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引力と猫の魔法使い【リメイク版】 第八章「ゲーム世界と魔法攻略」  作者: sawateru
第四章 魔法使いと夏花火

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第72話 日高誠と花火大会

「空……」

 空にも魔法エラーが起きるのかよ。

 それを花火で修正するって、スケールがデカ過ぎるだろ。

 めちゃくちゃビッグイベントじゃないか。

 これこそ真のファンタジーだ。

 だからこそ、気になる点が思い浮かんだ。


「水鞠は俺に、何も言って来なかったですが……」

 すると、弓犬はコホンと咳払いをした後、

『コトリ様は花火大会には参加しませんので』

「え……?」

『従者だけで十分だからだし? アホは首を突っ込むなし!』

 水鞠は参加しない……。


 浴衣姿の水鞠と花火大会。

 そんな事が実現出来たら最高だ。

 ここはダメ元で誘ってみるしか無い。

 俺はスマホを取り出し、メッセージアプリを立ち上げた。

 そして素早く打ち込む。

 

『週末の花火大会。一緒に行かないか?』

 

 ポチッと送信。

 すると、秒で水鞠から返信が来た。


『いいよ』


「よっしゃあ!」

 思わずガッツポーズが出た。

 そんな様子を見て、弓犬が不審そうに見て来た。

『何かありましたか?』

「あ、ああ。水鞠、花火を見に行くって言ってます」


 俺がそう告げると、化学室がシン……と静まり返った。

 しばらくして、弓犬はつぶらな瞳を大きくさせ、

『コトリ様が!? 花火に……!?』

 全身を震わせて立ち上がる。

 何だよ、大袈裟だな。

 壁ヤカンも蓋を落としてワナワナと震え出した。

『それ、嘘じゃないし? 本当だし?』

 壁ヤカンまで、どうした?

「ええ。ほら」

 俺はスマホの画面を見せた。


 弓犬と壁ヤカンは俺のスマホに我先にとかぶりつく。

 確認が終わると、お互いの顔を突き合わせた。

『こ、これは一大事です』

『すぐに従者総会だし!』

「ちょ、ちょっと。どう言う事です?」

『コトリ様は八年間、花火大会に参加していなかったし』

 弓犬は俺に視線を向け、

『花火大会はコトリ様にとって、特別な思い出があるのです』

「あ……!」

 その言葉だけで思い当たってしまった。


 水鞠コトリは幼い頃に両親を亡くしている。

 前に俺と家族の話になった時、アイツはそう答えていた。

 きっと花火大会には、家族と過ごした思い出が詰まっているんだ。


『壁ヤカン。行きましょう!』

 二体は興奮状態で扉に向かって駆け出す。

 横に並んでバタバタと化学室を出て行った。

 それを追い掛ける鳥吉。

『ちょっと! 待って下さいよ! 置いていかないでぇ!』


 気付くと俺だけがひとり化学室に残されていた。

 スマホの画面を見ると、メッセージが受信している。

 志本紗英だ。

「志本……」

 部活中にスマホ無しでメッセージを飛ばせるのか。

 魔法ハッカーの能力凄えな。何だって?


『聞いたよ! 私も行くからね! 邪魔しないから安心して!』


「邪魔しない……か」

 よく考えたら水鞠と二人きりなんて従者が許す訳が無かった。

 志本が居てくれて良かったよ。

 何なら、吉田も呼んでワイワイやるのも楽しそうだな。

 そんな事は絶対に無理だろうけど。


「……水鞠と直接話そう」

 覚悟を決めた俺は、通話アプリをタップし水鞠に電話を掛けた。

 三回コール。その後、通話が始まった。


『どうしたのさ』

「いや、忙しい所を悪い。花火大会の事なんだけど……」

『ああ。従者達が騒いでるみたいだね』

「本当に良かったのか?」

『…………そうだね』


 しばらくの無言の後。

『うん。今なら、きっと大丈夫だと思ったんだ』

「そうか……」

『言っておくけど、日高に誘われたから……だけじゃないからね!』

「え?」

『だから、日高は気にしなくていいから!』

「水鞠……」


 本当かも知れないし、俺に気を遣っているだけなのかも知れない。

 それはどちらでも良かった。

 水鞠が前に進むキッカケの一つになれただけでも、俺は嬉しい。


『ねぇ日高……』

「何だ?」

 何かを言いたげな……そんな雰囲気だ。

『アタシ、志本さんにも伝えたよ』

「あ、ああ。そうみたいだな。さっき連絡が来た」

『だから今、凄く悩んでいるんだ』

「どうした?」


『次は何がいいと思う? バニーガール? セーラー服?』


 ……やっぱりお前の趣味だったのかよ。

 志本のコスチューム。



 * * *



 学校から帰ると、俺はすぐに自分の部屋に移動。

 鞄を投げ、素早くノートパソコンを立ち上げた。

 検索窓に「白猫ムヒョー」と打ち込み、ドカリと椅子に座る。

 ……きっと水鞠は変わろうとしている。

 俺も、俺なりに乗り越えようと思う。


 そう、推し活だ!


 断念していた「白猫ムヒョー」と向き合う時が来たのだ。

 それ位しか俺には出来ない。

 今から俺はムヒョリストだ。ムヒョラーだ!

 それで水鞠が喜ぶなら、何だってやってやんよ!


 え……っと、どれどれ?

 動画の配信は無し。書籍も絶版。

 最後のアニメ化が六年前で不人気と来たら仕方ないか。

 せめて電子書籍くらいは用意してくれよ。

 

 となると、やはりネットで情報を集めるしか無い。

 マウスをクリックし、画像検索を開始。


「いや、無理!」

 どうにも受け付けない何かがある。

 キャラデザか?

 高い背、無表情、蝶ネクタイに黄色い腰布。

 いや、よくある「ゆるキャラ」と変わらん。

 なのに、この嫌悪感は何だ?


 頭の中に入って行かないし、入っても何故か忘れる。

 この感じ、前にもあったような……。

 しかも一度じゃない。

 何か大事な事に思い当たっていたのに、スルリと消える状態。

 こんなんで大丈夫なのか俺……。


「あ、白猫ムヒョーだ」

 声の主は美希だった。

 いやいや、何でいきなり部屋に居るんだよ。

「ノックはどうした。我が妹よ」

 すると美希は主張の強い眉を反り上げ、不満を主張する。

「したよ! 返事があったから入ったんだけど」

「え……マジで?」


 そういや、そんな気がして来た。

 適当に返事をしていたらしい。気を付けねば。

「美希は知ってるのか? この珍妙なアニメ」

「海賊白猫ムヒョーだけちょっと見てた」

「海賊?」


 そう言えば、アニメ化する度に設定が変わるんだったけ。

 正式なタイトルで検索開始。

 出て来た適当なサイトをクリックする。

「うわ……」

 またもや怪しい個人サイトに来てしまった。

 そこの情報によると……。

 海賊白猫ムヒョーは六年前に放映。

 二十話で打ち切りになった。

 これがムヒョーシリーズ四回目のアニメ化らしい。


 美希はショートカットの髪をかき上げ、

「見てたのは最初だけ。二人目の仲間のマグロ侍がキモくてやめた」

「マグロ侍……」

 リンクをクリックすると、アニメの専用サイトに飛んだ。

 何だよ、これ。


 手足の生えたマグロで、バンダナを頭に巻いているキャラだ。

 半分が切り身になっていて、骨が剥き出しになっている。

 必殺技は百刀流全身骨突き出し。

 口癖は「切り身だけに?」らしい。

「酷いな!」

 キャラデザした奴はこのヤバさに疑問に思わなかったのか?


 問題はそれだけじゃない。

 所々既存の人気漫画のパクリが散見している。

 主人公のムヒョーに至っては麦わら帽子を被っているし。

「海賊で麦わら……完全にアウトだろ」

「かなり炎上してたよ」

「だろうな」

 水鞠の奴、これのどこが気に入っているんだ? 理解出来ん。


「ぐぬぅ……」

 俺が画面を見て唸っていると、美希は画面を指差し、

「水鞠さんの好きなヤツだよね? 鞄に人形付けてたし」

 ぶっきらぼうに言い放った。

「そ、そうだな」

 よく見てたな。会ったの二回だけだってのに。

「あのさ、お兄ちゃんさ……」

「何だ?」


「花火大会って、水鞠さんと行くの?」

 あからさまに不満げな言い方だ。

 それはそうだ。美希は水鞠の事を良く思ってない。

 まあ、キャラの怪しさが全開だから気持ちは分かる。

「心配するな。志本も一緒だぞ」

「ふーん。別にいいけどさ。私は友達と行くし」

「へえ。そうか」


 すると美希はいきなり俺の頭を引っ叩いて来た。

「痛っ!?」

「調子に乗らないでよね!」

 そう言い放ち、部屋から出て行ってしまった。

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