15
そう言えば、自分にキスをしたジャクリーンと呼ばれていた人が居ないことに気付く。
初めてのキスの感触が今になって生々しく唇に戻った気がして、顔が熱くなるのを一人は感じていた。
「そんなこと現実にあるのでしょうか…。全く信じられないのですが…。」
「いいじゃないですか、もうこいつ殺しましょう。そしたら全て収まるし。」
よし!の一言が耳に届いたと同時に、一人の目の前に短剣があった。
自分とトワイの間にはスズがいて、距離があったはずなのに、瞬きをする一瞬の間にトワイが目の前に来ていた。
「わぁぁ!」
剣先から逃げるため、顔を背けるとバランスを崩し、体が床に倒れる。
「あれ?避けられた。意外といい反応するねぇ。」
楽しそうに笑ったトワイは倒れた一人に跨る。
足を自身の足で抑え、逃げられないように固める。自身のよりも小柄な女性なのに力が強く、全く動けない。
固められている足はびくともせず、片手で抑えられている両手も片手なのに振り解けない。
女性に組み敷かれるとは思ってもなかった。
遠くからやめなさいという声が聞こえるが、そんな声は自分を組み敷いている人には全く届いていない。
初めて殺意のある目を見て、恐怖で体が固まっていくのを一人は感じていた。
殺意のある目から逃げたいがここで目を閉じると殺される。
また、やめなさいと遠い声が聞こえる。
「俺は!異世界から来てます!」
一人は大きな声で主張した。
異世界がここなのか、今まで生活していたところが異世界なのか、分からないけれど、今、自分が生き抜けるにはこのタイミングを逃してはいけないと本能が言っていた。
「俺は、異世界から来た鹿島一人です!」




