表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イチゴのタルト  作者: ヤン
第二章 普通の恋
16/56

第一話 普通の恋

第二章からは、藤田美子が主人公になります。第一章から四年が過ぎ、小学生だったミコが、中学三年生になりました。

 授業を終えて、私・藤田(ふじた)美子(みこ)は、カバンを手にして立ち上がった。演劇部の練習が、もうすぐ始まる。


中学に入学後、誘われて始めた演劇。それまで全く経験はなかったが、はまった。


あれから二年半。再来月の県大会が終われば、引退だ。


月日の経つのは早いものだ、と少ししんみりとしていると、


「ミコ。早く行こう」


親友で同じクラブの水原(みずはら)加津子(かつこ)が、急かしてきた。私は、小さく溜息をついた後、


「わかってるわよ」


 そう言って、加津子の後について歩き始めたが、教室を出るその時、クラスメイトの女の子の声が、何故か耳に入ってきた。彼女は、いかにも嬉しそうな、はしゃいだ感じで、


「この前、告白されたって言ったでしょ。付き合うことにしたの。昨日、二人っきりで、遊園地に行ってきたの。もう、すっごく楽しかったよ」

「えー。いいなー」


 私は、振り返って、その二人を見た。遊園地に行った子は、すごく幸せそうな顔をしているように見えた。


 立ち止まった真顔の私に、加津子が、


「ほら。早く。練習に遅れちゃうよ」


 少し尖った声で言ってくる。私は加津子の方に向き直って頷くと、加津子とともに、部室へ急いだ。


 練習の間も、私の頭の中では、さっきの二人の会話がぐるぐるしていた。そして、思う。


(私も、大好きな人と、普通の恋がしたい)


 大好きな人と二人きりで、手をつないで歩く。時々顔を見合わせて、微笑み合う。遊園地に行ったり、おいしい料理を一緒に食べたりする。


 そんな普通のことが、私とあの人には出来ない。その現実が、私の心を沈ませる。



 その日は、最後まで練習に集中出来ずにいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ