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引力と猫の魔法使い【リメイク版】 第八章「ゲーム世界と魔法攻略」  作者: sawateru
第四章 魔法使いと夏花火

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第80話 日高誠と引力の魔法使い

「待ってたし! 遅いし!」

 揺れるツインテール。

 水鞠家の屋敷に到着した俺達を待っていたのは真壁スズカだった。

「安全運転で来たんですよ」

 門の前で魔法自転車を停車させ、預かった小箱を見せる。


「フン。まあいいし。付いて来るし」

 金髪ギャルがスタスタと歩いて行く。

 そっちは屋敷の入口じゃ無いぞ。

「いいんですか? 俺達行動制限があって……」

「湖は大丈夫だし。さっさと来るし?」

「湖……?」



 屋敷を囲む塀の内側を通り、別の門から外へ出る。

 すると突然、視界は白光によって塞がれた。

 方向感覚が失われ、自分が何処に向かっているのかが分からない。

 だがしかし。こんな展開には慣れたものだ。

 俺は気にせずに歩き進むと、視界は徐々に晴れていった。


「これは……」

 森に囲まれていたはずの敷地は、巨大な湖に変わっていた。

 いや、変わったんじゃ無い。これが本来の姿なんだ。

 美しい湖の畔に建つ洋館。

 まるでゲームや映画に出て来そうな景色だ。

 

 志本がフラフラと歩いて行く。

「魔法によって隠されていたんだね。凄く綺麗……」

 真壁スズカがフフンと笑う。

「この湖を囲む様に発射台を設置して、花火を打ち上げるし」

「相当な規模ですね……」

「ただ打ち上げるだけなら簡単だし。問題は他にあるし」

「何ですか?」

「お前には関係無いし。そこに部品を置くし」

「ヘイヘイ」

 自分から振っといて何だよ。

 

 真壁スズカは地面を指差し、魔法の言葉を呟く。

 すると、その場所に魔法陣の紋様が浮き上がった。

 地響きと共に二メートル四方ある巨大な箱が迫り上がる。

 それは複雑怪奇な変形を繰り返し、大砲へと姿を変えた。

 昔のアニメに出て来そうなシンプルなデザインだ。

 

「もしかして、これが花火の発射台ですか?」

「そうだし。ぼうっとしてないで箱を開けるし?」

「了解です……」


 真壁スズカが魔法工具を使い、背面のパネルを開く。

 上半身を突っ込み、ガシャガシャと作業を開始した。

 ……いや、ピンクのパンツがモロ見えなんですが。

 そんな事も気にしない所が「らしい」っちゃあそうなのだが。

 真壁スズカが右手を俺に向けて来た。

「さっさと三番の部品を渡すし」


 いつの間にか助手をやらされていたらしい。

 俺は箱の中にある謎のプレートの中から三番を渡す。

 真壁スズカはそれを受け取ると、慣れた手付きで作業を始めた。


 志本はその様子を眺めながら、

「機械……壊れていたんですか?」

「違うし。魔法士の人数が少なくても使える様に改良しているし」

 真壁スズカが顔を出し、指で二を作る。

 俺は箱の中から二番の番号の付いた小さな部品を渡した。


「改良って……先輩が?」

「何だし!? その顔は。あーしの本職はメカニックだし。

 まだ試作段階だけど、自信はアリ寄りのアリだし」

 自信満々に答えた後、また頭を発射台の中に入れて作業を始める。


 こんなナリでメカニック担当とは驚きだ。

 そう言えばハッキングされた時もシステム管理を担当していたな。

 やっぱり、この人も能力が化物級って事か。

 流石は当主直属の従者だけはある。


「とりま終わったしー」

 顔を出し、装置の蓋を閉める真壁スズカ。

「まだ箱の中に部品が残ってますけど……」

「合ってるし。あと九台分の改造が必要だし。その分だし?」

「九……そんなに……」

「魔法部品が足りなくて今は無理だし。年末迄には届く予定だし」

 フフンと得意気になる真壁スズカ。

 キャラは面倒だが、頼りになる存在に違いない。

 

「日高誠」

 いきなりフルネームで呼ばれてしまった。

「あーしはキミを認めない。絶対に」

 蒼い瞳がキラリと光った。

「それは知ってますが……。何です? いきなり改まって」

 すると真壁スズカは金髪ツインテールを指で巻きながら、

「で、でも……」

 顔を真っ赤にして俯く。

「コトリ様を花火に連れ出してくれた事には感謝してるし」

「は?」


 ……驚いた。

 あの真壁スズカが俺に礼を言うなんて。

 雨でも降るんじゃないだろうか。

 予想外の展開だ。何て返せばいいのか分からん。

「俺が誘わなくても、水鞠は来たと思いますよ」

「そうかも知れない。でも、あんな笑顔にはならなかったと思う」

 真壁スズカはいつに無く真面目なトーンだ。

 嘘臭いギャル語は何処へ行った? 調子が狂うな。


「スズカちゃん……!」

 いきなり志本が真壁スズカに抱きついた。

「な、何だし!?」

「あ、ごめんなさい。可愛かったので……つい……」

「い、意味分かんないし。バカにすんなし!」

 志本を払い払い除け、コホンと咳払いをする。


「これからしばらくの間。紗英っちは、あーしと修行するし」

「え!? 修行……ですか」

「そ。紗英っちの魔法は使えそうな気がするし、あーしが鍛えるし」

「本当ですか!?」

「じゃ、俺は自主練って事で……」

 それならそれで気が楽だ。やれる事は沢山ある。

「何を言ってるし? キミには……」




『日高誠』


 呼ばれて気が付いた。

 俺の目の前には犬のヌイグルミが立っている。

「弓犬……。あれ?」

 

 さっきと場所が違う……?

 同じ湖の畔にいるのだが、景色が変わっている。

 よく見れば、離れた場所で真壁スズカと志本紗英の姿がある。

「……いつの間に移動したんだ?」


 弓犬はそんな俺を見て首を傾げた。

『まだ安定していない様ですね』

「何がです?」

『いえ、こちらの話です』

 また意味深な発言だ。

『貴方は時間の許す限り、私と修行をして貰います』

「りょ、了解です」

 真壁スズカじゃなくて良かった。

 弓犬ならお手柔らかにしてくれそうだ。


『では日高誠。あなたは火喰甲魚(ひくいこうぎょ)を使える様になって下さい』

火喰甲魚(ひくいこうぎょ)を?」

『結晶体に対抗出来る力になりますから』

「結晶体と……」

 そうだ。水鞠も言っていた。

 火喰甲魚(ひくいこうぎょ)があれば、結晶体と戦えるんだ。

 遂に目覚めるのか? 俺の能力が。


 「引力の魔法使い 日高誠」爆誕……!


 ピンチになっても助けが来るまで逃げ回ったりしなくて済む。

 それだけじゃない。

 俺が結晶体を倒せる様になれば、それだけ従者が楽になる。

 魔法花火大会に集中出来る様になる!

 遂に、俺だって役に立てる時が来た!


 弓犬は真剣な眼差しで、俺を胸の辺りを指差した。

火喰甲魚(ひくいこうぎょ)の回復状況はどうなっていますか?』

「え……?」


 俺の魔法領域の中にある謎の空間。

 そこに契約した像換獣が格納されている。

 電気と電波の像換獣 電伝六蟹(でんでんろっかい)

 そして熱を喰う像換獣 火喰甲魚(ひくいこうぎょ)

 二体の存在を感じる事は出来る。

 だが、回復状況までは分からない。


「喚び出してみないと分からないです」

『では、お願いします』

「了解」

 俺は右手に意識を集中させ、立体魔法陣を創り出した。

 掌に小さな球体が転がる。


『来い……! 火喰甲魚(ひくいこうぎょ)!』


 視界は白い光に包まれ、立体魔法陣が振動を始めた。

 謎の図形と文字が視界の上から降り注ぐ。

 それが今の俺には理解出来る様になっていた。


火喰甲魚(ひくいこうぎょ)へアクセス許可申請』

『魔法エンジン再連結』

『応答無し』

『応答無し』


 魔法エンジンが起動しない……?

 立体魔法陣が砕けない。

 ダメだ……。

 魔法が失敗している。

 まだ修理が完了していないのか?

 単純に俺の実力不足なのかも知れないが。

 

 んん……?

 光の奥に何かが見える。……何だこれ?

 機械に囲まれた部屋だ。

 まるで古いアニメに出てきそうな謎の計器とボタンが並んでいる。


 ここは像換獣の格納庫だ。

 何故かは知らんが急に見える様になっているらしい。

 格納庫には番号が振られている。全部で六つ。

 一番ドックは火喰甲魚(ひくいこうぎょ)が修理中。

 電伝六蟹(でんでんろっかい)は謎のアームによって固定されてぶら下がっている状態だ。

 ああ、仮契約中だからドックに入っていないのか。


 何故だか分からんが仕組みは理解出来た。

 召喚されたらカタパルトから射出されるシステムみたいだ。

 まさに壮大なスケール……脅威のメカニズム。

 ……なんてナレーションが流れそうな雰囲気だ。

 厨二感が半端ないぞ。


 カメラは切り替わり、奥へと移動。

 そこに謎の人影が映り込む。

 カメラに気付くと、慌てた様子でフレームから姿を消した。

「何かいた!?」

 ちょ、誰!? 何かいたぞ? 今の何!?

 白い光は消え、視界が回復してゆく。

 湖の畔に景色が戻り、弓犬の姿が現れた。


『どうかしましたか?』

「今、何か見えたんですけど……。人影みたいな」

 普通に怖い! 意味が分からんし。

 それを聞いた弓犬はホホウと唸る。

『それはイメージ映像ですね』

「イメージ映像……!?」

『問題ありません』

「そうなの!?」


『それよりも、火喰甲魚(ひくいこうぎょ)にアクセスを拒否されている現状が問題です。

 このままでは修理が完了しても召喚に応じるかどうか……』

「契約済みなのに?」

『そこが扱い辛いと言われる所以です。

 貴方の魔法使いとしての「格」が問われています』

「格……ですか」

 一番俺に足りない部分だ。どうすればいいんだよ。

『まずは修行を強化しましょう』

「結局はそこなんですね……」

 弓犬はつぶらな瞳を横一文字にして考え込んでいる。


『魔法トレーニングの増量。毎日三十キロの走り込みを行って下さい』

「三十……!?」

『何か問題でも?』

「いえ……。了解です」

『おや?』


 弓犬が首から下げているガマ口サイフからガラケーを取り出した。

 画面を見た後、

『良いタイミングで仕事が来ました』

「仕事……?」

『装置に不具合があった様です。確認しに行きましょう』

「まさか……」


『ちょうど片道が十五キロですね』


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