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世界は色をもたない  作者: 由稀
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7


トワイは片手で抱えていた一人を床に転がした。


本当は外に放置したかったのだが、ジャクリーンが運べというので仕方なくそれに従った。



「どうするんですか。これ。」

しゃがんで一人の髪の毛や、着ている体操服を掴んだり、興味を持っているジャクリーンに問いかける。


「こいつ、見える眼を持ってんだよねー。」


「見える眼?」

「そう、見える眼。こんな眼持って可哀想に。」


体操服をまくり、体を触る。肌を押さえたり、感触を確かめていた。汚いですよ。とトワイはジャクリーンの手を一人の体から離した。

どこからか布を出す。


「けど、これうちの住民じゃないですよね。こんな髪色した奴なんて見たことがない…。それに一体どこからこの城に…。」


トワイのされるがまま、手を拭かれているジャクリーンは視線を一人に向けたまま、首を傾げる。


「こいつはなぜ…?」


小さな声で呟いてまだ拭かれてない手をトワイに差し出した。

トワイは黙ってその手を丁寧に拭く。細い指を爪の先まで丁寧に清める。


両手を拭き終わり、掌にキスをし、ジャクリーンに返した。


ジャクリーンは戻ってきた手で髪の毛を掻き上げる。


長い黒髪は細い指先に絡まり、右の羽根に向かって落ちていく。美しい。とトワイは思う。


「あ、そろそろスズが起きてくるトワイ、悪りぃけど、アイラとかに説明しといて。」


「え?私が⁉︎」

トワイは驚きの声をあげる。それは拒絶の声でもあった。


「だってこのこと知ってるのお前と俺だけだろ。あたしはもう寝るし、お前しか説明できねーじゃん。」

ですが…とさらに抵抗をしようと試みるトワイにジャクリーンは両手を肩に回し抱き付いた。


「あたしが力を飲ませたことは黙ってろよ。」


黒い目がトワイの`銀の目を捕えて離さない。


その目に見つめられると、嫌と抵抗できなくなることをジャクリーンは理解していた。

不服ながらも頷いたトワイを見て満足気に微笑み、ジャクリーンは目を閉じた。


肩への重さが増し、トワイはジャクリーンを支えるため、腰を強く持った。


支えていいる体が冷たくなり、その後熱をおびていく。


ジャクリーンの片羽根が消え、髪が黒から白へと色を変えていく。

白と黒が混ざった、濁った灰色で色が止まる。


抱えた手をさらに強くした。熱を持つ、体に負けないように、強く抱きしめた。


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