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いばら姫 5

レグリア卿は処刑場の掃除を手伝う事を、自ら

志願しました。


もしかしたら、一人でも生きている魔女がいるの

ではないかと期待したのです。


そんな時です。死体の中から微かな吐息が聞こえ

て来たのです。


他の兵士には気づかれぬ様に死体を運ぶふりをし

ながら連れて帰ります。


シェリー王女と共に、一人の魔女の命を助けたの

です。


「大丈夫なのですか?」

「えぇ、わずかですが、息はあります。今医者を

 呼んでまいります」

「城の医師はだめよ。お父様にバレてしまうわ」

「分かっております。下町に腕のいい医師がおり

 ます。代金さえ払えば口が硬い人です」

「分かったわ、レグリア卿に任せるわ」

「はい、王女様」


レグリア卿は密か馬を走らせると医師を連れて来

ます。

多額の報酬を出して、一人の魔女の命を救いました。


月日は無常に過ぎてゆき、国は段々と傾いて行き

ました。


シャリー王女も、20歳になります。

他国の王子の求婚も全て断り、未だに独身でした。



「シェリー、そろそろ結婚相手を探してはどうだ?」

「いいえ、お父様。シェリーは、この国の国妃にな

 りたいのです。そうでなければ、修道院へ参りま

 すわ」

「それは……分かった。そうしなさい。もう疲れた

 のでな、私は隠居しよう」



シェリーが修道院に行くくらいならと王様は引退を

決意したのでした。


そうしてシェリー王女は、国妃となったのでした。


わかりやすく言えば、前代未聞の女王の誕生でした。


国が傾き始めた時に、行われた世代交代。

他国からは付けいる隙だらけだと思われた事でしょ

う。


何かと理由をつけての訪問が増えました。


兄のレオン王子と共に学んだ学友のレグリア卿は

新たに就任したてのシェリー女王を支え、よく尽く

しました。


匿われていた魔女が目を覚ますと、そこは王城の

一角でした。


世話をしていたメイドは慌てて、駆け寄ります。


「魔女様、お気づきになられましたか!王女様を

 呼んでまいります」

「待って……どうしてあなたは私を助けたのです?」

「助けたのは、シェリー王女様です。まだ息があっ

 た魔女様を運んで医師に見せたのです」


国王を、そして、この国を恨むはずだった魔女は

戸惑いました。


いっそ、滅びてしまえばいい。

そう言えればよかったと……。


じきにレグリア卿がやってきます。

そして、王女様が現れました。


「魔女様、目が覚めたのですね。よかったです。

 そして改めて、父の非礼、お詫び申し上げま

 すわ」

「……」


黙ったままの魔女は悩みました。

本当なら恨み言でも言いたいのだけれど、魔女の

言葉は現実を歪めます。


それを知っているだけに、何も言えません。


「罵っていただいても仕方ないと心得ております。

 ですが、魔女様にお願いがございます。お兄様

 を、お助けください」


震える王女の声に、魔女は気付きます。


本当なら、眠に入るはずだった王女がここにいる

理由。

それは、王子が代わりになったという事だろう。


あの日、13人目の魔女がかけた呪いによって、国

が変わってしまった。


そうなった原因は魔女にあった。

そう思うと、王女様が可哀想に思えてきました。


「同じ魔女の呪いです。私がなんとかしましょう」

「魔女様……ありがとうございます」

「レオン王子を、お助けください……」


王女の護衛であるレグリア卿は、涙ながらに頼み

ました。


王女以上に必死さが伝わってきます。


「もしや……王子の呪いは……」

「お兄様の呪いですか?」

「はい、あの場に居た者は皆聞いた事です。女性

 を愛せない呪いだと……」

「……!」


それを聞いて、驚くレグリア卿に、シェリー王女

の視線が悲しそうにゆらめきます。


「そうですか……そちらも解くのは時間がかかり

 ますが……善処しましょう」

「魔女様、お願いがございます。服を着替えても

 らえますか?」


王女の横からメイドが現れました。

その手には、宮廷医師の服があります。


「これからは医師として、仕えてもらえませんか?

 それなら、城の中を自由に歩けます」


それと、もうひとつ。

護衛の騎士をつけました。


レグリア卿の部下で口の硬い人です。


こうして、10年という歳月をかけてやっと呪いの弱

まる次期を見計らい解呪の法を試す事となったので

した。


「では、満月の夜に……いいですね?」

「はい。今晩ですわ!」

「今日の夜に決行ですね。やっと、会える……」


各想いを載せて、夜を待ったのでした。



闇夜、空にはまあるい満月が辺りを照らし、一番

呪いが弱まるこの日。

塔の前で儀式が行われました。


王女と、その横にはレグリア卿がついています。


いつも、近づく者を攻撃するいばらはなりを顰め

ます。


レグリア卿が近づいても、ぴくりとも動きません。


「これは……」

「今なら中に入れます。早く王子を起こすのです。

 彼が起きればいばらは消えます!早く中へ」


魔女の声に突き動かされる様に、レグリア卿は真

っ直ぐに走って行きます。


今は、今だけは王女の護衛ではなく、友人を心配

する親友でありたかった。


塔を駆け上がると、一番奥の部屋の扉が開きます。


そこには、いばらに囲まれたレオン王子が、19歳

だった時のまま眠っていたのです。


「レオン……レオン王子……」


レグリア卿は久しぶりに見た友人の顔に涙が溢れ

ました。


手を伸ばすと、いばらは動かずレオンの頬に触れ

る事ができました。


冷たいと思っていた頬は、徐々に赤味がさしてき

ます。


「生きて……いる……」


眠ったまま、動く事はありません。

頬を手で覆うと、抱き起こします。


抱きしめるとまるで眠っているだけの様に、心臓

が動き出したのです。


「レオン……好きです。貴方が亡くなったなど、

 俺は絶対に信じない。叶わなくても、俺は貴方が

 ずっと、好きです。お慕いしております」


今は、この場にレグリア卿しかいません。


眠っている王子の唇をじっと見つめると、そっと

近づき唇を重ねました。


長い長い間、キスをしました。

すると、まつ毛が揺れると、ゆっくり目を覚まし

たのでした。






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