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イチゴのタルト  作者: ヤン
第三章 未来
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第十五話 夢

 それからの私は、文章を書くことに関する本をいろいろと読み漁っていた。あまりにも同じカテゴリーの本を借りていくので、司書の先生は、


藤田(ふじた)さん。小説家にでもなるの?」

「小説家ではないかもしれませんけど……書くことに関心があって」

「何をするにも、文章を書くことは大事だからね。理系の人だって、専門分野さえわかればいい訳じゃないでしょ。だって、論文を書くとしたら、やっぱり文章を書く方法は知っておかないといけない。人に伝わらなかったら、なかったのと同じになってしまう。人が納得する文章を書かないといけないの。そういう意味で、これは絶対に必要な勉強とも言えるわね」

「先生は、もしかしたら、小説家になりたかったんですか?」


 試しに訊いてみると、先生は照れたような顔をして、笑った。


「実は、そう。何回も、出版社の新人賞の公募に小説を送ったわ。結果は、この通り。小説家ではなく、図書館司書になりました。でも私は、この仕事が大好きよ。だから私は、小説で成功しなくて良かったんだと思うわ」


 迷いのない顔でそう言う先生を見て、私は、自分の熱い思いを伝えたい、という気持ちになった。


「先生。私、実は……」


 書くことに興味を持ったいきさつを、先生に向かって夢中で話した。初めて心が動いた、そのことを聞いてもらいたかった。


 私の話を聞き終わると、先生は笑顔で頷いた。


「藤田さん。あなた、今すごくいい顔してるわよ。やってみたいことを見つけられて、良かったわね。若いうちは……若くなくても、やってみたいと思ったことは、何だってやってみる方がいいと、私は思うの。それで、仮にダメだったとしても、やったその経験は、何かできっと活かされるから。やって無駄なんてこと、一つもない。そう思って、ためらわないで突き進んでほしい」

「先生……」

「私は、藤田さんを応援してるわ。ここでしょっちゅう会ってるから、何となく愛着があるというか……本当は、そういうこと、いけないんだけど、可愛く思う生徒っているのよ。あ。迷惑だったらごめんね」

「迷惑なんて……。気に掛けて頂いて、嬉しいです。私、どうなるかわからないけど、やってみます。こんなにやってみたいと思ったこと、今までなかったんですもの。その、私の気持ちを大事にしたいです」

「きっと大丈夫」


 先生が、私の肩を軽く叩いた。励ましてくれているような感じだった。私は、「ありがとうございます」と笑顔でお礼を言ってから、本を受け取り、図書館を後にした。

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