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一人は昔から他人よりもよく見えていた。
遠くを見れることは勿論のこと、集中している時は飛行機が雲に隠れていようと、飛んていることに気付くことができた。
誰もそれを証明できないので本当に飛んでいるか分からないが、確実に一人の目には飛行機が見えていた。
券売機に並んでいると、一人以外の二人に挨拶をする後輩がいた。
弘樹、晶ともに部活に入っているため、校内でのつながりが広い。
「あー春季戦マジで勝ち上がれっかな…。三年はこれが最後じゃん?」
手を挙げて挨拶に答えた弘樹は財布の中身と今日のランチメニューを見ていた。長い列が進んでいく。
「男バレ、先輩残ったの?」
進んだ列がまた止まった。前を見ると券売機を前に悩んでいる女子学生の姿が見えた。
「言わなかったっけ?てか、言ったけどかず興味ねーから覚えてねぇんだろ!」
横に並んでいた弘樹の肘が一人の脇腹を打撃する。
いてっと呻きながら一人は小さく謝罪した。
一人の肩に後ろから晶の顎が乗る。
「晶、重たい…。体でかいんだから、顔だけでも重いんだから。」
弘樹も晶も部活に入っており、弘樹は男子バレー部の中で存在感があり整った見た目をしている。
晶は強豪ラグビー部でレギュラーに入れる実力の持ち主で、授業は寝てばかりなのに、成績もいい。
中学時代からの付き合いで、何となくウマが合い、高校でも一緒に遊んでいるが、自分は平凡だと感じてしまう。
一人は平凡だ。
顔も人から褒められる顔ではないし、勉強もそこそこできるが、そこそこしか出来ない。
視力はいいが、動体視力が良いわけではないので、運動も得意ではない。
何かで表彰されたことも、飛び抜けて才能があったわけではない。
ただの平凡なヒトリだ。
そんな自分が嫌になる時期もあったが、平凡な自分を受け入れるしかないと思っていた。
平凡な人間が大多数を占めている世の中で自分もその平凡な人間のヒトリだと。