表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/25

絶望


 魔王は、三人が一直線に並んだ所を狙った。完全な不意打ちだった。


 ダメージの小さいローンチはすぐに立ち上がる。そして、下敷きにしてしまった仲間を庇い盾を構えた。


「だ、大丈夫か?」


 リスケもよろめきながら体勢を整える。元々の防御力が低いリスケは、バフで強化されているにも関わらず大きなダメージを負ってしまった。

 ローンチなら防いでくれるという信頼が、リスケの回避判断を鈍らせた。


「ぐっ…」


 リスケは回復のスキルを自分に使う。…が、回復量が小さい。

 きっと、魔王がデバフスキルを発動したのだろう。エイアールに回復量増加のバフを掛けてもらわなけらばならない。


「きゅ~」


 リスケの足元で、エイアールは二人の下敷きとなったために気絶していた。


 僕は思わずエイアールに駆け寄る。


「エイアール様を起こします。」


 今の僕は隠密状態で、誰からも姿を見ることはできない。リスケには、僕の小声だけが聞こえている。


「クラウド?…どこっすか。」

「足元です。」

「分かったっす。エイアール様のこと頼んだっす。」


 そう言ってリスケはローンチと共に魔王に向かって行った。


 僕は焦った。

 エイアールが魔王のデバフを相殺しなければ、二人に勝ち目はない。

 彼女の顔に血の気はなく、鼻からは血が垂れている。

 だが、胸に耳を当てると、心臓の音が聞こえる。


(エイアール様、しっかり!)


 僕は声を殺して、エイアールを揺り起こす。僕は痛み止めや止血みたいな簡単なスキルしか持っていない。薬草に毛が生えた程度のスキルだが、何もしないよりはまし。僕は気休めと知りながらも、そんなスキルを発動して、彼女に呼び掛ける。


 ローンチとリスケは、魔王を挟んで僕らの反対側で戦い始めた。また、吹き飛ばされてぶつかるのを避けるためだ。


 魔王には、直接攻撃でダメージを与えるような腕力は無い。だから武器も持たず、スキルによる攻撃しかしてこない。魔王が何のスキルを発動したかをローンチがちゃんと見ていれば、避けることは容易い。


 しかしデバフで、二人は力をどんどん削られていく。普通なら目を瞑っていても避けられる攻撃すら直撃してしまう。


 もう時間がない。二人はもたない。

 エイアールが目覚めれば、回復もバフも可能。戦えるようになるはずだ。


(起きてくださいっ!) 


 僕は祈るような気持ちでエイアールの頬を叩く。


 その時だった。

 僕は不穏な気配を感じて顔を上げる。僕たちの周りを大きく囲むように、ゾンビたちが立っていた。


「チェックメイトだねぇ。」

 

 魔王が冷たく言葉を言い放つ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ