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玲央のカラフル・デイズ  作者: ぺへほぽ
第1章:はじまりの季節と、私の選択
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僕から、話しかけたい

毎日楽しいけど、やっぱり田中さんたちのことが、ずっと気になってる。


このままじゃ嫌だなって…。


だから、僕から話しかけてみようって決めたんだ。


すっごく怖いけど、自分でやらなきゃって思ったから。

平穏な日々と、胸の痛み

あれから数日。最初の1、2日が嵐のようだったのが嘘みたいに、拍子抜けするくらい平穏な日々が続いた。


玲央は少しずつ気持ちに余裕ができて、クラスのいろんな子たちと話せるようになってきた。女の子はもちろん、男の子たちとも、ごく自然に会話を楽しめる。それは、玲央にとって大きな喜びだった。


でも、ふとした瞬間に田中さんや田代さんの姿が視界に入ると、やっぱり少しだけ胸がちくりと痛んで、意識してしまう。そんな自分が嫌で、玲央は時々、軽い自己嫌悪に陥る。

挿絵(By みてみん)

(最初に村山先生が言っていた通りなんだ。二人だって、僕のことを知らないから不安だったんだよね。それに……お姉ちゃんが言っていたみたいに、もし、嫉妬する気持ちもあったんだとしたら、なおさら混乱しちゃったのかも……)


そう考えているうちに、玲央は二人に対する、自分の中の閉ざされた気持ちみたいなものを、なくしたいと思うようになっていた。


玲央ちゃん、正気?

そんなことを考えていた金曜日の休み時間、木綿花が玲央の席にやってきた。


「玲央ちゃん、土曜日ひま?良かったら一緒に遊びにいこうよ。今、彩花とかにも声かけてて、何人になるかまだ分かんないけど」

中学生になって初めて迎える週末のお誘い。嬉しくないわけがない。玲央は「行く!」と即答してから、何となく、ほんとうに何となく、今の木綿花になら話せそうな気がして、思い切って切り出した。


「あのさ、木綿花ちゃんは、田中さんと田代さんのことって……どう思う?もし、嫌じゃなかったらなんだけど……僕、二人に声を掛けてみたいなって、思ったんだ」


その言葉に、木綿花は目を丸くした。


「えーーっ!?玲央ちゃん、本気で言ってる?だって、田中さんと田代さんって、この前あんなに玲央ちゃんのこと悪く言ったんだよ、忘れてないよね!?わたし、親友のこと悪く言われたから、いまでも思い出すとムカムカしてるんだけど!」


「うん、そうだよね。僕をかばってくれたこと、絶対に忘れないよ。すごく嬉しかったし、元気になれたもん。本当にありがとう。……けどね。僕、村山先生の言葉も思い出すんだ」


玲央は、自分の気持ちを丁寧に伝えようと、言葉を続ける。


「先生は、『知らないことがクラスに持ち込まれて、心配するっていう気持ちも、理解できるかな』って僕に訊ねたんだ。僕、そのことをずっと考えてたら、僕から二人に近づいて、もし誤解とかがあったら、それが解けたらいいなって、そう思い始めたんだ」


木綿花はしばらく黙って玲央の話を聞いていたが、やがて「ちょっと待ってて」と言うと、彩花を呼んできた。


「彩花、聞いてよ!玲央ちゃんがね、すごいこと言うんだよ。週末の遊びに、田中さんと田代さんを誘うのはどうかな、だって!」


「えーーっ!玲央ちゃん、正気?あんなにひどいこと言った二人だよ?」


彩花も、木綿花と全く同じ反応だった。

挿絵(By みてみん)

揺るがない決意

「あ、うん。確かに、土曜日の遊びのタイミングでこの話しちゃったから、二人をびっくりさせちゃったよね。ごめんね」 玲央は慌てて補足する。


「遊びに誘うこととは関係なしに、僕が相談したかったのはね。田中さんと田代さんとも、いつか仲良くしたいなって思ってて。そのためには、まず僕から近づいて、いろいろおしゃべりとかして、誤解が解けたらなって思ったってことなんだ。だから、すぐに明日遊ぶとか、そういうことは急いでないよ」


玲央の真剣な眼差しに、今度は木綿花が心配そうな顔になった。


「玲央ちゃんがそう思って声をかけても、またひどいこと言われたらどうするの?傷つかない?」


「うん、そういうこともあるかもね。でも、大丈夫。それは、自分でコントロールできるよ」 玲央は、にっこりと微笑んだ。


「だって、僕が『仲良くなりたい』って思って声を掛けるんだもん。もしそれでダメだったとしても、自分なりに精一杯やったって思えるから、きっと大丈夫」


その言葉に、木綿花も彩花も、ただ息をのんだ。玲央の、見た目の可憐さからは想像もつかない、芯の強さに驚き、そして、すごいと思った。


「……分かったよ。玲央ちゃんが、まず直接話してみたいって言う気持ち、分かった。でも、もし酷いこと言われたら、今度こそ助けに行っていい?」


木綿花の言葉に、玲央は彼女のすごさを改めて実感する。


「木綿花ちゃんは、すごすぎるよ。この前も思ったけど、本当に強いよね」


玲央は感謝を伝えてから、続けた。


「でもね。今回は、全部僕一人でやってみる。そして、結果を二人にちゃんと報告するよ。だから、もしまた何か言われても、それは僕が自分で始めたことだから頑張れる。木綿花ちゃんと彩花ちゃんは、待っててほしいんだ」


その決意を聞いて、木綿花と彩花は、どちらからともなく玲央の両手を取った。


「すごいね、玲央ちゃん……」


「うん、すごい。頑張って、玲央ちゃん!」


「二人とも、ありがとう」

挿絵(By みてみん)

玲央は、二人の温かい気持ちに何度も感謝して、昼休みに実行するための計画を、一人で静かに立て始めた。

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