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第4回 高IQ者が学力を落とす罠

 IQ神話を信じてる人たちは、IQが高い人は学力も高いはずと思ってるだろう。だから「IQの低い人が東大に入れるのだから、IQの高い人ならもっと楽に入れるはず」と思う人も多いかもしれない。それは一面では間違ってないが、物事はそう単純ではない。戦後教育、特にゆとり教育には、IQの高い人が学力を落とす大きな(わな)(かく)されているからだ。

 それなのにYouTubeなどでは「高IQ者は勉強ができる(ゆえ)慢心(まんしん)から学力を落とす」と語ってる動画がある。だが、それは動画制作者の勝手な想像だ。高IQ者のことを想像できないのに、低IQ者の理屈でわかった風なデタラメを(かた)るなと文句を言いたい。


 では、どうして高IQ者が学力を落としやすいのだろうか。それは高IQ者の多くが(おさな)い頃から、

「余計なことをするな」

「教わった以上のことをするな」

「そんなことは知らなくていい」

「良いと言うまで、お前は何もするな」

 等々と、ネガティブな文句を言われ続けて育ってきたからだ。

 とにかくIQの高い人は多くの人たちが想像する通り学習能力は高い。すぐに覚えてしまうので、子供の頃はどんどん先へ進みたくてしょうがない。教わったことを()かして、あれやこれやとやり始める子も出てくる。

 ところが、そういう子供の活発な行動を、(こころよ)く思わない大人(おとな)が増えてしまった。

 それが育ての(おや)親戚(しんせき)である可能性は高い。だが、一番厄介(やっかい)なのは勉強を教わる学校の先生から言われた時だ。

 日本の教育制度では飛び級を認めてない。義務教育では落第させることも滅多なことではやらない。できるだけ全員が同じペースで学習を進められるように、平均よりも少し下の子に合わせて学習指導要領が作られている。当然、それでは優秀な子ほど授業が退屈(たいくつ)になってしまう。だから自分のペースで先へ進めたいのだが、原則論やべき論を振りかざして周りに合わせることを強要する悪い教師が増えてしまった。

 学習力の高い子は数回怒られれば、それで()(しゅく)してしまう。そういう大人(おとな)複数(ふくすう)いた場合は、「一生やってはいけない」「この社会では悪いこと」と思い込まされるかもしれない。この洗脳(せんのう)()くのは大変だ。

 また戦後日本のチームワーク神話も、IQの高い人に限らず優秀な人をダメにする集団圧力となっている。優秀な人がもっと努力すれば「和を(みだ)す」「周りの迷惑(めいわく)」、個人的な成果を出せば「目立とう精神」「個人プレー」。当然、ここには周りからの嫉妬(しっと)()じっているが、この同調圧力を(おさな)い頃から受け続けていれば、優秀な人たちの中には「努力しちゃいけない」「本気や全力を出しちゃいけない」と学習する人が出て、学習意欲や自主性を(うば)われた無気力人間、手抜き人間として育てられてしまう。

 これは第1回でも触れた、GHQが日本人から力を(うば)うために仕掛けたネガティブな指導文句による(のろ)いだ。ところが今では悪い大人(おとな)に限らず、世の中にいる身勝手な人たちにとって「〜してはならない」は、相手を牽制(けんせい)する便利な言葉になっている。みごとに呪縛(じゅばく)()いているわけだ。


 その結果としてか、高度経済成長が終わった頃から『マニュアル人間』『指示待ち人間』という言葉が出てきた。それをメディアでは単純に「自主性がない若者」として(あつか)っているが、原因を考えるとGHQの呪縛がハマったせいとも考えられる。

 先に触れたように、IQの高い子供は(おさな)い頃から「余計なことをするな」「教わった以上のことをするな」と言われ続けて、すっかり()(しゅく)している。何度も怒られてトラウマになっているのだ。

 そのためマニュアルが間違ってると気づいても、怒られることを恐れてそのままやってしまう。まして「あれをやりたいと」と思っても、周りから「余計なことをするな」と散々言われ続けてきた経験が働いて、指示が来るか確認が取れるまで自分から動かないように調教されている。

 そのように洗脳されてきたのに、いきなり社会人になったと同時に「自分で考えて動け」「前もって調べておけ」と言われても無理な相談だ。

 周りから少しずつ「ここまでならやっても良い」と学び取り、手を広げさせないと直らないだろう。その時にまた(おろ)かな上司が理不(りふ)(じん)な文句を言おうものなら、またトラウマが発動して仕事ができなくなるのは目に見えている。



 それなのに日本では多くの先進国、(ちゅう)(けん)国に合わせて、子供たちに知能検査を受けさせてIQ130以上あるギフテッドの子供をピックアップしている。だが、日本では統計を取ってるだけだ。他国のようにギフテッドの子供たちに特別な教育を与えてはいない。

 それどころか最近では「IQ130以上は精神障害者」と言い出す精神科医が出てくるほど、IQの高い人を世の中の厄介(やっかい)(もの)、社会()適合者(てきごうしゃ)予備(よび)(ぐん)と見る(ふう)(ちょう)が強まっている。

 たしかに教育現場にいる低IQの教師にとっては、高IQの子供は(あつか)いの面倒(めんどう)な問題児だろう。役所や多くの会社にとっても、エリート幹部が低IQ化している現状では、高IQの部下は本能的に忌避(きひ)したくなる存在である。()(なお)に考えたら()(じょう)な話であるが、これが今の日本社会では(じょう)(しき)になりつつある。

 その結果、IQの高い人は世の中から()(がい)され、引きこもるように追い込まれていくと考えられる。

 故事(こじ)にある『竹林(ちくりん)七賢人(しちけんじん)』も、そういう被害者だったのかもしれない。

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