表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引力と猫の魔法使い【リメイク版】 第八章「ゲーム世界と魔法攻略」  作者: sawateru
第四章 魔法使いと夏花火

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/179

第65話 日高誠と魔法の店

 俺と志本は東谷高校を出発。

 謎の地図を頼りに、帰り道とは逆方向へ歩く。

 この辺りは住宅が少なく水田が多い場所だ。

 セミの鳴き声を遮るものは何も無い。


「暑いな……」

 真夏の昼過ぎだぞ。

 こんな時間に買い物に行かせるとか鬼だろ。

 これも全部、あの真壁スズカのせいだ。


 この日差しだ。志本は大丈夫なのか?

 ……と思って見てみると、疲れた様子も無く平然と歩いている。

 流石は運動部。俺の方が先に倒れそうだ。


 更に進むと、田畑と森しか見えない場所に来た。

 本当にこんな場所に店なんかあるのかよ。


「かなり近いところまで来ているはずなんだけどね」

 志本も不安そうだ。

「もしかして迷ったか? 水鞠に連絡してみるか……」

 俺がスマホを手に取ると、

「待って。あれじゃない?」

 志本がそう言って指差した。

 その先には看板の付いた古い民家が見える。


 一見すると昔ながらの駄菓子屋の様な雰囲気だ。

 看板には「ワタヌキ魔法具専門店」と書いてあった。

「間違いなさそうだな。行ってみよう」


 

 まずは入り口前で様子を伺う。

 人の気配は無し。

 いや、大丈夫かよコレ。

 何だか妙な圧力を感じる。気のせいか?

 慎重になっていると、志本が俺の腕を掴む。

「入ろう、日高」

 そのまま薄暗い店の中へ引き込まれてしまった。

「ちょ、待ってくれ」

 度胸があるな。ヤバい奴とか居たらどうするんだよ……。


 店内は教室の半分程の広さだ。

 所狭しと置かれた商品に埋め尽くされていて視界が悪い。

「什器はかなりの年季が入っているな」

「でも商品は綺麗だよ。すごい整頓されている」

 志本がウキウキで棚を見て回る。

「わっ!?」

 奥まで行った所で青褪めた顔で引き返して来た。


「誰かいた……!」

 志本が腕にしがみ付く。

 何か柔らかい感触が……。いやいや、それどころじゃ無い!

 店の奥で人影が揺れる。

 そいつはゆっくりと近付いて来た。


「いらっしゃいよぉ」

 小太りの男だ。五十歳位か。

 男は黒縁の眼鏡を右手で持ち上げ、ニヤリと笑う。

 それと同時に丸坊主の頭がギラリと光った。

「待っていたよぉ。日高誠君……だね」


 怪しい男だ。

 雰囲気もそうだが、素直に見た目がヤバい。

 町で出会ったら目を合わせたくないタイプの人間だ。


「水鞠から連絡があったんですね」

「そんな所だよぉ。まずは許可証を確認させてもらうよぉ」

「許可証?」

「この店の利用には、水鞠家当主の許可が必要だよぉ」

「ええ!? そんなの渡されてないですけど」

 まさか来た道を戻れって言うのか? シャレにならんぞ。

 クソゲーのお使いじゃあるまいし。暑くて死ぬっての。


「ちょっと失礼するよぉ……」

 男は腕を伸ばし、俺の額に向けて指を近付けた。

 ……何かの魔法が起動している?


 その様子を見た志本が手を叩く。

「あ! 分かっちゃった。魔法電子タグだね」

「おお。お嬢ちゃんは良く知ってるね」

「何だよそれ……」


 志本紗英は魔法ハッキング能力の持ち主だ。

 今は制限されているらしいが、魔法世界の事なら俺より詳しい。

 そういった方面では頼りになる存在だ。


「水鞠さん、日高の魔法空間に許可証を撃ち込んでいたんだよ」

「撃ち込む!? アイツまた勝手にそんな事をしてたのか……」

 人のスマホに勝手にアプリ入れたりとか、自由過ぎるだろ。


 志本は自分の額に指を乗せ、

「無くさないから便利だよ? 私も交通系カードとか纏めてるし」

「いや、確かに便利だけど! 何か嫌だ!」


 「ピピッ」と音が鳴った。

 どうやら読み取りが完了したらしい。

「おお……。間違いない。今日の日付……今日の時間……」

 何やら店主の男が震え出した。

「良かったよぉ。上手く行ったみたいだよぉ……」

 何故か感慨深そうにしている。


「何の話です?」

「……いや、最近不具合が多くてよぉ。気になってたんだよぉ……」

 そう言って男は腕を下ろした。

「問題は無かったよぉ。さあ、好きなだけ見ていってくれよぉ」

「じゃあ、さっそく……」


 店内の探索を開始。

 志本と二手に分かれて商品の確認を始めた。


「魔法マージャン。魔法トランプ……」

 なるほど、トレーニング道具はこういった店で買うのか。

 他には魔法チエノワや魔法ねり消し、なんてものもある。

 値段は普通の雑貨と変わらないな。

 相変わらずだが、どこが魔法なのかサッパリ分からん。


 志本は壁に掛けられたグッズを見ている。

 「魔法スーパーボールくじ」や「魔法ダーツ」が気になる様だ。

 店長はその側で付きっ切りで説明中。

 志本は感心した様子で話を聞いていた。

「俺の方は無視かよ……」

 単なる女好きのオッサンってオチか?

 盗撮とかしてないだろうな。


 俺は志本の様子を気にしつつ、商品を手に取って確認を続ける。

 ……解決出来そうなものは見当たらない。

 アンモナイトをどうにかする道具なんて本当にあるのか?

 俺の引力魔法で引き寄せた方が早いような……。


「…………ん?」

 角に置かれている商品が気になり、視線を止めた。

 あれは何だ?

 薄暗い場所に棒状の物が束ねられている。

 俺はそれに手を伸ばした。

 これは……釣竿か?


「気になるのかよぉ」

「うお!? ビックリした!」

 俺の脇に店長が居た。嘘だろ!? 瞬間移動してない?

「ここで魔法釣竿を選ぶとは、いい魔法直感だよぉ」

「魔法……釣竿」


「これも持って行くといいよぉ」

 餌と魔法バケツが用意されている。

 釣りをしろって事? 完全に頭おかしいでしょ。

「合わせて二万円だよぉ」

「高っ!?」

 思わず声が出た。リールとか付いていないのに高過ぎる!

 絶対にボッタクリだ!


「あと、これもお願いします」

 志本が手にしているのは山盛りのカップ麺だ。

 全部で十個あった。

「合わせて三万円だよぉ」

「いや、高いって! しかも何でカップ麺!?」

「水鞠さんが買って来て欲しいって。聞いて無かったの?」

「何にも……」

「そうなんだ。日高に言わないのって、ちょっと変だね」

「どうするかい? やめとくかよぉ?」

 様子を見ていた店長が声を掛けて来た。

 

「いえ、大丈夫です。それでお願いします」

 何故か志本が即決してしまった。

「え!? 払うの? 嘘だろ。三万円なんて持ってないぞ?」

 現金以外だと何が使えるんだ?

 各種クレジットカード、交通系、電子マネー。

 それからバーコード決済、全てが使用可能なのか。

 え? 通販サイトのポイントも使えるの?

 それなら合わせ技でどうにか……。いや、無理だろ。


「ポイントで」

 志本の財布から謎のカードが出て来た。

「何か持ってる!?」

「水鞠さんのポイントカード。これで支払っていいらしいよ」

「知らなかったよ……」

「あ、ごめんなさい。日高は水鞠さんから聞いてると思ってて」

「いや、気にしないでくれ」


 それにしても、三万円をポイントで支払いか。

 このまま釣竿一式買って大丈夫なのか?

 だって三万円だぞ?


「まいどありだよぉ」

 店長がニヤリと笑う。

 眼鏡の奥の目が真一文字になり、眉間にシワを寄せた。

 ……大丈夫かな、これ。



 * * *



「水鞠。買って来たぞ」

 科学室に帰ると、水鞠がナメクジのように地面を這っていた。

「ちょっと! その表現酷くない!?」

 いかん。心の声が出ちゃってた。

 まあ、それに近い形で倒れ込んでいる。

 

「ほれ。これでいいか?」

 机の上にドサリと買い物袋を置く。

 中を見た水鞠の猫の様な瞳が煌めいた。


「やったー! 魔法カップ麺だー!」

 水鞠が袋に飛び付くと、志本が心配そうに近寄った。

「何か微妙な味しか残って無くて……これで大丈夫だった?」

「どれどれ? たこ焼き味に、シュガーラスク味に納豆味……」

 水鞠が十個あるカップ麺を一つ一つ確認してゆく。

「合格」

「いいんだ、それで!?」


 今まで水鞠は俺の前で何度かカップ麺を食べていた。

 確かにその時は変わった匂いだな、とは思ってたが……。

 想像の斜め上だ。それに有名スナック菓子の味と被りすぎだろ。


 水鞠はカップ麺の一つを手にし、頬擦りを始めた。

「シュガーラスク味こそ至高……」

 すると志本が真剣な眼差しで、

「私はサラミ味が普通に美味しいと思うけどな」

 ……もう何の話だが分からなくなって来た。話を進めよう。


「なあ水鞠。コレを店で買って来たんだが、合ってるのか?」

 魔法釣竿を見せると、またもや水鞠の瞳が怪しい光を放つ。


「……合格」

「いいんだコレで!?」

 釣竿が正解だったのかよ。

 アンモナイト釣りでも始めるつもりか?

まるで想像がつかん。


「アンタまさか、正解を教えて貰ったんじゃ無いでしょうね」

「いや、そんな事は……」

 正直ちょっと怪しい所だ。余計な事は言わないでおこう。

 そうしていると、水鞠はフフンと鼻で笑う。

「ま、降参して店から電話して来ると思ってたからギリギリで合格」

 不満そうにしながらカップ麺のシュリンクを剥がした。

「あ、お湯が無かったわ」

 スマホを取り出して叫ぶ。

「出でよ! 壁ヤカン!」


『りょ!』

 科学室の照明が暗転し、ユーロビートが流れ出した。

 派手なライトアップが始まり、扉が開かれる。

 そこにギャルポーズをキメた壁ヤカンが出現した。

 ギャルメイクされた大きな目。

 金色のヤカンに紐の手足が生えた姿。

 壁の魔法使いのアバター、壁ヤカンだ。


 そいつはパラパラダンスを踊りながら移動を開始。

 水鞠の前で停止すると、何事も無かったかの様にスゥッと跪いた。


『この世に我を貫くもの無し。水鞠家最強の壁。参上だし!』

 これが壁ヤカンの「名乗り」らしい。

 ……フルバージョンは初めて見た。

 そういや、弓犬も「最強の〜」とか言ってなかったか?

 絶対どっちかがパクってるだろ。

 

「早かったね壁ヤカン」

『そろそろ呼ばれるかと思ってアツアツで待機していたし!』

 嬉しそうにボディを傾け、カップ麺にお湯をそそぐ壁ヤカン。

 いや、ちゃんと魔法使いの仕事してろよ。

 お前のせいで大変な目に遭っているんだからな。こっちはよ。


 冷ややかな視線を向けていると、水鞠が机を叩いた。

「よし! じゃあ日高。アタシが食べ終わったら続きを始めるよ!」

「またシュガーラスク味のプレゼンか」


「違うよ」

 水鞠家が溜息を吐き、猫の様な目を光らせた。

「プールの魔法現象……。その修正に決まってるでしょ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ