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朝、家を出ると隣の家の扉も丁度開く。

出てきたのぞみとは小学校、中学校と同じ学校に通っていた幼馴染だ。

一緒に登校することも度々あったが高校はお互いに別の所を受験して無事合格した。

高校に入ってからはお互いに時間が合わないのだろうが、朝会うことも無くなったから今日の偶然にはびっくりだ。


「おはよう」


よくよく考えれば1年近くお隣同士なのに会話もしてない、もう名前は呼べないくらいのスキマを感じてとっさに出た言葉だった。変な感じになっていないだろうか、不安を覚えつつ返事を待つ。


「おはよう、今日バレンタインでしょ」


のぞみはそう言って鞄からチョコレートを出してこちらに渡してきた。


「ありがとう」

「ホワイトデー期待してる。それじゃ行ってきます」


足早に去って行くのぞみはEVに乗り込んだ。

って待って俺も乗る。


「あー1人で行きやがった」


電車通学は少しの遅れが大変なんだろう。

性にも無く気の利いた返しがないかと考えていた、置いていかれた。

チョコレートを見る。

凄くオシャレでたぶん有名なお店のチョコレートだ。

この箱を高校の友達に見せるのは恥ずかしくて、でもそれ以上に家に一旦置きに戻るのはもっと恥ずかしくて、食べながら階段を降りて行く。


甘いチョコレートを舌で転がしながら、思えばのぞみからチョコレートを貰うのは2年ぶりだった。

去年は高校受験真っ只中でお互いに忙しかったし、のぞみは丁度この時期に体調を崩していた。そんなこんなで重なってもう態々くれることも無くなったと思ってたんだけどな…

自転車に乗って学校に向かう。

チョコレートは食べきったのにまだ口は甘かった。


向かう途中で中学からの悪友を見つける。


「うい、おはよう」

「お!泉バッグ載せさせろ」


そう言ってバッグを入れようとして、自転車の前かごに入ったチョコレートの空箱を見つけやがった。


「ありー、チョコレートとは朝からモテますな~」

「うっせ、ほっとけよ」


空箱を自分のリュックに詰めて前かごを空ける。


「ゴメゴメ。何結構良さげなチョコレートだったじゃん!家の姉貴も並んで買いに行ってたぜ」

「有名なのか?いくらくらい?」

「姉貴の買ってきたヤツのほうが一回りデカかったけどそれで3千円って自慢してたな」

「げっ一気に食っちまったぜ。ホワイトデーまで節約だな。のぞみのやつそんなの買って欲しい物でもあんのかな?」


金額を聞いたことで途端にホワイトデーまでのカウントダウンが始まった気がした。


「今年はのぞみちゃんから貰えたのな」

「おう、朝出るとき偶々会ってな」

「本命とは思わないわけ?」

「チョコレートくれるときになバッグの中からもう一つ包装の凝った箱が見えたんだよ…そっちが本命に決まってるさ」

「そりゃ残念なことで」


見ないふりしてた箱を思い出し、口の中は苦みが残っている気がした。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


明日はバレンタインデー、去年は何だかんだとバタバタして泉に渡せなかったチョコレート。本命だって分かるように手作りするつもりで居たけど寝込んでしまって結局、義理チョコを渡すことすら出来なかった。

幼馴染の泉は女の子と間違われるほどなよっとした体型で本人はそういった扱いをされることを嫌がるくせに小学校の頃から変わらない。ずっと弟みたいな距離感で泉には私が必要何だと思ってた。自分の思いが親愛に留まらずに恋だなんて気がついたのは去年高校受験の願書を出してからだった。

学校が一緒なのは小学校からだけど、もっとそれより前からお隣さん同士で時々私の家に遊びに来ることもあった。中学校まで一緒に通って初めて別々の道を行くんだなんて漠然と考えたら途端に好きと自覚した。合格発表の後、泉に祝ってもらいながらも、これから一緒の高校で青春することもないんだと泣いた。泉は私がその高校に行きたがってたことを知っていたから嬉し泣きだと思ったみたい。それからなんだか恥ずかしくて告白なんて出来てない。


高校が始まってからは勉強に部活で全然朝も夜も泉と時間が合わなくなってしまい、ロクに挨拶も出来ない。そんなこんなでダラダラと告白を引き伸ばして居たら何時の間にか年が明けてた!

どうしようと焦って焦って1月の初登校の日、余りにも挙動不審な私を見かねた部活の先輩が相談に乗ってくれて手作りチョコレートの試作から踏ん切りが付かずに渡せなかったときのサブプランとして有名なチョコレートも一緒に並んで買いに行った。


朝バレンタインデー当日の玄関前、ドキドキしながらバッグの中身を確認する。

私の登校用のバッグには今2つのチョコレートが入っている。

本命用のチョコレートを渡して告白しよう。

そう思って隣の家のドアが開くのを待つ、お母さんには台所で頼んだときには笑われたけどお父さんを引き留めててくれる筈だ。


ガチャ


心臓が高鳴る。

行こう私


ドアを開けると丁度、泉が私の眼の前にいた。


「おはよう」


不意打ちだ。

私から話しかけようと思ったのに、


「おはよう。今日バレンタインでしょ」


そう言いながらバッグに入れたチョコレートを渡す。


「ありがとう」

「ホワイトデー期待してる。それじゃ行ってきます」


告白なんてもう無理。恥ずかしい。

顔から火が出るんじゃないかと思いながらEVに飛び乗る。

大丈夫本命チョコには告白の手紙も入れた。

泉の方から連絡をくれるかもしれない。

待ってても良いだろうと自分を納得させる。



通学の電車に乗り込む、学校に着いたら先輩に本命チョコを渡せたって報告してお礼に買ったチョコレートを一緒に食べよう。


学校に着いた、先輩の下へ向かう。


「先輩!無事にチョコレート渡せました。お礼に買ったチョコレート一緒に食べましょう」


そう言って鞄から出てきたのは気合を入れて梱包した本命チョコだった…

バレンタインデーは甘くない、私は先輩に泣きついた。


バレンタインだもの

続きは明日、書けなきゃ来年

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