死神
夏休み初日の朝、僕は昼まで寝ようと決めていた。
ところが・・・。
―慎也、起きろ!慎也。―
誰かが僕を揺すって起こす。
お母さんかな、もう少し寝かせてよ。
そう言って僕はその揺する手を払いのけた。
―お母さんじゃないよ、ほら起きろ、起きろ。―
ものすごい勢いで揺すられた僕は、起きる事を余儀なくされた。
いったい何なんだよ、そう思って目を開けた僕の目の前に、
知らない男の子が立っていた。
―やっと起きたのか。全く。ほらさっさと出かける準備しろ。―
そう言った男の子に、僕は見覚えが無かった。
だけどその男の子は勝手に僕のタンスを開けて、僕の服を投げた。
何で僕の事を知ってるの?
君は一体誰なの?
僕はその疑問を投げつけた。
―俺?俺は星の死神「ダイチ」ってんだ。
お前の事はよく知ってるよ。風間慎也、小学校5年生。
RPGが大好きで、夢見がち。いつか世界を救うような冒険をしたいと
思っている。―
は?死神??
まさか僕の命を奪いにきたの?僕は死んでしまうの?
そう問いかけた僕に、ダイチは笑いながら答えた。
―いきなり信じるか?死神だなんて言われてさ。
それに俺は星の死神だ。人間の命なんて対応範疇外さ。―
僕よりも小さいのに偉そうだな、と心の中で思った。
とりあえず、害はなさそうだ。
そそくさと僕は服を着替えた。
さっき出かけると言ったけど、どこに行くのかを尋ねた。
―世界を救う旅さ。お前はこの星を救うんだ。―
え?世界を救う?僕が??
ダメだ、幾らなんでもおかしい。
これはドッキリに違いない。絶対信じちゃいけない。
そう思った僕の心を見透かしたように、ダイチはこう言った。
―嘘じゃない。俺はお前とこの星を救う為に来たんだぜ。―
そう言いながらダイチは笑っていた。
僕は自分の目を疑った。ダイチの目が紅く光っていた。
それを見た僕は背筋がぞっとした。
本物だ、本物の死神なんだ。
僕は関わりたくないと思った僕は、ダイチにこう言った。
旅に出るのは無理じゃないかな。
お母さんだって許してくれないし、お父さんも反対すると思うんだ。
するとダイチはさっきまでとはまた雰囲気が変わった。
というより最初の雰囲気に戻ってこう言った。
―大丈夫。夕飯までには帰るから。―
はい?それは旅というのだろうか。
でも、僕はこれ以上何か言って痛い目に会いたくなかったから
従う事にした。
でもどうやって世界を救うの?
僕はダイチに問いかけた。
―簡単だよ。俺と契約するんだ。
そしたら僕の死神の目を君に貸す。その目を使って世界に害を及ぼす
ものを見分けるんだ。―
死神との契約―。まさか僕の寿命が半分になるとかそういうデメリットが
あるんじゃないだろうか。
僕は背中に冷たい汗を感じた。
ダイチはまた紅い目で僕に近づいてきた。
そして静かに、低い声でこう言った。
―大丈夫だよ。君にデメリットは無い。
それにこの目を使えば、本当に燃えるゴミか燃えないゴミか分別できる
んだ。―
はい?それは契約しなくても分かるんではないだろうか。
―あ!今バカにしたな!
ちゃんと分別するってのは大変なんだぞ!意外と燃えるゴミと思っても、
実は燃えないゴミだったりするんだぞ!それに最近はリサイクルできる
ゴミもあったりしてだな・・・―
ダイチは必死に説明し始めた。
その姿に僕は思わず笑ってしまった。
とりあえず、僕はダイチと一緒に外に出た。
ちゃんとお母さんには夕飯までに帰ると伝えてから。