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第2回 IQとは何か

 IQ──いわゆる知能指数とは、簡単(かんたん)にいえば生まれつきの頭の良さである、洞察(どうさつ)(りょく)(すい)()(りょく)、想像力、深く考える能力、傾向に気づく能力、疑問を感じる能力などを数値化して統計的にあらわした()(ひょう)である。

 ここでいう統計とは(せい)()(ぶん)()だ。あらゆるもののバラツキは、平均値がどちらかの限界値の近くに(かたよ)らない限りにおいて、平均値を中心に左右(たい)(しょう)に分布するという法則性を持っている。またバラツキにも法則性があり、分散(ぶんさん)を示す標準(ひょうじゅん)(へん)()(偏差値でいうなら40〜60)の中に全体の68.3%が入ることが知られている。

 知能指数をあらわすIQは、基準となった人たちの平均をIQ100と置き、IQ90〜110の人が全体の50%になるように数値を標準化している。そのため標準偏差の範囲となるIQ85〜115の人を『標準知能』と呼ぶ。

 なお、今の日本人の平均IQは105と言われている。



 IQを語る上で忘れてはいけないのは、G因子とS因子の存在だ。

  ・G因子 学習や経験によって得られた知力

  ・S因子 生まれつきの知力、()(あたま)の良さ

 人が見せる知的な働きは、この二つが合わさったものである。たとえ生まれつきのS因子が低くても、よい師に(めぐ)り合ってしっかりと(まな)んでいれば、G因子によって高い知力を(はっ)()できるようになる。その意味で学習は大切だ。

 ただしG因子が発揮できるのは、学んだ範囲内での知力だ。生まれ持ったS因子が高くないと応用が()かず、学んだ範囲を離れて想像力は発揮することもできない。また間違ったことを学ぶと修正されないまま、()(たん)が来るとわかっていながら突っ走る弊害(へいがい)を見せることもある。

 そこで知能指数は可能な限り学習によるG因子を排除(はいじょ)して、生まれつきのS因子の高さのみを(はか)ることを求めている。なぜなら先にも触れたように、G因子はあくまで学習によって得られる知力である。学んでないこと、まだ答えの見つかってない問題、そして未知のことへの想像力や、まして創作力に関しては、まったく役に立たない知力だからだ。

 IQテストではS因子のみの知力を測るために、できだけ初見になる問題を解かせるようにしている。ある程度の年齢以上になると未知の問題を用意するのは不可能であるが、慣れてない問題であれば初見に近いと考えて、より正確な知能指数が測れると見なしている。



 次にIQには性差が存在する。これをいうと不愉(ふゆ)(かい)に思う女性が多いかもしれないが、IQ140以上はほとんど男性のみの世界になる。実測(じっそく)した分布データはわからないので正規分布からの推測(すいそく)になるが、高IQの世界では女性は2000人に1人という稀少(レア)な存在である。

 では、女性は知的に(おと)っているのかというと、そこはまったくの逆だ。平均で比べると、女性のIQの方が4ほど高い。日本人の平均は105なので、女性の平均は107、男性の平均は103となるだろう。こういう現象が起こるのは、女性のバラツキの方が小さいためだ。

 男女の優劣(ゆうれつ)が逆転するのは、上から3割ほどのところである。日本人のIQであれば、114あたりで逆転が見られるだろう。そのため中等教育にしろ大学にしろ、進学率が3割を超えたあたりから男女の人数に逆転現象が起きている。



 さて、知能指数は15歳から65歳の間は変化がないという前提(ぜんてい)で語られている。IQは15歳の時の平均を100としたと考えればいいだろう。

 それと子供の頃は直線的に成長すると考えられているため、平均以下のIQについては何歳児相当という表現が使われている。ただし平均以上のIQについては、そのような使い方は間違っている。

 なお知能指数とは異なるが、頭の回転の速さについては経験(けいけん)的に16歳頃から高くなり、それが26歳まで続くことが知られている。ピークは20歳頃と考えられ、以降の頭の回転の速さは20を実年齢で割った速さで落ちていくと言われている。40歳であればピーク時の半分、50歳となると4割までパフォーマンスが落ちるというわけだ。

 もっとも若い頃は頭の回転は早くても知識や経験が足りない。拙速(せっそく)からの手直しが多くなるだろう。そのため仕事の質で考えると、よほど質よりも量が求められる状況(じょうきょう)でなければ、実質的には安定してるのかもしれない。


 知能指数の成長には、大きく3つのパターンが言われている。1つはもちろん一般論で言われる標準(ひょうじゅん)型の成長パターンだ。それに対して成長の早い(そう)(じゅく)型と、逆に成長の遅い(たい)()晩成(ばんせい)型のパターンが知られている。

 早熟型は昔からよく言われる「(とお)神童(しんどう)、十五で(さい)()二十(はたち)過ぎればただの人」のパターンだ。このパターンの人は悲しいことに13歳で知力のピークを(むか)えてしまい、以降は人並みとなるようだ。頭の回転も15〜6歳の頃にはピークが来るため、今の日本においては名門大学の付属校へ進んで推薦(すいせん)やエスカレーターで大卒まで行くなら受験競争向きだろう。だが、大学の一般入試の頃には早くも知力の(おとろ)えが目立ち始めるためか、このパターンと思われる人の多くは数学を()てて文系へ進んだという話を聞く。

 その反対が大器晩成型の人たちだ。知能の(せい)(じゅく)二十歳(はたち)以降までかかるために受験競争にはかなり不利だ。しかし、その分だけ頭の回転のピークも後ろにズレていると思われる。そのためか時々、大学受験に失敗して浪人(ろうにん)生活が始まるが、その中で文系志望から理系志望に変わって大学院まで進んだという人の話を耳にする。これなどはまさに、このパターンの典型(てんけい)だろう。


 一方で知能指数の老化に関しては俗説(ぞくせつ)があるだけで、あまり語られることはない。

 政治家や指導者にふさわしい人物を語る際にはG因子とS因子を合わせて、65歳頃がリーダーとしての知力のピークと言われている。

 しかし歳を取ると()(あたま)のS因子が(おとろ)えて経験ばかりのG因子が大きくなり、(がん)()融通(ゆうずう)()かなくなるという意見もある。

 このあたりの話は個人差や知力を発揮する場面の違いが大きいため、一般化できるような老化のパターンはあるのかは(さだ)かではない。

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