9
「スズ様、騒がしい音がしましたが、どうかされましたか?」
一番今来てほしくなかった人物がそこに立っていることにトワイは頭を抱えた。
「あぁ、アイラ。それがこの人?がこの城に迷い込んできたみたいで。」
赤髪でガッチリとした体型のアイラと呼ばれた人物は怪訝な顔をし、一人に向かって歩いてきた。
「どういうことだ?トワイ。敵か?気絶しているのはお前がやったのか?なぜ城内へ入れた?」
矢継ぎ早に質問を投げられ、トワイは抱えた頭を二度振った。
「ちょっと、そんな一気に聞かないで。答えられないから。」
スズに話すときとは違い、敵意を向けた言葉が続く。
「知らない間に中庭にいたの。敵かどうかは知らない。そもそもこいつ一言も発してない。勝手に気絶してた。城内に入れたのはジャクリーン様が入れろって言ったから。」
一人を指差しながらめんどくさそうに答えた。
どう答えるか組み立てていたが、アイラ相手に取り繕っても仕方ないと判断した結果だ。
「ジャクリーンが?」
スズが驚きの声を上げる。
「はい、ジャクリーン様が城内に運べとご指示されまして。」
私は外に寝かせとけばいいと思ったんですけどね。と小さく付け足す。
「珍しいわね。あまり興味を持つことがないのに。」
寝ている一人に視線を移す。
ジャクリーンはなぜ、この人に興味を持ったのだろうか。
「城は国の中でも瘴気が濃いですから、加護がない状態であれば、意識を失うのも仕方ないでしょう。」