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引力と猫の魔法使い【リメイク版】 第八章「ゲーム世界と魔法攻略」  作者: sawateru
第三章 目覚める魔法と未来を知る者

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第49話 日高誠と諸刃の剣

 正直な所、俺の心は穏やかでは無い。

 志本紗英の異変。

 その事がどうしても気になる。


 志本の情報は放っておいても勝手に入って来るだろう。

 だがそれは、誰かのフィルターにかけられたものだ。

 正確では無い可能性がある。それでは意味が無い。

 実の所、俺は確実な情報を手に入れる方法を持っている。

 それを今、使うべきだと決めた。

 


 帰宅後。

 荷物を玄関に置き、すぐに台所へ向かう。

「母さん。ちょっと話があるんだけど」

「あら、マコちゃん。なぁに?」

 夕飯の洗い物をしていた母さんが振り返った。


 日高みなみ。

 志本紗英の母親とは小学生時代の親友で親交が深い。

 俺と志本の情報も頻繁に交換している様だ。

 なので、例のイケメンについて何か知っているかもしれん。


 これは諸刃の剣だ。

 志本の事を知りたがっている事が本人に伝わってしまう。

 この状況だ。良い方向に進むとは思えない。

 ……ま、いっか。

 魔法運命値の変動で俺の存在が消える心配はもう無いんだ。

 余計な事は考えずに訊けばいい。


「その……志本の事なんだけど」

「あら!?」

 母さんは驚きと嬉しさが混じった表情だ。

「珍しいじゃない。どうしたの?」

「いや、その……」

「そう言えば紗英ちゃん、

 最近マコちゃんの話をしなくなったって聞いたわよ」

「そ……そうなんだ」

 て言うか、その前はしてたのかよ。

 赤面しちゃうだろ。

 

 母さんは俺の顔を見つめた後、ニコッと笑った。

「紗英ちゃんと喧嘩したの?」

「け、喧嘩って。俺と志本は元から関わりが無いんですけど?」

「あ、そう聞いてたわ。マコちゃん学校でもそっけないって」

「う……! 相手が人気者だと色々と気を使うんだよ」


「そうだよね。紗英さん可愛いもんね」

 そう言ったのは妹の美希だ。

 ジャージ姿で牛乳パックを片手に背後から現れた。

 マイグラスを手に取り、牛乳を注ぐ。

 トレードマークの主張の強い眉毛は逆アーチを描いている。


「最近お兄ちゃん調子乗ってるよね」

「どう言う事!?」

「紗英さんとか、水鞠さんとか、やたらと美人と絡むし」

「そう言うなら学校に観に来い。

 俺が絡んでるの、ほぼ吉田だけだからな」

「この女たらし!」

「頼むから話を聞けよ」


 不機嫌な美希を宥めるが、何かと言い返して来る。

 そうしている内に「ぽよん」と謎の着信音が鳴った。

 「あらあら」と、母さんがスマホを操作しだした。

 メッセージを受信した様だ。

「紗英ちゃんのお母さんから。さっそく訊いてみたのよ」

「何を?」

「最近、紗英ちゃん何かあった? って」


 おお、マジか。

 素早い対応感謝だよ。さすがは母さん。

「それで?」

「海外に転居していた幼馴染の男の子と偶然会ったみたい。

 学校の人に見られて大変になっているらしいわよ」


「海外……幼馴染……」

 何だよそのベタな設定は。

 弓犬の読んでいた漫画にありそうな展開だな。

 その話に美希が喰い付く。

「ねぇねぇ、どんな人!?」

「ああ、イケメンだったぞ。背の高いスポーツマンってやつだ」

「見たの!?」


「まあ、偶然にな」

「そんな偶然ある!?」

「あるんだよ」

 この魔法の世界ではな。なんて言える訳が無い。

 すると美希は勝ち誇った様子で、

「そうなると思った! お兄ちゃんに紗英さんは勿体無いよ!」

 すっかりご満悦だ。


「じゃあ、水鞠ならいいのか?」

「いい訳ないでしょ!」

 結局ダメだった。

 まあ、美希が彼氏連れて来たら俺だって複雑な気持ちになる。

 訳の分からん奴だったら速攻別れさせてやる次第だ。

 

 美希は視線を逸らしてから小声で、

「私は水鞠さんよりは紗英さんの方がいいけど……」

「そ、そうか……」

 それはそうだよ。

 いきなり家に来て、おやつだけ食べて帰っているキャラだしな。

 怪しさメーターは天井知らずだ。

 なので、水鞠の好感度を回復せねば、とは思っていた。


「あのな美希。水鞠は……」

「どっちかと言えば、だからね!」

 美希は話を打ち切る様にしてリビングを出てゆく。

 そこで玄関のチャイムが鳴り、足を止めた。

「荷物? こんな時間に珍しいね」

 

 母さんが「あらあら」と玄関に向かう。

「紗英ちゃんよ」

「嘘!?」


 ちょっと待ってくれ。何でこうなった。

 展開が急過ぎてついていけねーよ。

 志本が家に来た? 何の冗談だよ。

 俺が動揺している間に、母さんが玄関の扉を開く。

 

 そこに立っていたのは志本紗英だ。

 帰宅直後だったのだろう。俺と同じ制服姿だ。

 志本は挨拶の後、手にしていた紙袋を差し出した。

「これ、母からです」

「あらあら。わざわざ来てくれてありがとう」


 母親同士で口実まで作って家まで呼んだのか。

 どんだけ世話好きなんだよ。

 本当に喧嘩していると思っていそうだな。

「紗英ちゃん、上がってく?」

 出た! こうなると思ったよ。

「いえ私、予定があるので失礼します」

 丁重に断る志本。

「あら残念……。また今度ね、絶対ね!」


 志本が玄関を出て、お辞儀をしてから扉を閉めた。

 その直接、母さんが俺の肩を叩く。

 手にしているのは謎のビニール袋だ。

「何これ?」

「マコちゃん。これを紗英ちゃんに渡して来て」

「何で今!?」

 自分で渡すチャンスなら幾らでもあっただろ。

 ──ワザとだ。

 どうしても俺と志本で話をさせたいらしい。


「了解……」

 俺は母さんからビニール袋を受け取り、玄関を出た。

 細い路地はいつもの様に薄暗い。

 その先に志本紗英の後ろ姿が見えた。


 やべ。家に入ると面倒臭い事になる。

 その前に渡しておきたい。

「志本!」

 

 呼び止める事に成功。

 振り返る志本紗英の元に走る。

 俺は追い着いた後、ビニール袋を差し出した。

「これ、母さんから。渡して欲しいって言われて……」


 志本紗英は無表情のまま両手で受け取る。

「……ありがとう」

 素気ない態度で背を向けて歩き出す。

 いやいや、それだけかよ。

 

 志本の後ろ姿をしばらく見送った後、家に向かって歩き出す。

 夜空には星が一つも無い。

 しばらく雨模様は続きそうだ。

 自然と切ない溜息が出た。


「痛っ?」


 全身に電気が走った。

 これは……この感覚は……。

「魔法電波か?」

 ポケットに入れていたスマホを取り出し、画面を確認。

 メッセージが一件。


 相手の名前は……「***」か。

 昨日着信していた名前だ。

 そういや、こいつの正体を弓犬に確認するのを忘れていた。

 すぐにタップしてメッセージの内容を確認する。

 



 『志本紗英から目を離すな』




 ……何だよ、これ。

 一体誰がこんな事を?

 それよりも、目を離すな? 志本から?

 意味が分からない。だが一つだけ明らかな事がある。

 このまま志本を家に帰しては駄目だ……!


「志本!」

 走り出し、再度追い着いた。

 乱れた息を整え、志本の反応を待つ。


 志本はビニール袋を両手で持ったまま、ゆっくりと振り返る。

 肩までの長さに整えられた髪が静かに揺れた。

「何?」

「えっと、あの……」

 何て言ったらいいんだ?

 ダメだ。どうしたらいいか分からない。

「用が無いなら帰るけど」

 冷たく言い放たれてしまった。しかも視線がキツい。

 そうだ。今が無理なら……。

「志本。連絡先を教えてくれないか?」

 

 あ、何言ってんだ俺。馬鹿なのか?

 避けられている相手から連絡先なんて教えて貰える訳無いだろ。

 これじゃ完全にストーカーだ。


 激しく後悔していると、志本がビニール袋を片手に持ち替えた。

 そして制服のポケットからスマホを取り出す。


 え、マジ?

 志本がメッセージアプリのバーコードを表示して来た。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 慌てて自分のスマホを取り出す俺。

 不慣れな手付きで志本のバーコードを読み取った。


 その直後。一瞬だけ目眩に襲われる。

「な……?」

 視界がグニャリと溶け、すぐ元に戻った。

 ……何だったんだ? 今の。


 志本はアドレスの登録が完了するとすぐにスマホを仕舞い、

「じゃあ、さようなら」

 それだけ言って自宅へと歩いて行った。


「どうなってるんだよ。これ……」

 勢いで志本紗英のアドレスをゲットしてしまった。

 この事を水鞠に報告すべきだろうか。

 内緒にして後でバレたら何を言われるか……。

 なんて、どうでもいい事を考えている場合じゃ無い。


 何だったんだ? あのメッセージは。

 俺はすぐにスマホの画面を確認した。

「え…………!?」


 メッセージが消えている。

「嘘だろ?」

 何度操作し直しても状況は変わらない。

 ちょっと待て。確かに受信していたはずだ。

 そうだ。着信履歴……!

 スマホを操作し、昨日の着信履歴を確認。

「無い……」


 メッセージと電話の着信履歴の両方が消えている。

 俺は夢でも見ていたのか?

 そんな訳ねーだろ。確かに「***」の名前で着信していた。


 ……間違い無い。

「これは魔法案件だ」

 履歴の画面から水鞠のアドレスをタップ。

 スマホを耳にあてる。

 コール音にならず、いきなり音声ガイダンスに切り替わった。

『現在、電話に出る事が出来ません……』


「頼む水鞠。出てくれ!」

 何度もかけ直すが変わらない。

 いや、今までも繋がらない事がほとんどだった。

 こんな事なら従者のアドレスを訊いておくんだった……。

 アホか俺は。


 仕方ない。やる事だけはやっておく。

 現状を説明したメッセージを打ち込み、送信。

 これに気付いたら水鞠から連絡が来るだろう。

 俺だけではどうにもならん状況だ。

 ここは焦らず待つ事にしよう。

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