青い宝石
とある赤い惑星の一室に少年と少女がいた。たわいもない会話を交わした後、彼女が空を見上げて口を開く-
「あれ、宝石みたいじゃない?」
少女が宝石を手に取り、見比べるように空を見上げて呟く。
「あの青い星。文献でしか読んだことないけど、遥か昔にご先祖様があそこに住んでいたって信じられる?それとね、そこは殆ど水で出来ていて飲むとしょっぱいんだって!」
話を聞いていた少年は呆れた様子だった。何故ならその話を聞くのはこれで数十回目だからだ。その旨を伝えると少女はクスッと笑い、話し続ける。
「記録によれば、私たちくらいの若者は学校ってところに行っていろんなことを学ぶんだり、おしゃれな飲み物を買ったりするんだって!」
そんなことならここでもできるじゃないか。少年はそう思ったが、口にする前に少女が白くて硬いベッドの横に置いてあった本を手に取って続けた。
「もし将来、子供ができたらあの青い星について毎晩読み聞かせをするの。それで私の夢を叶えてくれるといいな」
毎回同じ話を聞かされる身にもなってくれよと思いながら少女見つめる。しばらくの沈黙の後、少女が口を開く。
「そろそろ眠くなってきちゃった。また明日話さない?」
少女がそう告げると、彼女から管で繋がった先にある機械が非情にも、少年と少女の別れを告げる。それは彼女の夢の終わりを意味していた。少年はいつまでも泣いていた。
再生終了。その文字とともに昔の面影が残る青年は再生機器を止める。もう何回見たかは覚えてない。あの時から月日は流れ、青年はボーッと無限に広がる虚無の空間を眺めていた。ふと思い出したかのように彼の傍に置いてあるカバンから宝石が入った箱と"Earth"と書いてある古びた本を取り出して机の上に置いた。しばらくすると船長のアナウンスが入り、乗客が大きな窓へと集まった。そして青年は自身の目を疑った。それは遥かに巨大で、青年にとっては美しすぎる宝石だった。