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第十九段 をりふしの移り変わるこそ(6)

(原文)

御仏名・荷前の使たつなどぞ、あはれにやんごとなき。

公事どもしげく、春のいそぎにとりかさねて催しおこなはるさまぞいみじきや。

追儺より四方拝につづくこそ面白けれ。

つごもりの夜、いたう暗きに、松どもともして、夜半過ぐるまで人の門たたき、走りありきて、何事にかあらん、ことことしくののしりて、足を空に惑ふが、暁がたより、さすがに音なくなりぬるこそ、年の名残も心ぼそけれ。


(舞夢訳)

御仏名や荷前の使いの出立は、このうえなく、情趣がある。

また、その頃になると、宮中での行事が増え、新春を迎える準備が催し行われる様子は、実に素晴らしい。

追儺から四方拝までの流れも、面白い。

大晦日の夜になると、真っ暗な中で、松明を灯して、夜中を過ぎるまで人の家の門を叩いて回り、何をいっているのかは聞き取れないけれど、とにかくけたたましく大騒ぎをして、足も地につかないほどに走り回っていたのが、明け方になると、さすがに音もなく静まり返ってしまう。

そういう時になると、過ぎ去っていく年のことを思い、感傷的となる。


※御仏名:仏名会の通称。12月29日から、3日間、宮中や諸寺で行われた仏事。「仏名経」を読み、三世の諸仏の名号を唱え、罪障の消滅を祈る。

※荷前の使:諸国から奉納された初穂を、十陵八墓に供えるのに、各地に派遣される勅使。

※年末の公事(朝廷の行事):御仏名、荷前、賀茂臨時祭、内侍所の御神楽、京官の除目(人事)、追儺など。

※追儺:12月晦日の夜に、疫鬼を追い払うための行事。中国伝来。室町期には儀式としては廃絶。現在の節分、豆まきは、この伝統に由来する。

※四方拝:元旦の寅の刻(午前四時)に、天皇が北斗七星を拝して、七星のうちの属星の名を唱し、天地四方、諸陵を遥拝する儀式。村上帝の時代から清涼殿東庭で行われるのが、通例となった。



御仏名、荷前の使や、年末の公事、追儺は公式行事に類するので、それなりに情趣がある。

ただ、それ以上に京都市中の風俗が面白い。

真っ暗な京の街を松明を持って、他人の家の門を叩いて大騒ぎ。

それも、暁には、ひっそり鎮まる。

そして過ぎ去った年を思う。


現代なら、カウントダウンなど、たくさんの人が集まって大騒ぎ、というところだろうか。


個人的に好きなカウントダウンは、横浜山下公園の氷川丸の除夜の汽笛。

かつては、花火があがることも、あったようだ。

いずれにせよ、大晦日から新年への移り変わりは、様々な人が様々な感慨を持つ。

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