いばら姫
とあるお城でのお話です。
王様と王妃様は大変仲が良く、世継ぎが産まれるの
を国民は待ち遠しく思っておりました。
男の子なら賢い子に、女の子なら絶世の美女になっ
て他国でももてはやされるだろうと、噂されるほど
でした。
しかし、結婚して5年が経とうとしています。
全く世継ぎが産まれません。
そこで、国中の占い師を集めました。
そしていつ、どうしたら世継ぎが産まれるのかと尋
ねました。
そして、13人の魔女が城に招待されました。
一人目の魔女は言いました。
『毎夜、月光を浴びなさい。さすれば3年以内には
子宝に恵まれ続けて子供を授かるでしょう』
二人目の魔女が言います。
『国の東にある泉の水を毎朝浴びなさい。さすれば
身体が清められ子供も授かり身体になるでしょう』
三人目の魔女が言いました。
『国王様、暫くお酒をお控えください。さすればす
ぐにでもお子を授かるでしょう。草も同じです』
草とは特殊な薬草で乾燥して火に焚べて吸うと心が
安らかになり、気持ちが楽になるものです。
最近ストレスのせいか多く使っていたのです。
こうして13人の魔女はそれぞれに祝福を述べると、
子供を授かり秘訣を述べていきました。
そうして、最後の魔女が言いました。
『私魔女は決して王様、王妃様を裏切りません。
先ほど申した事を順番に試して見て下さればき
っと、賢い男の子と美しい女の子そ授かるでし
ょう』
王妃様は喜ぶと、その日の夜から月光を浴びて朝
は東の泉の水を浴びて、魔女達の言っていた事を
実行に移したのでした。
王様もそんな王妃様を見て、酒を辞め、草を吸う
のをやめました。
するとどうでしょう。
1年後に王妃様は妊娠したのです。
「おぉ、これは、これは……予言の通りですわ」
「あぁ、そうだな。魔女達には褒美を与えねばな
るまい。無事に産まれたら、呼び寄せる事とし
よう」
王様は大変喜びました。
そして無事男の子を出産し終えて、数ヶ月後。
再び妊娠したのです。
今まで出来なかった子供が二人も出来たのです。
国中が浮かれ、喜びました。
乳母の腕の中には、産まれたばかりの王子が、
そして、王妃様のお腹の中にはもう一人の命が
宿っております。
「王妃様、王子様は今日の元気ですよ」
「えぇ、えぇ、早くこの子にも会いたいわ」
あまりに幸せの絶頂だった王様は、魔女達を城
に呼び寄せたのです。
「王様、あの魔女達を呼び寄せるのはいいので
すが、問題があります」
「あの者たちは、私達に子宝を授けてくれたのだ
褒美を与えねばなるまい。それに、この国では
国の大事に関わる者には金の皿ときんの盃で祝
うという習わしがある。それを使う時であろう」
何も考慮せずいう王様に王妃様は不安気に問いか
けました。
「その金の皿と盃は確か……12枚しかありません。
魔女様は13人。どうするおつもりですか?」
「それは……一人呼ばなければいいだけだろう?」
王妃様は、とても不安でした。
魔女とは、昔から未知の力を持つ者とされていま
した。
自分ではどうにもならない事でも、魔女の力を借
りる事で難事を乗り越えれるとされるほどなので
す。
そんな魔女を蔑ろにして、大丈夫なのだろうか?
………と。
王妃様の出産も無事終えて、女の子が誕生しま
した。
そこで城では大きな催しが開かれました。
魔女達を呼んで、大きな宴が行われたのです。
王子、王女の誕生祭を記念して、魔女の祝福を
貰おうと王様は考えたのです。
不安がる王妃様を尻目に、魔女達は次々に入っ
てきました。
そして、無事12人揃うと、王様の前で傅きます。
一人目の魔女が言います。
『この度はおめでたいお子の誕生に宴まで。王子
には剣術の才を、王女には美しさが備わってい
ることでしょう。』
もう一人の魔女が前に出ると言います。
『おめでとうございます。王子様はお優しく、優雅
な立ち居振る舞いで、他国の姫を魅了するでしょ
う、そして王女様は、国でも最強と謳われる殿方
と末永く幸せになるでしょう』
「それは嬉しい祝福だ。ありがとう」
王様は、感激し金貨を順番に与えました。
そして最後の12人目の魔女が立ち上がった時、会場
の入り口が騒がしくなりました。
そこには、呼ばれていなかった13人目の魔女が立っ
ていました。
『あれほど、魔女の祝福を受けておきながら、この
仕打ちとは………国王も王妃も愚かな……』
「おい、その女を連れだぜ!この場から追い出せ」
「はっ!」
兵士が魔女を取り囲むと、引きずり出す様に会場か
ら連れ出そうとします。
その時、大きな声が響き渡りました。
『愚かな国王よ、お前の息子は女など愛せぬわ。王女
は18歳の誕生日に針に刺されて死ぬ。そして王妃、
お前は…あと一ヶ月で死んで国中が喪に伏すがいい』
連れ出されながらも高らかに笑いながら出ていく魔女
を王様はすぐの処刑する様にいいました。
魔女の言葉は、呪いの様に付き纏います。
いい言葉を言えば祝福になり、悪口を言えば呪いとな
ります。
そして、まだ祝福を言っていなかった12人目の魔女が
言いました。
『王妃様は苦しまず眠るように……そして王子様は愛
する人と、王女様は10年の眠りにつき、最愛の人の
手によって目覚めるでしょう』
「それはどう言う意味だ?王妃は……こいつも謀反を
企てる魔女の一人か!即刻連れていけ!」
「お待ちください。魔女の呪いは私一人では消えませ
ん。ですから少しでも変えようと……」
「煩い、煩い!すぐに連れていけ!」
最後の12人目の魔女もまた、処刑されてしまったので
す。
その一ヶ月後、急に王妃が亡くなり、国は重い空気に
包まれたのでした。
こうして、月日は流れレオン王子は19歳、シェリー王
女は18歳の誕生日を5日後に控えておりました。
「お兄様〜、もうすぐ私の誕生日なんです。もしよか
ったら、レグリア卿をお誘いしてはいけませんか?」
「レグリア卿を?あいつは僕の親友だから誘っておく
よ。シェリーはロアが好きなんだな〜」
「はい、大好きですわ」
ロードリア・レグリア卿。
彼は騎士団長の次男で、公爵だった。
位も高い上に、レオン王子の級友なのだ。
常に一緒に学んできた友人だ。
それを一緒に見ていたシェリーも彼を気にってしまい、
今回、王様の意向もあり、婚約をしたいとシェリーか
ら申し出る予定だという。
レオン王子にとっては友人が妹と付き合うなど、気ま
ずいがそれでも、二人が幸せならと誘う事を了承した
のだった。




