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引力と猫の魔法使い【リメイク版】 第八章「ゲーム世界と魔法攻略」  作者: sawateru
第三章 目覚める魔法と未来を知る者

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第50話 日高誠と未来を知る者

「…………あ!?」

 ガクンと頭が急降下し、反射的に目が開いた。

 

 深夜三時。俺の部屋。

 ベッドに座ったままの状態で目が覚めた。

 志本と連絡先を交換した後から八時間が経過している。

 水鞠からの連絡を待ち続けていたのたが、寝落ちしたらしい。


 床に転がっていたスマホを拾い上げ、画面を確認。

「……!?」

 メッセージが着信している。


 ヤバい。完全にスルーしてた!

 画面をタップしようとした瞬間、スマホが振動した。

 今度は電話だ。こんな時間に?

「水鞠か?」

 違う。

 表示された名前に驚いた。


 『***』


 直ぐに通話ボタンをタップし、耳にあてた。

「もしもし!?」


 声は聞こえない。

 その代わりに激しいノイズ音が響いている。

「……っ!」

 手が痺れる。

 魔法電波を受信しているのか。

『……ダ。 ……カ……』

 男の声か? ノイズが酷くてどうにもならん。

 だったら像換獣を呼ぶまでだ。

 ベッドから立ち上がり、左手に意識を集中させる。

 魔力が発動。

 術式が組み上がり、魔法は完成した。

 光り輝く掌の上にビー玉サイズの球体が転がる。

 

『来い……! 電伝六蟹(でんでんろっかい)


 立体魔法陣が砕け散り、その破片は電気の粒に変化した。

 左手首を中心に電気を纏った六匹の蟹が浮遊する。

「イテテテテ……!」

 やっぱ痛え! 電撃が痛い!

 反射的に両手の指先を確認し、鏡を見た。

 生爪と服は無事の様だ。


『日高誠……』

 魔法電波が安定して声がはっきり聞こえる。

「誰だ?」

 その直後、激しいノイズが発生した。

 しばらくの沈黙の後、男の声が混じる。

 


『私は未来を知る者だ』



 はい?

 今なんて言った? 未来を……何だって?

 「知る者」って言ったのか?

 おいおい。やっと聞こえたと思ったらこれかよ。

 気味の悪い奴だ。何者だ?

「間違い電話だぞ。切っていいか?」

 

 返事の代わりにノイズが繰り返された。

 電伝六蟹が回転を開始。魔法電波を修復させてゆく。

 するとまた、ノイズの奥から男の声が聞こえて来た。


『このままでは水鞠家が崩壊する。……私はそれを回避したい』

 崩壊? 水鞠家が?

「イタズラ電話なら切るぞ。未来人」

 コイツ、とんでもない事を言い出したぞ。


『君なら破滅の未来を回避させる事が出来る。

 水鞠家の従者ではない、君ならば』


 随分と俺の事に詳しいみたいだな。

「本気で言っているのか?」

 激しいノイズ音が響き、そしてまた静寂に変わる。


『きっかけは志本紗英だ』


「志本?」

『そうだ。未来改変が起き、水鞠家の全てが失われる』

「未来改変……!?」

 そこでまたノイズの波が押し寄せた。

『……が、……さ……』

「ちょ、おい!」


『は……、な……』

「もしもし?」

 電伝六蟹が起動しているのに電波が安定しない。

 ノイズが幾つも重なり合い、そしてまた静寂に切り替わった。


『この事を他の誰かに言ってはならない。

 その瞬間、君の知る未来の情報と記憶は杭により消去される。

 それでは誰も救う事が出来ない』


「何だって?」

 杭……。魔法の杭が、俺の記憶を?

『その時が来たら、また……』

「ちょ……」

 通話が終了した。


 スマホを操作し、履歴を確認。

 ダメだ。既にリストから消えている。

 電伝六蟹は役目を終え、電気の球となって砕け散った。

 俺はそれを眺めながら、呆然として立ち尽くす。


「未来を知る者?」

 はは。ネーミングセンスがヤバ過ぎるだろ。

 真面目なトーンで話をしてくる奴の思考回路じゃ無い。

 イカれてるとしか思えない。


 ──だからこそマズいんだ。

 俺が今まで出会って来た魔法使いはそんな奴ばっかりだった。

 だから、未来人は「本物」の可能性が高い。


 水鞠家の崩壊。

 きっかけは志本紗英。

 それを誰かに話そうとすれば記憶が消える……か。

 わざわざ教えてくれてサンキューな未来人。

 だからと言って、すぐに全てを信じろってのは無理なんだよ。

 味方のフリして俺を騙しているのかも知れないからな。


 杭が未来の記憶を消す理屈はまだ分かる。

 未来改変によるダメージから杭を守るシステムと言われれば納得だ。


 でもおかしいだろ。

 未来の記憶が消えるのなら、なぜ未来人から記憶が消えない?

 そしてそれを聞いた俺も記憶を保持したままだ。

 誰かに話そうとする段階で消えるのは何故だ?

 どう考えてもその前に記憶を消すべきだろ。


「そうだ……!」

 メッセージが来ていたのを思い出した。

 スマホのアプリを立ち上げ、確認する。

 相手は「***」だ。

「やはり未来人か……」

 着信は二回。十分前と十五分前。内容は……。


『水鞠コトリが戦闘を開始』

『従者のアバターが現れる』

『明日の科学部は休止』


 ……何だこれ?


『日高誠』

 気付くと目の前に弓犬が立っていた。

「本当に来た!?」

 いつの間にか窓が開けられ、侵入していた様だ。

 相変わらず唐突過ぎるだろ。やりたい放題だな!


『本当に、とは?』

 首を傾げる弓犬。

「いや、そんな気がしていて。それよりも水鞠は……?」

『コトリ様は現在、結晶体との戦闘中です』

「え!?」

 本当に結晶体が出現しているのか。


 弓犬は静かな口調で状況説明を始める。

『現在、水鞠家の管理地に魔法エラーが大量発生中。

 緊急臨戦モードに移行。

 従者専用の魔法アプリでのみ連絡が可能になっています』

「それで連絡が出来なかったのか……」

『現在は長らく沈静化していた魔法エラーが爆発している状態です』


「いくら何でも、いきなり過ぎませんか?」

『今までが異常だったのです。正常な状態に戻っただけ、ですよ』

「戻った……」

『沈静化するまでの間、化学部の活動は休止となります。

 その事を伝えに来ました』


 待て待て。全て未来人のメッセージ通りになってるぞ?

 やっぱり本物なのか……?

「弓犬! ……あれ?」


 気付くと弓犬の姿が消えていた。

 ちょ、嘘だろ。

 慌てて見渡すが、茶色のヌイグルミの姿は何処にも無い。

「帰ったのかよ……」

 かなり緊迫した状況の様だ。


 ここでの判断ミスは命取りになる。

 まずは水鞠に送ったメッセージを消しておくべきだ。

 志本紗英とのやりとりを書いたメールは危険過ぎる。

 臨戦モードとやらが終了した直後に送信されるかも知れん。

 水鞠なら僅かなヒントから未来人に行き着くだろう。


 再度メッセージアプリを起動。メッセージを確認する。

 送信済みリストを見て驚いた。

「消えてる……」


 未来人の仕業なのか、又は未来に関わる情報だからかは分からない。

 理由は何であれ、水鞠コトリへのメッセージは綺麗に消えている。

 安心と同時に、何とも言えない恐怖を感じた。


「マジかよ……」

 俺はまた、とんでもない奴に絡まれてしまったらしい。

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