってた『僕のことを知ってもらう』って話、本当だったんだね。玲央って、すっごく面白いし、かわいいし、一緒にいて楽しい」 その言葉に、環も大きく頷く。


「うんうん。着せ替え、めっちゃ楽しかった。でもさ、あのアクシーズの店員さん、びっくりだったよね。私、正直ちょっと引いてたもん」


「僕だって、引きたかったけど、すごい迫力だったよ……」玲央は、遠い目をして答える。「でも、このバレッタは、なんだかんだで割とお気に入り」 自分の髪に留められた、キラキラ光る蝶のバレッタに、玲央はそっと触れた。


「でもさ、店員さん、親切だったよね」彩花が、スマホを操作しながら言った。「『いくらでも撮っていいですよ』って言ってくれたから、玲央のこと、いっぱい撮っちゃった。ねえ、玲央、ここのみんなにはシェアしていいよね?」


「えっ、うん……いいけど。ちなみに、何枚くらいあるの?」


「100枚以上は撮ったかな。玲央、目つぶりかけの顔とかも、すっごくかわいいよ」


「えーーっ、そんなのシェアしないで!今すぐ消してよ〜!」

挿絵(By みてみん)

「彩花、それ全部ちょうだい。後で送って」 玲央の悲鳴を、木綿花が冷静に遮る。そして、美優と環に向き直った。


「美優、環。今日はほんとにありがとね。二人とも、一緒に遊んでみたらこんなに楽しい子たちなんだって思ったよ」


「ううん、こっちこそ。これ、全部玲央のおかげだよね」環が、はにかみながら言う。「玲央が昨日、話してくれなかったら、絶対無理だったもん」


「そうなんだよね」美優も、しみじみと頷いた。「なんか、玲央のすごさって、そういうとこだよね。もし私が玲央みたいに言われたら、絶対ガン無視してるもん」


そこまで言って、美優ははっとしたように付け加えた。「……って、そんなことしたのは私なんだけどね。玲央、あらためて、本当にごめんね」


「ううん。大丈夫だよ」玲央は、優しく微笑んだ。「だって、二人にもちゃんとした理由があったんだもん。心配すぎて嫌になる気持ちって、しょうがないと思うよ」


心の中って、どうなの?

その言葉に、美優は何かを決心したように、玲央の目をまっすぐに見た。


「玲央ってさ、見た目は完全に女の子なのはもう分かってんだけど、気持ちっていうか、心の中って、どうなの?」


その問いに、玲央の心臓が少しだけドキリとした。(もしかしたら、答えの内容によっては、また気持ち悪いって思われちゃうのかな……)

挿絵(By みてみん)

一瞬の不安がよぎったが、もう、この四人には嘘をつきたくなかった。玲央は、正直に自分の気持ちを話し始めた。


「僕はね、小学校の頃は、ほとんど男の子の気持ちのままだったと思う。でも、もともとが女の子だったっていうことが分かって、そのことを真剣に考えたんだ。そしたらね、思い返すと、いろんなときに、女の子の気持ちで物事を考えてることが多かった気がするんだ。可愛い服着てる女の子たちがうらやましかったり、小さい子どもがすごく好きだったり、ピアノの弾き方とかも、なんか……思い出すこと全部。だからね、今の僕は、すごく自分らしいって思ってるんだ。でも、ほんとにずっと男の子として、しかもつい最近までそうだったから、それが邪魔することもあるよ」


「え、どんな時?」彩花が興味深そうに訊ねる。


「うん、例えばね、椅子に座るとき。女の子って、スカートの時とか、ちゃんと脚を閉じて座ったりするでしょ?それがまだ自然にできなくて、お母さんによく注意されるんだ。でも、男の子の時って、脚を閉じてるほうがおかしいって思ってたから、急に変わるのって大変だなって。あ、あと……トイレに行くとき、つい男子の方に入っちゃいそうになるっていうか……この前、本当に入っちゃって、大変なことになるところだった」


「大変なことって?」すかさず美優が食いつく。


「通報されるとか、かなぁ……」玲央は、恥ずかしそうに続ける。「デパートだったんだけど、みんなの視線が一気に僕に集まって。それでも最初、僕、何が起きてるか分からなくて『何?』って感じだったんだけど、順番を待ってたら、おじさんが小声で『ここ、男子トイレですよ』って教えてくれて、それで初めて気づいたの。すごい恥ずしくて……。『あ、そうですね』ってパニックで答えちゃって、急いで出てきたんだ」


「ウケる!『あ、そうですね』って!」 美優がギャハハと大笑いする。その隣で、木綿花が本気で心配そうな顔をしていた。


「うそ!玲央ちゃん、通報っていうか、その逆だよ!玲央ちゃんの場合、襲われないか、そっちの方が心配だよ!」


写真データは全転送

「あ、やばい。もうこんな時間だ。帰る時間だよね」 誰かが言ったのをきっかけに、五人は名残惜しそうに席を立った。最後に、お店の人にお願いして、五人での記念写真を撮る。帰り際、彩花が「写真、あとでグループLINEにシェアするからね〜!」と手を振り、五人はそれぞれの家路についた。


玲央が家に帰ると、待ってましたとばかりにお姉ちゃんが飛んできた。


「おかえり、玲央!どうだったのよ、今日の女子会は!」


根掘り葉掘り聞かれ、玲央は楽しかった一日を報告する。お姉ちゃんが一番聞きたかったのは、もちろん、自分が全力でコーディネートした玲央のファッションへの、みんなの反応だった。


「みんな、すっごく可愛いって言ってくれたよ」


「でしょー!当然よ!」


その話の流れで、アクシーズファムに行ったことを話すと、お姉ちゃんの目の色が変わった。


「え、アクシーズファム!?めっちゃ可愛い服あるとこじゃん!わたし行ったことないよ。なんでまた、そんな店に?」


玲央が経緯を話すと、お姉ちゃんは「写真とかないの!?」と詰め寄ってくる。ちょうど彩花からシェアされた写真のアルバムを見せると、試着室での可憐な玲央の姿に「ぎゃー!何これ、かわいすぎ!」と大興奮。あっという間に、お姉ちゃんのスマホにも全データが転送させられてしまった。


その騒ぎに、お母さんも会話に加わり、玲央の写真を見ては「まあ、本当にかわいすぎるわね」と感動したり、大笑いしたり。


玲央の今日は、本当に、忘れられない一日になった。


これからもずっと、みんなと友達でいたいな。


心からそう思いながら、玲央は幸せな気持ちに包まれて、心地よい眠りについた。

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