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人生イージーモードではない。

それは、突然やってきた。

私の15歳の誕生日。一般的に16歳が成人とされるこの国においてあと1年で成人になる私は婚約者もおり、令嬢として華々しい生活が待っているはずだったのだ。

自分で言うのもなんだが、私は眉目秀麗。

美しく長い銀色の髪、光るような黄色い目。実りがある華奢な身体付き。

何人に求婚されたか分からない、自他ともに認める美しさ。女として、人生イージーモードだ。


だが、誕生日プレゼントとして両親にねだった私専用の執事の選考をしている最中。今目の前にいる彼を見て思い出してしまった。

日本に住んでいた前世、というものを。


そこにいるのは、私から見ると俗にいうイケメン。そう、とんでもないイケメンなのだが…この世界では驚くほど醜いとされる顔だ。

整ったパーツ、柔らかな亜麻色の髪、透き通った紫色の目…。どれも素晴らしい

が、この世界ではそうともいかない。

女は基本的に美しく、華奢な身体付きが好まれるが、

男の整った顔は虫のようだから忌まわしいとされ、体つきは大きい方がされる。

つまり、恐ろしく太ったデブでブスがこの世界での男の中では最高レベル、とされるのだ。


「あなた、採用。」

「…は?」

自分から応募しておいて、それの反応。と思ったが、このイケメンはきっとダメもとで来てくれたのだ。

「名前はなんて言うの?」

「ベルント…エーリク・ベルント、です。」

「そう、じゃあベルね!私はイヴ。レイラーギル・イヴよ。エヴァーって呼んで。」

「エヴァーお嬢様、ですか?」

「お嬢様なんていらないわ!」


なるほど、ベルントね。

今の驚いたような顔も、目がいつもより開いていてよく紫が映える。


「…本当に、俺でいいんですか。この醜い顔、見えてますよね。」

「ええ、もちろん。美しいあなたが見えているわ。」

「こんな、この俺のどこが美しいっていうんですか。」

「言っていいの?まず、その程よい筋肉がついた締まった身体でしょ、それにその整った顔、透き通った紫色の目、亜麻色の柔らかい髪…」

「も、もういいです。」

あら、もういいの?まだまだあるのだけれど。と言うとベルは分かりましたから、と頬を真っ赤にして答える。かわいい、と思わず口がニヤけそうになるが咄嗟に口角を下げる。危ない。

「とにかく、ベルはもう私専属の執事よ。これからよろしくね。」

「はい、よろしくお願いします。」

最初に見た時よりも幾分も柔らかい表情で微笑むものだから、こちらが溶けるかと思った。

イケメンは笑うだけで罪である。


それからは早かった。

基本的に両親はわたしに甘々なため、基本的に私の発言を断ることが出来ない。

ベルを執事にすると決めたその日に、お母様とお父様にベルを紹介し、すぐさま私の自室と近い場所に彼の部屋を作るようねだった。

やはり私のお願いは通ったが、何度も

「あんな子でいいのかい?」

と勢いよく聞かれた。いいに決まっている、天下のイケメン様やぞ?と言い返してやりたいが、そうもいかない。何故なら、正論を言っているのは両親だから。

だから、私は常に

「あの方の性格に惹かれましたの。」

とあたかも顔じゃないよ〜アピールを忘れずに言い続けた。もちろんベルには謝っておいた。

ベルは当たり前です。といっていたけれど。

そんな顔も最高!カッコイイ!イケメン!とはやし立てると、もう私の扱いを心得たのか、はいはいと返すだけだった。あわよくば赤面を見せて欲しかったなーと切実に思う。

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