契約
何とも言えない奇妙な形をしたその物体に、僕は言葉を失った。
ぐにゃぐにゃで、ベタベタしてそうで、でも身体の表面はテカテカしてた。
形は台形。目は楕円で、その中に黒い部分があった。
どうしよう―。
そう思った僕に、ダイチが叫んだ。
―スライムが現れた!
慎也は「たたかう」を選んだ!―
このノリノリの声が僕の苛立ちをいっそう掻き立てた。
でも戦うって言っても、武器も何も無い。
でもスライムって言ったら、大体は最弱キャラだし、何とかなるかな。
って思っていたら、スライムの攻撃が飛んできた。
スライムは手?を伸ばして僕を攻撃してきた。
ビシュンッ!!
ドガァァァァン!!!!
僕の頬をかすめて、その隣にあったゴミ捨て場のブロック塀を破壊した。
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーー!!!
こんなのと戦えるはずが無い、絶対無理。
僕は逃げようとした。
―慎也は逃げ出した。しかし回り込まれてしまった。―
そう言ってダイチは僕を羽交い絞めにした。
物に触れないんじゃないのか、そう言った僕に、
―あ、それは任意で設定可能だから。―
と、さらりと言い放った。
でも、あんなのとは戦えない、どうやって戦えばいいのかと問いかけた。
―死神の目を契約するんだ。―
分別ができる目を手に入れても、この状況をどうにかできるわけじゃない。
意味が無い。
―大丈夫。死神の目を契約すると、オプションで身体能力を高める機能が
ついている。更には不思議な能力がついてくる。―
それがメインだろ!
そんなやり取りをしている時、スライムの一撃が僕を襲った。
直撃は避けたものの、その力はすさまじく壁に叩きつけられた。
体中に激痛が走った。
痛い!痛い!痛い!!
僕はその痛みに涙を流した。
―さあ、どうする慎也。
契約すれば、その痛みからも解放されるよ。―
ダイチは再びあの紅く光る目で僕を見た。
この痛みから抜け出したい。
そんな事を言われたら、契約しない訳ないじゃないか!
僕はダイチの契約を受ける事にした。
―さあ、契約だ。―
そう言って、手のひらを僕に差し出した。
その手のひらに大きな目が現れた。
そして、その手のひらを僕の胸に押し当てた。
暖かな熱と光が、僕を包んだ。
そして、その光が消えた瞬間。
僕の身体から、さっきまでの痛みが消えていた。