第10回 低IQエリートは反省できない?
今回は気になった話を耳にしたので、備忘録的に語りたいと思う。
低IQで学力の高い人に共通する現象に、
1、記憶が簡単に変わる
2、後知恵に気づかない
3、反省しない
という問題があるという話を聞いた。
1の記憶が変わるというのは、誰でも一つや二つは記憶がすり替わっていた覚えはあるだろう。そういう現象だ。
まず誰であっても、すべてを正確に覚えてるわけではない。それに時間が経つと記憶は曖昧になっていく。
それどころではない。学生時代に必死に覚えたことや、仕事で専門的にやってることですら、気づかないうちに別の記憶とすり替わってることがある。
ある職人は毎日の手慣れた作業のはずのに、ある日の組み立てで上と下を重ね合わせる時の向きを間違えていくつもの不良品を作ったという話がある。作業中に何となく違和感を覚えていても、間違いに気づくまで半日以上かかったそうだ。
これに似た現象として、よくあるアクセルの踏み間違い事故があるのかもしれない。頭の中でブレーキとアクセルのペダルの位置が逆になり、パニックを起こして最後まで踏み間違いに気づかなかった人が事故を起こしてる可能性がある。
ところが、そういう記憶は使われた時に間違いが修正されないと、想い返されるたびに脳の中では記憶の薄れた部分や不完全な部分を後知恵や理想で埋める補正が行われてしまう。それによって書き換えられた記憶が、より強化された記憶として新たに上書き保存されることがあるのだ。これは誰にでも起こる現象である。
その中にはマンデラ効果として、近年、多くの人が事実とは異なる記憶を持つ現象が知られている。
たとえば歴史の教科書に載ってるフランシスコ・ザビエルの肖像画を思い出していただきたい。彼の首には白いヒラヒラした襟回りは付いていないのだが、なぜか多くの人の記憶には付いてることになっている。そのせいで日本ではヒラヒラした襟回りのことを『ザビエルカラー』と呼んでるのだから、そのせいで余計に脳の中でそういう映像が作られる人を増やしているのだろう。
また童謡『メリーさんの羊』の冒頭の歌詞も、多くの人は「♫メリーさんの羊、羊、羊」と覚えているのだが、実際にレコードに録音されてる歌詞は「♫メリーさんの羊、メェメェ羊」のみである。ちなみにこの歌詞の最後も多くの人の記憶には「かわいいね」で終わるのだが、本当の歌詞は「まっしろね」である。
このように記憶が変わっていく現象で昔から言われてるのが、いわゆる「昔は良かった」という記憶の美化現象だ。
これがIQの低い人ほど起こりやすく、かつ間違いを指摘されても記憶が変わったという自覚が弱いそうである。
記憶については、過去の回で「低IQの人の中には、劣った知力を高めの記憶力で補っている」と書いた。だが、それはテストや事務作業向きの中短期の記憶だ。長期の記憶ではない。
この影響で出てくるのが、2の後知恵に気づかない現象だ。低IQエリートには、
「そんなことだろうと思った」
「やっぱり、そういう結果になったか」
という口癖のある人が多いそうだ。これは今知ったばかりの知識で、過去の曖昧になった記憶を塗り替えてしまう現象によるものらしい。
そんな馬鹿なと思う人がいたら、IQが20も離れると相手を理解できないという話を思い出していただきたい。この現象は低い側の人が、高い側の人の考えの深さや真意を理解できないだけではない。それとは逆──高い側の人が低い側の人の思考パターンを読めも思いつきもできないことでもある。大人が子供の思わぬ発想に驚くのに似た話だ。
もしも、自分が今知ったばかりなのに、
「そんなの前から知っていた」
とか、勉強して学んだばかりのことを、
「昔の人は、この程度のことがわからなかったの?」
のように本気で思ってる人は要注意だ。つい先ほどまで知らなかったのに、記憶が書き換えられて元から知っていたように錯覚しているのだ。その結果、学力の高い人の中には自分が超優秀な人間だと思い込んで、傲慢になっていく錯覚の罠に落ち込みやすいそうだ。
ちなみにこの錯覚で興味深い現象として、記憶が後知恵で書き換えられたとは思わず、
「俺は昔からこいつの才能には気づいてた」
「自分には予知能力がある」
などと自慢げに言う人を生み出している。前者については、誰でも似たようなことを言ってる人には何人も遭遇してきただろう。そして後者についても、おそらく今まで生きてきた中で、一人ぐらいは心当たりがあるかもしれない。
そして社会的な問題になるのが、3の反省しないだ。
ただし、これは間違いを認めないのではなく、自分の間違いに気づかないために反省のしようがないというものだ。しかも、これには二つのパターンが考えられる。
一つは後知恵によって記憶が書き換わるため、自分では何が問題で失敗したのかわからないのだ。そうなると反省のしようがない。周りからはプライドが邪魔をして認めない無責任のように見えるが、本人の中では反省すべきところが記憶から消えているのだから反省できないのだ。
もう一つは高学歴だが低IQだからこそ陥る悲劇だ。本人も失敗した結果は理解している。ところが、その原因が間違った知識にすり替わった結果とは気づいてないため、失敗には反省しつつも、間違った知識のまま同じことを繰り返してしまう現象だ。低IQだから自分で原因を見つけることができない。だけど高学歴だったために自分の知識には自信がある。というより彼らにとって自分の知識を疑うのは、これまで歩んできた自分の努力を否定することと感じるのかもしれない。
その最たるものが社会問題となっている、何度も似たような医療事故を繰り返すリピーター医師だ。医師の国家資格を持ってるのだから、学力が低いはずはない。ところが、そういう人の持つ知識の何かが、致命的な間違いにすり替わっているのだ。だが、それがどこにあるのかは本人も周りも気づかず、ただ医療事故という結果だけが出てくるという厄介な問題である。
もしかしたら初歩的な医療ミス──それも医師の国家試験でいえば、解答の選択肢から一つでも選んだら他が正しくてもイッパツで不合格にされるような大間違いなものに変わってるかもしれない。そこに医療事故の結果からたどり着けないから、いつまでも間違いに気づけないわけだ。
とまあ、いろいろ語ってはきたが……。今回の話題となった問題は聞いたばかりで、まだ十分に深堀りできてない。正直なところ、どこまで事実を説明できてるかわからない。という状況なので、その可能性があるという程度の理解に留めておいてもらいたい。
最後に今回の3について書いてる時に思ったのは……。
ただいま中国経済は急速に崩壊している。そこへきて中国人のナショナリズムが高まり、国内にいる外国人を殺害するどころか、海外に出て現地の人たちを襲う刃傷事件まで世界中で起き始めている。これまで中国人が国外で起こしていた傷害事件は、ほとんどが中国人同士で起こしてたのに、それが現地人へ変わったのは危険な兆候だ。
それに加えて中国共産党は、軍事力で周辺国を威圧している。しかもナショナリズムの高まりとともに軍が中央のコントロールを無視する暴走が始まっている。このままでは、いつ軍事衝突が起こるかわからない情勢だ。
そのため中国に進出していた世界中の企業が、続々と撤退を始めている。もちろん日本企業も技術を軍事転用されかねない半導体や精密機械、動力機械などの工場を中心に撤退させ、供給していた部品の輸出を止め始めている。
そういう社会情勢なのに、一部の経団連企業が「しめしめ競争相手がいなくなった。今がチャンスだ」とばかりに中国への新規進出を始めてるのだから、過去の美化された成功例だけを見て、失敗の方は何も反省してないなぁ〜と……。




