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「…ん、トワイ?」
「おはようございます。スズ様。」
スズはトワイから体を離す。
ぼんやりと周りを見ると先ほどまで自分がいたところと違うことに気付いた。
背中がやけに冷えるのは洋服が破れているからか。
背中の破れに気づいてトワイは自身の首にかけていた布をスズに被せた。
「ありがとう。それで、なんで私ここにいるの?」
スズ様と離れた体を再度抱きしめる。
離してと小さな声がし、トワイは抱きしめている腕の力を弱めた。
「私との稽古中に気を失いまして…。」
抱きしめられた体を離す。
名残惜しそうにトワイの指先は離れていくスズを追う。
そういえば、トワイに剣の稽古をつけてもらっていた際に、トワイの剣を避けきれずに受け意識を失ったことを思い出した。
「あぁ、ごめんなさい。避けきれなくて…。でも、トワイ、あれ本気で私を殺しに来たでしょ?」
「そ、そんな!」
「目が本気だったわよ。」
申し訳ありませんと項垂れるトワイの胸を軽く叩く。
トワイを本気にさせられたという自信に繋がる稽古ができたことが満足だった。
「それで、これは何?」
床に転がっている一人を指差す。
「それが…どこからか沸いたみたいで…。」
「へぇ。人よね?魔族ではなさそうだけど…初めてみる色してるわね。」
一人の髪の毛を掴んで匂いを嗅いだ。
スズの知らない匂いがした。
暖かい匂い。
トワイがどう説明しようか頭の中で組み立てていると、部屋のドアが開いた。




