262,143個のバフ
「バフが二十六万個!?」
神様の言葉に、僕は驚き過ぎて、思わず叫んだ。
なんて言ったって、今まで一つしかバフが掛からなくて困っていたのに、実は二十六万個もバフがありましたと言われても、にわかには信じられない。
「はい。そのおかげで今回のバグが判明しました。」
神様の丁寧な物言いが、余計に緊張感を高める。
「つまり、僕に掛かっているバフが多過ぎて、逆に一つしかバフの効果が出ないってことですか。」
「端的にはそうです。」
神様の言うことだから、間違いはないのだろう。
「なんで僕に、そんな沢山のバフが?」
「『SSスナップ』のスキルです。これは、対象者の命と引換えに、剣に大量の永続バフを与えるSSクラスのスキルです。」
神様は淡々と続ける。
「過去に、『SSスナップ』のスキルを『不変の呪い』が掛かっている剣に使用した場合、その武器の装備者にバフが掛かるというバグがありました。そのバグ解消のために、バフに関するアップデートを行った際に、今回のバグが生まれてしまいました。」
不変の呪いが掛かっている剣……。
僕には心当たりがある。今、腰につけている小剣。父さんが僕にくれた剣だ。
「ヴィアール氏の指摘を受けて、ログを確認しました。クラウド。あなたが生まれてすぐの頃、あなたが今持っている剣に対して『SSスナップ』のスキルが使われました。その時、あなたがその剣を握らされていたのです。」
と言うことは、この剣を使って、僕に大量の永続バフを掛けた人がいる。
「まさか……父さん!?」
「はい。スキルを使ったのは、あなたの父、オンプレ氏です。」
父さんは昔からスキルについて詳しかった。
きっと父さんの事だから、生まれたばかりの僕を強くしようとして、そんな事をしたに違いない。僕がこんな体質になったのが、父さんの優しさのせいだったなんて。それが逆効果になるなんて。
バグってのは本当に酷いやつだ。
そいつこそ、魔王よりも倒さなければならないんじゃないか。
魔王……いや、ヴィアールは僕の事を調べるために神様に色々と言ってくれていたみたいだし、本当に彼女は悪い人だったのだろうかとすら思えてくる。
待てよ。
神様は、『SSスナップ』のスキルの効果を「対象者の命と引換えに」と言っていた。
「もしかして、父さんは僕のために誰かの命を使ったんですか?」
嫌な予感がする。肩から腕に掛けて鳥肌が立つ。
エイアールの口を借りて、神様が答えた。
「犠牲になったのは、あなたの母です。」
僕はショックで頭が真っ白になった。




