無題
メッセージ性の強い作品ではありませんが、伝えたいことを煙に巻いて、遠回しに表現し、そしてそれでいて筋を通す。
それをイメージしました。
面白くは、ないです。多分。
無題
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寝て、起きて、生きて、また寝て、起きて、そして生きる。毎日、いつでも、この世に生を受けて死ぬまで繰り返される。そんな変わらないもの。変わる毎日、諸行無常と言われる世の中だが、変わらないものも、少なからずあるのかもしれない。
変わらない。その事の大切さ、有り難さというのは、全くもってわからない。
変わらないのだから、「変わること」のことを考えなどしない。
そうして、僕はまた眠る。変わるかもしれない、いや、変わっていく現実から目を背けて、僕は眠る。
1
目が、覚めた。視線がとらえた先には、いつもと変わらない日常が、横たわっていた。仰向けの姿勢を崩さず、朝までねむる僕は、目を覚まし、目を開くと直ぐに同じ天井のシミが目に入る。
いつもと何ら変わらない。そのいつもの光景の、その先も変わらない。ただ、学校に行き、ただ授業を受けて、帰ってきて、生きるのに必要な行動をして、そして家庭学習も程々にまた仰向けに寝る。それを繰り返す。この行動も、未来に進むにつれ、ちらほらと変化が見られるのだろうが、それもまた、日常に飲み込まれてどうでも良くなる。
そして、僕は寝る間、夢を見たことがない。だから、寝ていようが、何も非日常は起こらないのだ。
2
目が、覚めた。すぐに違和感に気づく。目の前に日常がない。ない。あの天井のシミもない。まず、天井がない。そこには、夜が明けたばかりの淡い青色の空が広がっていた。その、僕にとって日常の輪廻から外れた光景に、僕は困惑しなかった。ただ、漠然と「空がきれいだ」としか思わなかった。嫌な予感も、焦りも、非日常にいる興奮も、何も無かった。あっていいはずなのだが。
焦ろうとも焦れずにいる僕は、とりあえず辺りを散策してみることにした。
めんどくさいので、極限まで要約して言おう。
「 森。」
一面の森だった。ただ、森があった。元いた場所を見失わない程度に散策した限り、森以外に繋がる場所もなかった。ここで生きるとなると、食料に困る。そう思ったが、元の場所に帰ると、いつからあったか分からないが、既に死に、調理まで済んだ兎鍋がそこにあった。うさぎは、動物園で見るもの。小動物。特に恨みもなかったのに、食べることについて特に何も感じなかった。
いただきます、そう言って僕は、それを完食した。味については、何故か覚えていなかった。
じゃがいもらしきものが入っていたので、お腹いっぱいになったのか、とても眠くなった。まだ昼過ぎのはずだが、惰眠をむさぼっていても、説教してくるようなものは何ひとつとして存在していなかったので、気にせずに眠った。
3
目が、覚めた。例にもよって、仰向けで寝た僕は、目を開いて少しばかり驚いた。朝だった。昼過ぎ頃から、朝までは、到底眠れるはずもない。しかし。それなのに。僕はそれについて、驚くだけで、不思議とは思えなかった。
周りを見渡すと、した覚えのない焚き火(まだ燃えている)、そして、昨日まではなかったはずの建物。いや、どちらかと言うとテントのようなものか。いつか、歴史の教科書で見た気がするような、民族的なものだった。
その、おそらく家なのだろう建物の中を色々と探してみた。
古びた本の沢山並ぶ本棚、食べ物らしきものが貯蔵されたツボ、そしてテーブル。
今回は、普通に生きていけそうだ。
今回は、という言い回しを不審に思えない自分に、恐怖を覚えるべきなのに、それすら、出来なかった。することも無いので、古い本を読んでみた。日本語で書かれていないはずなのに、普通に読めてしまった。しばらく、その本を読んだ。そこからの意識はなかった。
4
目が、覚めた。
5
目が、覚めた。
6
目が、覚めた。
7
目が、覚めた。
8
目が、覚めた。
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87
目が、覚めた。
そこには、なにも、なかった。この、86回目の、日常でない目覚め。目を開いた先には、必ずなにかあった。今回は何もなかった。「無」をそのまま表現したような、白。空白が、そこにはあった。何も無い。何も無い。
そのはず、だった。なのに、ふと。今まで感じなかった焦りを感じた。恐怖を感じた。
それは、「何も無い」現状に、ではなく。
「ああ、終わったのか」と、何かもわからないような現実を、空白を、何も感じずに受け入れていることにだった。
僕は今、考えずとも分かっている。次眠れば、もう目覚めない。
既に、瞼が重くなっている。
寝てしまいそうだ。
確実に死ぬ。そう分かっているのに。
……僕はそのまどろみに、身を任せた。
2
「昨夜未明✕✕✕✕県✕✕✕✕市に住む高校二年生✕✕✕✕くんが……」
了
この作品には「死」を前書きで書いた筋として、死に至るささいな状況と、死に対しての、曲げた解釈を織り交ぜました。
下手ですが、伏線のような形で、死を匂わせることに挑戦しました。
さて、この話の内容ですが、最後の部分で分かると思いますが、最初、日常を過ごし、寝た後に、主人公は死んでいます。
死ねば、別の世界に飛ばされる。
それに違和感は感じない。
それをルールとして。
最初では、兎鍋。
肉は腐ると、アンモニアを発生します。有毒です。
次は、民族的な建物、テント。
民族間の戦闘を示唆しています。
最後は、白い部屋。
病室、白装束。死のイメージがある色、それが白だと思います。
何度も寝ている間に死に、結果彼は86回、飛ばされることになります。
数字は87。平均寿命を超えた数字。
寿命を全うした場合の年齢、言わば享年をイメージしました。
と、不完全で分かりにくいです。
それでも、すこしでも何かを感じとって頂けたり、面白いな、と思って貰えたら、感想とか頂けると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




