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引力と猫の魔法使い【リメイク版】 第八章「ゲーム世界と魔法攻略」  作者: sawateru
第四章 魔法使いと夏花火

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第67話 日高誠と釣り大会

「ヒクイコウギョ……魚の像換獣か」

 やはりアンモナイトとは違うヤツだった。

 水に関係する像換獣が他にもあったみたいだな。

 

 水鞠は釣竿を高々と上げ、プールサイドに立つ。

火喰甲魚(ひくいこうぎょ)は火や熱の魔法力を食べる能力を持っているんだよ」

「そんなものがプールの中に!?」

 志本がプールを覗き込む。

「人体には無害だよ。余分な魔法熱を食べているだけだし」

「魔法熱?」


「そう。ここは魔法地熱が高くて改変現象が起き易い場所なんだ。

 だからプールに像換獣を配置して管理している訳よ。

 今は数が増え過ぎているから、釣り上げて何匹か処分する」

「せっかく増えた像換獣を破壊するのか。何か勿体ないな」

「日高。像換獣について何も知らないの?」


「あのな。仮入部中はトレーニングしか許可されてなかっただろ。

 それに調べようにも、俺じゃ水鞠家のサイトには繋がらんしな」

 何度か試してみたがダメだった。

 正式な従者の魔法使いでないと無理らしい。

「なら、志本さんなら知ってるよね」

 水鞠が視線を向けると、志本は顔を横に振った。

「私のスマホからも繋がらなくなってたよ」


 その言葉にハッとなる水鞠。

「そう言えばハッキング対策で長期メンテナンス中だったわ」

「わ、私のせい……? だよね。ごめんなさい」

「水鞠。すまんが説明してくれ」

 俺がそう言うと、水鞠は溜息を吐く。


「像換獣は魔法エラーを取り込み、修正するシステムなんだよ」

「それは分かるが……」

「じゃあ、取り込んだ分の魔法力はどこに行くと思う?」

「え? 消えるんじゃないのか?」

「消えないよ」


 そこで志本が何かを思い付いた様子で手を叩く。

「自身を複製する事で、余分な魔法力を消費しているんだね」

「流石は志本さん。誰かさんとは察しが違うわ」

「悪かったな」

「コアのナンバーが違うから、厳密には複製とは言わないけどね」

「なるほどな……」


 増殖と破壊がワンセット。

 それが「魔法ロボット」像換獣のシステムって訳だ。


 水鞠はプールの水を指差し、

「今は火喰甲魚が増えすぎてプールの底が凍っている状態なんだよ」

「それで釣り大会なんだな」

「そう言う事。それじゃ、始めるよ!」

 水鞠はどこからともなく取り出した浮き輪を腰に装着。

 そのまま勢い良くプールへ飛び込んだ。

 嬉しそうにバタ足で中央に移動した後、釣糸を垂らす。


「それじゃあ、私達も始めましょうか」

 志本が釣竿を俺に渡して来た。

「あれ? 人数分あったのか?」

「ケースの中に三本入ってたよ」

「三本であの価格だったのか。いや、それでも高いな」

「それとこれ」

 志本からビー玉が入っている小さな瓶を渡された。

「何だ?」

「釣り針の先に引っ掛けるみたい」

 志本が自分の釣竿に手際良く取り付け始めた。俺もそれに続く。


「なるほど。そう言う事か」

 すぐに理解出来た。

 釣竿に魔力を込めると、ビー玉が魔法熱を放射する仕組みだ。

 これを餌にして火喰甲魚を釣り上げるのか。

 雑だが、一応理に適っているな。


 水鞠がプールの真ん中で声を上げる。

「誰が一番釣れるか勝負だよ! 最下位は一週間買い出し係ね」

「……いきなりルール追加かよ」

 全力で楽しんでるだろコイツ。

 水鞠は浮き輪に尻を入れてぷかぷかと揺られながら釣りを開始。

 俺と志本は水鞠を挟んでプールの両サイドに陣取った。


 ……せっかくの水着回なのに、何をやっているんだ俺は。

 水鞠との距離も遠いし、水着も浮輪で隠れている。

 こんなはずじゃ無かったのに。チクショー!


 俺はそんな事を心の中でボヤきつつ、釣竿に魔力を送った。

「うお……!? 何だコレ……」

 腕が震え、息が上がる。

 魔力を込めているだけで疲労感が襲う。

「大丈夫? 日高」

「お、おお」


 志本は涼しい顔で釣りをしている。

 水鞠に至っては余裕の笑顔。

 こいつの魔力は底無しだろうから……。

 ……て事は、俺が最下位の可能性が高いじゃないかよ。

「うかうかしてられねぇ……」

 この暑い中、一週間も買い出しをさせられるなんてゴメンだ。


「言っておくけど火喰甲魚(ひくいこうぎょ)は扱いづらい事で有名だから。

 素人の餌に簡単に喰い付くと思わない事ねっ」

 水鞠が得意気に説明する。

「あ、掛かった」

「嘘!?」

 志本の竿が勢い良く引いている。

 今、素人がどうとか言ってなかったか?


「どうするの!? どうしたらいい?」

 志本がパニックになっている。

「ちょっと待ってろ。手伝うぞ」

 俺は釣竿を置き、志本の居る反対サイドまで走って行く。

「引き上げられそうか?」

「うん。大丈夫そう。最初は一人でやってみる」

「了解」


 水鞠は引きつった笑顔で竿を構え直す。

「ま、まあ、運が良ければ餌に喰い付く事はあるよ。

 釣り上げるのが難しいんだからねっ」

「さっきと言ってる事が違うじゃねーかよ」

 絶対にフリだよな。これ。


「とりゃぁ!」

 志本が竿を勢い良く引き上げる。

 すると水飛沫と共に、見たことの無い型の魚が姿を現した。


 大きさは二十センチ程。

 シーラカンスに似ている古代魚で、鎧の様な鱗に覆われている。

 俺はプールサイドでピチピチと跳ねる火喰甲魚(ひくいこうぎょ)を眺めながら、

「なかなか厨二心を擽られるデザインだな」

「か、可愛い」

「可愛いのか……コレ」

 え!? そこは「怖──い!」とか言うパターンじゃないの?

 感性が理解出来ん。


「水鞠。この後どうすりゃいい?」

 すると水鞠はムスッとした表情でこっちを見て、

「ノーカウント! プールに戻して」

「何でだよ!」

「三十センチ以上の大きさじゃないと意味が無いんですぅ──」

 口を尖らせて煽る様に答える。

 き、汚ねぇ。先に言えよ。


「志本さんは一ポイント獲得ね」

「いつからポイント制になったんだよ」

 まさか「食べたらプラス一ポイント」とか言い出さないだろうな。


「よし。頑張るぞ」

 志本は雑なルールを気にしていない様子だ。

 言われた通りに釣った魚をリリース。

 手早く新しい餌を取り付ける。

 ポイントはゲットならずだが、いきなりのヒットに御満悦だ。

 いかんいかん。俺も集中せねば。



 ──二十分経過。

 雲ひとつ無い青い空。

 炎天下のプールで、謎の釣り大会は続いている。

 志本は二十センチほどの火喰甲魚(ひくいこうぎょ)を三匹釣り上げてはリリースする。

 既に四ポイントで首位だ。


 水鞠は一ポイントゲット。

 その後は一匹も釣れず、明らかにイライラし始めている。

 俺はというと、ひたすら餌だけを取られ続けている状態だ。

「納得行かねぇ……」

「私、釣りの才能に目覚めたかも」

 志本の長くて綺麗な足が水に濡れて眩しく煌めく。

 スクール水着姿も相まって、俺も何かに目覚めそうだ。

 ……釣り、最高だな。



 肝心の水質修正が進まないまま時間は経過。

 しばらくして、俺の分の餌は使い果たしてしまった。

「水鞠。餌が無くなった。まだ在庫持ってるか?」

 未だ一ポイントの部長に訊いてみる。

「日高、終了──」

「マジかよ……。手持ちの餌が無くなったら終了なんて聞いてねぇよ」

「じゃあ、針だけで頑張ってみれば?

 魔力を全開にすれば多少は針から熱が出るかもよ」

「適当な事言いやがって。この魔法釣竿、そんな構造じゃないだろ」


 ……待てよ。

 だったらこの手が使えるか?

「立体魔法陣を餌にしちゃ駄目か?」

 これは名案だろ。

 だが水鞠は口を手で押さえて馬鹿にする様にプススと笑い出した。

「そんな事出来る訳ないでしょ。どうやって針に付けるのよ。

 やってみるといいわ。魔法針と糸が耐えきれなくて壊れるから」


 マジかよ。そうなるのか。

 ……出来そうな気がしたんだけどな。

「やってみるか……」

 俺は一か八か立体魔法陣を展開してみる事にした。

 

『来い……!』

 青白い光と共に、掌から小さな球体が出現した。

 俺は慎重に立体魔法陣をコントロール。

 出来るだけ縮小させ、ゆっくりと針に近付けてみる。

 「ヒュンッ」と、中に吸い込まれた。

 あれ? これ、上手く行ってんじゃね?


「出来た」

「嘘でしょ!?」

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