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イチゴのタルト  作者: ヤン
第三章 未来
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第七話 相談

 その日は珍しく、お父さんの帰りが早かった。向かい合って夕ご飯を食べながら、昼間の事件をいつ話そうか、とタイミングを計っていた。


「ごちそうさま」


 お父さんが手を合わせて言い、椅子から立ち上がった。私はお父さんを見上げると、


「あの……話があるの」


 お父さんは首を傾げてから、椅子に座り直した。私は、カーディガンのポケットに入れておいた例のメモ用紙を、お父さんに見せた。


「これ、何だ? 劇団? 黒羽(くろば)(みつ)?」


 お父さんの疑問はもっともだ。私は、深呼吸をしてから、


「今日、演劇の大会の後に、この人から劇団に来てほしいって言われて……」

「だまされてないか?」


 私は首を振り、


「顧問の先生がその人を知ってて……。騙されてはいないみたい」


 お父さんは、しばらく黙ってその紙を見た後、


「それで、ミコはどうしたいのかな」


 そう言って、私をじっと見た。私は、俯いてから、また首を振った。


「わからない。どうしたらいいのか。どうしたいのか。加津子(かつこ)は、演劇をやっていくって言ってた。でも、私は……」


 私のためらいに、お父さんはきっぱりと言った。


「じゃあ、やめておきなさい。ミコが、本当にやりたいって言うなら、やらせてもいいかと思ったけど。ミコの気持ちがそんななら、やめた方がいいとお父さんは思う」

「でも……」

「誰だって迷う。ミコもしっかり迷いなさい。真剣に考えなさい。そうして出した結果なら、お父さんは応援するつもりだから」


 そう言ってお父さんは立ち上がり、流しにお膳を持って行った。


「じゃあ、おやすみ」


 お父さんが、部屋から出て行くのを見送った後、大きな溜息を吐いた。


「真剣に考えなきゃ」


 わざと声に出して言うと、椅子から立ち上がった。

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