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イチゴのタルト  作者: ヤン
第二章 普通の恋
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第七話 再会

 遠くで話し声が聞こえる。今は何時だろうと思って左の手首を見る。八時だった。すぐに起き上がり、着替えを済ませてから、声のする方へ行った。


「帰るって言ってるのに引き止められてさ。こんな時間になっちゃって。本当にまいったよ」


 話しているその人。会いたかった人だ。思わずその背中に抱きついてしまった。その人は、びっくりしたように背筋を伸ばす。そして、少し後ろに顔を向けて私を見ると、


「ミコ」

「お疲れさまでした。ミコは、全然眠れなくって、明け方になってようやく眠れました。昨日のコンサート、最高だったのよ」


 そう言うだけで昨日を思い出し、また泣きそうになった。


 光国(みつくに)は体の向きを変え私と向き合うと、


「そっか。ワタル、成功したんだ。良かった。ああ。オレも聞きたかったな。何故かタイミングが合わないんだ、いつも」


 本当に残念に思っているのが伝わってきた。


「ミコ。やっと会えたのに悪いんだけど、オレ、起きてるの無理だ。ツヨシ。ちょっと部屋貸してよ。オレ、寝る」


 さっさと部屋に向かう。私も後を追ってみた。中田(なかた)さんも私の後についてきた。


「ツヨシ。お前も眠いだろうから、一緒に寝よう。里菜(さとな)ちゃんに怒られるかな。ま、いっか。ほら、ツヨシ。こっちにおいで」


 そう言っている間にも、光国の目は閉じてしまいそうになっている。


「ごめん。寝ます」


 言うが早いか、もう寝息を立てている。体を丸くして、ちっちゃくなって眠る。中田さんは、光国のそばに行くでもなく、その様子を見ていた。そして、息をついた。


「光国は、一緒に暮らしている時も、こんな格好で寝ていました。身を縮めて、自分を守ろうとしているのかもしれませんね。私は、光国を守ってやりたいです。この姿勢で眠るのをやめさせてあげたかったんです。でも、出来ませんでした」


 中田さんの言葉に、私は何も答えることが出来なかった。


「安心して眠ってほしい。そう願っているんです、ずっと前から」


 と、その時、里菜さんが中田さんを呼ぶ声が聞こえた。彼は私に視線を移すと、


「彼女が呼んでるので行きますけど。ミコ。あなたはお年頃なんですから、光国が何かしようとしたら逃げてくださいね」


 びっくりするようなことを言って、中田さんは部屋を出て行った。顔がほてっている。今の言葉が光国の耳に入っていないことを祈った。

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