神託所
神託所へは僕とエイアールだけで訪れた。
リスケとローンチはギリギリまで体を癒やす為に、町で休んでいる。
神託所は岩山の麓に建っており、二体の獅子の彫像が入口を守るように設置されていた。僕はエイアールの後ろについて、神託所へと入って行く。
通路の左右には、何本もの柱が立ち並び、奥に広間があるのが見えた。
「どうして、僕をここへ?」
エイアールは突然、僕を神託所へ連れてきた。当然の疑問だ。
「ヴィアールの遺言じゃ。」
ヴィアールは、エイアールと双子の優れた賢者だった。しかし、ヴィアールは魔王となり、僕に倒された。
「魔王は、僕のことを知っていたんですか?」
「昔、お主を診たことがあると。」
「やっぱり。魔王って、あの時の賢者様……」
僕が小さい頃に『何これ、わっかんねぇ。』と言った賢者。あの人がヴィアールだったのだ。
「あいつは、お主の特殊さを調べていたようじゃ。何かしら掴んでいたから、ここに連れてくるよう遺したんじゃろう。」
とうとう、僕の「バフが重ね掛けされない」体質の理由がここで分かるのか。
僕は期待と不安の入り混じった気持ちになった。
エイアールは、ポツリと呟く。
「あいつが人間に絶望した理由が分かるかも知れん。」
広間には祭壇があり、神官たちが忙しそうに準備をしていた。あの中の誰かが、僕の体質について知っているのだろうか。
「ご苦労。」
エイアールは、神官たちに礼を述べると祭壇の上に腰掛けた。
神官の一人が驚く。
「賢者様自らが、神を降ろされるのですか?」
「神の真意を直接聞くためじゃ。」
僕は戸惑った。
「え、神様ですか?」
「そうじゃ。これから神と話す。お主のことについて神に教えてもらうんじゃ。」
エイアールは事前に神官たちに頼んで、神を迎えるための準備していたのだ。
神様に聞くだって? 僕は、そんな大それた事になるなんて思ってなかった。
「早速、神に降臨してもらおうか。」
「えぇ! 今ですか!?」
僕を無視するように、エイアールは手を組んで、祈りを捧げる。神官たちが楽器を鳴らし始め、広間は荘厳な雰囲気に包まれる。
僕は息を吞んで固まっていた。
エイアールの体が光り始め、明らかに今までの彼女とは、全く違う表情を浮かべる。
「はじめまして、クラウド。」
エイアールの口から、彼女の声とは異なる声が発せられる。それはまるで静寂の声ような。
静かで穏やかで、それでいて威圧感すら感じる。
これが神……
「よ、宜しくお願いします。」
まだ心の準備ができていない僕は、そう答えるのがやっとだった。




