あれ?…実は僕、強いかも
「父さん任せて!!」
僕は父さんの背後から回り込んで、ゾンビの前に出る。
その勢いで、小剣をゾンビの脚に切りつけた。
ズシャ
ゾンビは転ぶが、彼らに痛みはないので、すぐに立ち上がる。
「逃げて!」
僕は叫ぶと同時にゾンビを剣の柄で殴るが、ゾンビの体勢を少し崩しただけだ。
でも、それで十分だった。スピードはもう要らない。
僕は筋力アップのスキル『バスパワー』を発動。
少し腰を落として小剣を握りなおす。父さんに教えてもらった木こりの基本。
ゾンビの首めがけて振り降ろす。
ザシュ!
ゾンビは動かなくなった。
「ハァハァ。やった…。」
緊張が解けて僕は座り込んでしまった。
デバフの解けた父さんが駆け寄る。
「ケガは無いか?」
「大丈夫。」
「よくやった。」
「うん。」
父さんに褒めてもらうと嬉しい。
「しかし、あのデバフなのに、お前は何で速く動けたんだ?」
「バフのスキル使って、デバフを消したんだ。」
「デバフを消す?」
「どうも、僕にはバフもデバフも合わせて一つしか効果がないみたい。」
ランタンの重さで、筋力低下のデバフが消えていることに気が付いた。
普段の生活でデバフを掛けられたりすることなんてないから、今まで知らなかった。
「まあ良い。」
父さんは嬉しそうに、僕の肩をポンと叩いた。
ガサっ…ガサガサ……
また緊張が走る。
そうだ。ゾンビ一体とは限らないじゃないか。
今度はかなり数が多い。僕らは逃げる体勢をとる。
「面白いものが見れたのお。」
女の子の声。
ゾンビは喋らないから、生きている人間だ。
茂みから出てきたのは、王国の兵士数人と白いローブを着た少女。
「キミたち。大丈夫かい?」
兵士長が声を掛けてきた。
「巻き込んでしまって、すまない。あのゾンビを追って、やっとこの森に追い込んだんだがデバフに苦しめられてね。しかし、キミは見事だった。あの強力なデバフをもろともせずに戦うなんて。」
「いえ、たまたまです。」
兵士長が話す間に、少女は動かなくなったゾンビに浄化のスキルを発動し、ゾンビを土に還した。
そして、そのまま僕の方に来る。
「お主、面白い能力を持っておるな。どんなスキルじゃ?」
「は?」
少女は町の長老みたいな話し方をする。父さんと僕は目が点になった。
「さっきのデバフを打ち消したスキルじゃ。」
「いえ、スキルじゃなくて体質です。僕はバフが重ね掛けされないんです。」
「ほう…さらに興味深い。」
少女は兵士長の方を向いた。
「こいつは魔王討伐の切り札になるやもしれん。」
は?…今、無茶なこと言いませんでした?