魔王って、そんな感じで攻めてくるの?
訓練を始めて四日。
かなり練度が上がってきた。
僕らは、ゾンビが潜んでいた想定での特訓を行っていた。
「ピーンポーンパーンポーン……」
突然、王宮の上空に謎の音楽がこだまする。
特訓を中断し、空を見上げる。
「魔王からの…ぉ…、お知らせです…ぅ…。」
若い女の子の声だけど、王宮の建物に反響して少し聞き取りにくい。
魔王からのお知らせか。
王宮ではこんな風にお知らせを流してくれるのか。便利だな。
…え? 魔王!?
「本日正午にぃ…、インタプリタへぇ…、攻め込みますぅ…。ピーンポーンパーンポーン……」
攻め込む!?
すぐさま僕はエイアールに聞いた。
「エイアール様、今のは!?」
「『ブロードキャストストーム』のスキルじゃ。離れた所から多数の人に声を伝えるスキルじゃな。便利とは思うが、街中では聞こえにくいのが難点…」
「いや、そうじゃなくて! 魔王って言ってましたけど。」
「あの声の主は魔王本人じゃ。」
魔王自ら放送で宣戦布告してくるの?
リスケがいつもの軽い感じで説明をしてくれる。
「攻撃してくる前はいつもあんな感じっす。魔王は攻撃する場所を事前通告してくるっす。」
「な、何でですか?」
「何で? 趣味っすかね。エイアール様、知ってる?」
軽い。最強賢者様に対して見せていい態度じゃない。
対して見た目少女の最強賢者エイアールは、顔に似つかわしくない重厚なしゃべり方で返す。
「そもそも、魔王が人を襲う目的は知っておるかの?」
「いえ…」
リスケもローンチも首を横に振る。
「森を破壊して開発を続けようとする人間を止めようとしておるのじゃ。」
エイアールの言葉に皆が驚く。
「え…? それが理由ですか? 僕らが森を切り拓くなんて、当たり前の事じゃないですか。」
僕の父さんは木こりだ。森の資源を回収して、人が住める場所を広げていく大切な仕事。
それを、なぜ止める必要があるんだ?
「やっぱ魔王の考える事ってのは、分からないっすね。」
「な、何の意味があるんだ?」
リスケもローンチも理解できないようだ。
「魔王は、森の破壊を続けるなら襲うぞと知らしめたいんじゃ。」
「はぁ。」
「知らしめたいから、事前に場所を指定して攻撃をしておるのじゃ。観客は多い方が、自分たちの恐ろしさを広められるからのう。」
「そんなことで罪のない人たちを巻き込むなんて!」
「そ、そうだな。」
「インタプリタの町は王宮から遠くないっす。急ぎましょう。」
僕たち三人は駆け出した。
「森が好きな奴じゃからの…。」
エイアールは空を見上げた。
声が響いてきた空を。
人物紹介「エイアール」
【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】
見た目は少女、頭脳は老女。その名は最強賢者エイアール。
自ら王様に協力を申し出て、魔王討伐に関する王国軍の臨時顧問となっている。