凱旋の前に
僕たちは、傷を癒やすためにインタプリタの町で数日を過ごした。
特にローンチの傷は深く、何とか歩けるようになるまで二日かかった。怪我の少なかったエイアールですら、魔力切れで丸一日寝ていた。
その間、町の人や兵士たちがお見舞いに来てくれた。それぞれに僕らへの感謝を口にする。
お礼の品を持ってくる者もいたが、僕らはそれを固辞した。ゾンビに破壊された町の復興に使ってもらいたいからだ。
兵士長がやって来たのは三日目だった。
「みんなよくやってくれた。王もお喜びだ。明日には王都へ凱旋するぞ。」
満面の笑みの兵士長に、エイアールが素朴な質問をぶつける。
「どうして、お主は今頃になって来たのじゃ? いの一番に飛んでくる立場じゃろうに。」
「本当に魔王が死に、ゾンビたちが全て消えたのかを確認するのに時間が掛かったのです。」
「魔王の死の確証を得るまで、ここに来るのが怖かったか?」
「そういうことはありません。」
強い口調で否定する兵士長を、リスケがこっそり鼻で笑う。
兵士長が僕を見る。
「クラウド。私は最初から、君ならやってくれると信じていたよ。」
今度はローンチが鼻白むが、兵士長は構わずに続ける。
「キミには副兵士長補佐の椅子を準備している。軍に入ってこんな短期間で昇進した者は初めてだ。」
兵士長は、さも喜ばしい事のように告げるが、僕は少しも悩まずに辞退した。
「いえ。魔王も倒せたし、軍は辞めます。明朝、家に帰ります。」
兵士長の顔が青ざめる。
エイアールはケラケラと笑った。
「なんだって? キミは私とともに王都へ凱旋しないのか!?」
「はい。」
「王に謁見し、勲章を授与され、民衆からの大喝采を受け、英雄となるんだぞ。」
「そんなことより、家に残してきた父が心配です。」
僕はこの町の人たちの役に立てただけで十分。凱旋や式典なんて面倒だ。
兵士長は「そんなこと?」と絶句するが、父という言葉で思い出す。
「そうだ、キミの父親も王都に来るぞ。」
「父さんが?」
「今朝、父親に使いを出したから、明日には王都へ着くだろう。キミの叙勲を見せれば喜ぶに違いない。」
父さんが来るのなら、王都に戻るのも良いか。
「明日の昼前には出発するから、準備しておくように。」
兵士長はそう言うと、自分の部屋へ引き上げていった。
その姿を見て、エイアールはもう一度笑う。
「家に帰りたいとは、お主らしい良い答えじゃった。」
「そうですか?」
エイアールは窓の外を見つめ、僕にだけ聞こえる声で呟いた。
「では、クラウド。神託所へ行こうか。」
スキル効果紹介
・ハニーポット【土属性】身代わりを出現
・クロックアップ【空属性】スピードを上昇する
・パワーサプライ【土属性】パワーを回復する
・アジャイル【風属性】俊敏値と動体視力を上昇する
・フリップフロップ【光属性】バフとデバフの効果を逆にする




