下
寝るまでは今日理論的にセーフだから!!
メビウスの輪
朝の学校、教室の外に出れば肌寒い日が続く。
手持ち無沙汰で携帯を弄りながら、週末に後輩と買いに行ったチョコを食べる。
恋する後輩は無事にチョコレートを渡せただろうか?
後輩ののぞみはテンパりやすく本命チョコを渡せたかは怪しいところだ。
携帯が鳴る。
弟からのメールだ。今日はいつもと違い私の友達からのチョコレートで買収したので動きが良いようだ。
緊急と題したメールは内容を要約するとのぞみは本命チョコを渡せなかった上に見られてしまい、別に本命がいると勘違いされているらしい。
「あちゃー」
かなり悲惨な状況だ。まあ、慰めて発破を掛けてやろうと思う。可愛い後輩のためだ。
弟には引き続きスパイと工作を命じておいた。
何時もより遅く登校してくる後輩は、眩しい笑顔でこちらに向かってきた。
こりゃ気が付いてないなと思い声を掛けようとしたところ…
「先輩!無事にチョコレート渡せました。お礼に買ったチョコレート一緒に食べましょう」
そう言って一緒に頑張って包んだチョコを出すや否や泣き出し抱きつかれる。
コロコロと表情を変えながら素直に懐いてくれるのは正直悪くないと思うがここは学校、ただ抱き合うくらいならともかく、一方が泣いてるとあれば注目の的だ。
何とか宥めて、昼休みに作戦会議をすることにして別れた。
毒
今日の授業はまったく集中出来ない、うっかり本命チョコレートを渡せたなんて思って通学して来たせいで浮かれてたのもあって気がついたときのダメージは深刻だ。
先輩にはまた泣きついてしまったし、泉にはチョコレートを渡した後に恥ずかしすぎて1人でEVに乗ってしまったけど変に思われてないだろうかと考え出すと落ち込むことばかりでキリが無い。
「もっと完璧に行くはずだったんだけどなぁ」
そう呟いても誰かが答えるバズもなく、答えを教えてくれることもなく思考は深みにハマっていった…
チャイムが鳴る。
昼休みだ。そう認識した私は教室を飛び出て先輩の下へと向かう。
愛しい人が先輩みたいに近くにいれば良かったのにと勝手なことを思いながら気付けば廊下を走っていた。
「先輩。いいですか?」
「来たな!後輩。いい知らせと、悪い知らせどっちから聞きたい?」
先輩は笑いながら問いかけてくる。何時もならどっちの知らせも同じ内容で言い方を変えただけだったりする。
「良い方からお願いします」
「いい知らせは、君の愛しの彼を放課後にとある場所へ呼び出すことに成功した、そこで告白すると良い。もちろんチョコも渡してね」
「告白やっぱり必要ですか…」
「恥ずかしがったってしょうが無いさ、好きなんだろう。それに告白しなきゃいけない理由がある」
「理由ですか」
「悪い知らせさ。なんとチョコを渡すときにもう1つの本命チョコが見えたそうで、本命は別にいると思われているらしい。信頼できる情報さ」
「そんな」
「だから手紙だけじゃなく告白も必要だと思うのさ」
「うっ、はい」
「じゃあ決戦に備えてお昼にしよう」
そう言うと先輩はお弁当を取り出す。
その後教室で話していた私達は、作戦会議という名を借りて先輩のクラスメイトから泉のどこが好きなのかを根掘り葉掘り聞かれることとなった。
待ち合わせ場所に到着した。
先輩によるともうすぐ約束の時間みたいだ。
1人で目印の前に立つ泉を見つける。
高鳴る心臓の音を落ち着けでゆっくりと向かう。
声を掛ける。
「泉、バレンタインデーのチョコレートもう1つ上げる」
声を掛けたのが私だと驚きこちらを見る泉。
朝のお返しに不意打ちを仕掛けた。
鞄から出したチョコレートを持ってもう一度。
「泉、朝は1つしか渡せなかったけど本当は2つとも渡したかった。好きです。大好きです。付き合ってくれますか」
みるみるうちに顔が赤くなる泉。
「そんな、今まで義理だって。高校だって同じところだと思ってたのに遠くのところを選ぶし。もうそんなんじゃ無いと思ってたのに。」
「義理にしてはいいチョコレートだったもん。それに高校はやりたいことあったし、でももし泉と恋人なれるなら放課後に制服デートだってしたいし、2人で旅行だって行きたい!ねぇダメかな?」
私にはもう精一杯を話した。
勇気を出して一歩を踏み出した。
だから答えを聞かせてよ。
「…俺ものぞみの事がずっと気になってて、今日の朝このチョコレートを貰えなかった時からモヤモヤしてて。だから凄く嬉しい。俺も好きです」
精一杯の2人はその後手を繋ぎながら一緒に家に戻りながら、甘いチョコレートを食べた。