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イチゴのタルト  作者: ヤン
第三章 未来
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第四話 加津子

 月曜日、私は担任の先生に進路調査書を提出した。地元と東京の大学の文学部を受験することにしてみた。


 司書の先生が言っていたように、確かに私は文学が好きだし、勉強してみたいという気持ちになった。が、それが、どうしてもやりたいことなのか、と考えると、わからなくなる。


 昼休みに、加津子(かつこ)に進路について話してみた。こんな真剣な話をするなんて、初めてだと思う。


「で? 加津子は、どうするの?」

「私? 学校には行かない」


 お弁当を食べる手を止めて、私を真剣な表情で見ながら言った。


「私は、演劇をやっていく」


 きっぱりと、そう言った。その加津子の顔は、この前見たミッコさんにも似ていた。揺るがない決意。それを感じた。


「そうか」


 それしか言えなかった。


 加津子とずっと一緒に演劇をやってきて、自分でも演劇が好きだと思っていたのに、その選択肢は私には浮かんでこなかった。が、加津子はそうではなかった。


「ミコは、演劇やらないんだ」

「やらないっていうか、思いつかなかった」

「それぞれ考えがあるもんね。でもさ、ミコが文学とか司書の勉強して、学校の図書館の先生になってるの、何となく想像出来る」

「そうかな」


 私自身は、何となくピンと来ない。何か他に、もっとこれだというものがあるのじゃないかと、今も思っている。


「とにかく、私は演劇を頑張ってみるよ」


 爽やかに笑う。つられて私も笑顔になる。


「さ、早く食べよう。昼休み、終わっちゃうよ」


 言われて私は、急いでお弁当を食べ始めた。心の中は、すっきりしないままだった。


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