表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不動さんと物件めぐり  作者: 雲条 翔
第一家 ・普段の暮らしの中にも運動を強制される部屋
3/10

第3話 ダンベル付き家具


「地下四階はキッチンです」


「でかい冷蔵庫もあるし、食器棚、電子レンジ、オーブン、小型のワインセラーまであるのは豪華なんですが……フローリングの六畳間の中で、アイランドキッチンにする必要、あります?」


「これもオーナーの趣味ですね。食器や調理器具にダンベルがついているので、それらを壁際に置くことを先に考えていたら、必然的に中央にキッチンを置くしかなくなった、という経緯らしいです」


「ダンベル付き食器とか、ダンベル付き調理器具って……初めて聞いた」


「オーナーの造語ですね。普段の暮らしの…」


「中にも運動を、がコンセプトなんですよね! コンセプトはもう覚えましたから! もう言わなくて大丈夫です。これ以上聞いたら、耳にこびりつきます」


 俺はウンザリしつつ、部屋を見回す。


 部屋のど真ん中にキッチンがあり、それを囲むように家具が配置されているため、やたらと狭く感じてしまう。

 壁際にキッチンを配置して、食卓用にテーブルをひとつ置いてくれればいいのに……。


「テーブルがありませんけど……ダンベルつきの包丁やフライパンで、苦労して料理を作ったとして、作った料理はどうするんです?」


「このキッチンで立ったまま食べてもいいですし、さっきのリビングまで運んだり……」


「移動はハシゴですよね? 両手が塞がってるのに、お皿をどうやって持つんです?」


「あ、料理だけを乗せて移動できる小型のエレベーターが設置されています」


「そういうところだけ親切! 他は不親切極まりないけど!」


「冷蔵庫には、オーナーから毎日プロテインが支給されます」


「またしてもいらない親切!」


 またハシゴを降りていく。


「地下五階はトイレとバスです」


「バスとトイレは別々なんですね……あ、すごい、脱衣場には、乾燥までやってくれる全自動洗濯機もある」


 俺は不安になり、一応訊ねた。


「まさか、トイレや風呂場にまで、体を鍛えるような仕掛けは……」


「さすがにないですね。休息も大事だ、とオーナーはおっしゃっていました」


「たまに、常識人っぽいことを言う人だな。常識人じゃないんだろうけど」


 ハシゴを降り、一番下の階までやってきた。


「地下六階が寝室です。クローゼットや収納スペースもあります」


「大きなベッドに、壁埋め込み式の収納。いいですねー。でも、ここまで来るのに、毎日ハシゴを五階分降りて来なきゃならないんですよね」


「階段だと足しか鍛えられない、ハシゴなら腕と足と両方鍛えられる、というのがオーナーの考えみたいです。スペースの有効活用という観点でも、階段よりハシゴの方が省スペースですし」


「荷物がある場合、持って登ったり降りたりするのが大変そうですけど」


「小さい物であれば、料理用の小型のエレベーターを使って下さい。大きい物は、オーナー直々に頂いた専用リュックサックがあります。鉄入りで少々重いですが」


「そんなことだろうと思った! 鉄入りのリュックという単語に、俺、既に驚かなくなっている!」


 ◆


 なんだかんだとツッコミどころはあるが、俺は『不動不動産』の「一晩宿泊サービス」の手続きをして、この日は『メゾン・ド・マッチョ』の一室に泊まることになった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ