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いばら姫 2

シェリー王女の誕生祭を控え、街でも大きな祭典

が行われていた。


それはもう美しく育ったシェリー王女を見る為に

と各国から著名人が勢揃いしていたからだった。


隣国の王子や、そのまた隣国のと無数の貴族、

そして商人の贅沢を極めていた男達がこぞって

集まってきたのである。


シェリー王女が18歳を迎えれば婚約を結ぶ事も

婚姻を結ぶ事も出来るからだった。


その為、警備も厳重にならざるを得ないのだ。


「すごい盛大に行うんですね?」

「ロア、お前も大変だな〜。当日はどうして

 いるんだ?」

「あぁ、それなら…隊長からいきなり休みを

 いただきましたよ。それってレオン王子の

 計らいでしょう?」

「あぁ、悪いな。服は用意しておくからパー

 ティーに一緒に来てくれないか?」

「それは王子の護衛という事でしょうか?」

「いや……それは…」


レオン王子は言い淀むと、チラリとロアを見上

げた。


言葉で言いにくい時は、いつもこうやって上目

遣いをすると、何も聞かずに引き受けてくれる

事があったのだ。


ロアは盛大なため息を吐き出すと、レオンを睨

みつけた。


「もう、言いにくい事があると、すぐにそうや

 って………全く、無自覚なのが余計に腹立た

 しい……」

「ダメか?」

「うっ……一国の王子のお願いなら、聞かない

 わけにはいかないでしょ?全く、貴方と言う

 人は……」

「ありがとう。では、当日に会場の前でな!ロ 

 ア、もし、僕に出来る事ならなんでもするか

 ら言えよ?」

「その言葉、忘れないでくださいよ?」

「はいはい、今度教えてくれよ。」


ロアはレオンの後ろ姿を眺めると目を細めたの

だった。


自室に戻ったレオンは鏡を眺めながら、笑って

見せる。


「うん、まだ笑える……シェリーの前でも……

 きっと笑える。笑って祝福出来る……」


笑っているのに、涙がこぼれ落ちる。


いつも、自分のそばにいてくれて、頼りになる

重臣。

いつかは騎士団ではなく、側近に取り立てて、

ずっと横にいてほしい存在。


シェリーが気に入ってしまえば、きっと父はそ

のようにはからってしまうだろう。


レグリア卿とて次男が王女に見染められれば、

それ以上嬉しいことはないだろう。

きっとロードリアも……。


「はぁ……僕は何を考えてるんだ……ロアは…」


寂しそうに項垂れると、寝台に横になる。


母は呪いによって死んだとされている。

そして、妹のシェリーも明日、18歳になる時何か

が起こるとされていた。


城の警備も厳重にされており、心配などない様に

思えた。


そして、昔王様はお針子達を追放した。

そして国外で衣服を作り運ぶ様にしたのだ。


呪いでは針に刺されて……とあったらしい。


「この国には針などないだろうに……」


王妃が亡くなった年に、針という針は全て禁止さ

れ、国内に持ち込む事ができなくなったのだった。



生誕祭当日。

朝から騒がしくメイド達が走りまわっていた。


正装をしたレオン王子は、一足早く妹のシェリー

を迎えに来ていた。


「シェリー?もう支度は済んだかい?」

「……」


部屋から物音もしないのを心配になるとメイドを

呼びシェリーの様子を聞こうとする。


メイドは部屋に入ると、すぐに出てきた。


「王女様はおられませんが?」

「シェリーがいない?どこへ行ったんだ?探して

 くれるかい?」

「はい、すぐに他のメイド達にも伝えます」


忙しい上に、今日の主役であるシェリーが居なく

ては盛り上がらない。


慌てて、中庭や、庭園の側にある湖などを見に来

たのだった。


すると、やっと妹のシェリーを見つけた。

声をかけようと近づくと、話声が聞こえてきた。


「レグリア卿、今日はわたくしのエスコートをお

 願いいたしますわ。そして…実は今日婚約の…」

「その事ですが…昨日父から聞きました」

「それでは…」

「お断りさせてください」


ロアの声だった。

はっきりと、王女であるシェリーをフッたのだった。


普通、こんないい縁談はない。

一国の王女なのだ。


他国の王子ですら、シェリーの美しさに惚れるほど

なのだ。

それをこんなあっさりと振るなど、あり得なかった。


「どうしてですの?もう婚約者がおりますの?」

「いえ、おりません。しかし、お慕いしている方は

 います。ずっと、後ろ姿を眺めてきたので、この

 先もこの気持ちは伝えないつもりです」

「それってまさか………お兄様?」


シェリーの言葉に、ロードリアはただにこやかに笑

うだけだった。


今にも泣き出しそうなシェリーは頭を下げ、謝罪す

るロードリアに背を向けると、走って行ってしまっ

た。


そんな場面を見てしまったレオンは気まずい気持ち

でいっぱいだった。


隠れたまま出るに出られず困っていると、真横から

声が聞こえた。


「盗み聞きとは、王子のやる事ではないですね?」

「うわぁっ!」

「俺は、王女の伴侶には相応しくないですよ?それ

 に、ずっと貴方を見ていたいんです。これまでも、

 そしてこれからも…ずっと」

「僕は……僕は…ロアの気持ちに答えられない……

 だって…父がそんな事許さないから……」

「では、レオン王子ではなく、友人のレオンはどう

 なのですか?」

「僕は……僕は、ロアの側にいたい。ずっと、ずっと

 僕だけの……」


言いかけて、ハッと気づく。

この気持ちに言葉をつけるとしたら、××だろう。

だが、そう言ってしまったら、もう戻れない。


レオン王子はロアを残してその場を離れたのだった。





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