夜の張り込み(4)
【今回の登場人物】
クラ…国王様の孫娘
衛兵三人…クラちゃんの護衛で同行している王宮の兵
ラフロ…家族を森で失ったレイク村の守衛
それから俺達は交代しつつ魔物が入って行った穴を監視したが、再び入り口の岩が開く事は無く朝を迎えた。「何も起きなかったね」「そうですね……」 俺達は守衛さん達の詰所へと移動し、昨夜の出来事を報告すると共に今後の作戦を練る事にした。
「この村でそんな事が……」
話を聞いたラフロさんとその場に居た他の守衛達は言葉を失った。まさか自分たちが住む村の中を真夜中にハイウルフが徘徊しているなんて思ってもおらず、誰もその事に気づいていなかったのだから。
「これはもう既一個人の誘拐事件ではなく、国家間の問題です。証拠もある以上は我々の方で戦力を整えて調査に乗り出すべきでしょう」
クラちゃんの護衛として同伴していた衛兵の一人がそう発言し、他の人もそれに賛同した。俺もその方が良いと思うけど、どうやら問題もあるらしい。
「このレイク村は小さくて平和な村です。なので戦力と言えば私達守衛と実戦経験の無い数名の民間兵しかおらず武器も大した物は……」
守衛が全員出払ってしまうと村の門が無防備になってしまうのでそれは避けたい。
しかしここから一番近い街である王都までは通常なら四日、馬で飛ばしたとしても片道三日はかかってしまい応援を呼ぶにはあまりにも時間がかかってしまう。
「そうか……どうしよう。さすがに俺達だけで調査するのは危険すぎるし……」
「どうしようじゃないですよっ、バスなら王都まで直ぐじゃないですか!」
そう言えばそうだった!
国王様に昨日の出来事を報告すれば証拠の映像もある事だしすぐに兵士を出してくれるだろう。バスは十六人座れるので、それだけの兵力があれば調査も問題ない。
そうと決まれば後は行動に移すだけ!
衛兵の三名とミスズはレイク村で待っていて貰い、クラちゃんと俺は一度王都に戻って国王様へ状況を説明。兵を乗せて今日中にもう一度村へと戻って来る……そういう計画になった。
「じゃあ行って来るね」
帰路は俺とクラちゃんの二人だけ。何かあった時に護衛が居ないのはやや不安だけど片道三時間弱の道のりだし魔物以外に襲われるような事は恐らく無いだろう。
バスの時計は午前八時、みんなに見送られバスは全速力で王都へと向けて出発した。
「うわっ凄いですね、バスってこんなに早く走れるんですか!?」
「うん、今まではちょっとスピードを抑えていたからね」
この王都~レイク村間の道は他と比べて広く、地面もしっかりと踏み固められていてかなり路面状態が良い。今回は状況が状況なだけにいつもより少しスピードを出しても良いだろう。
道中何匹かの魔物と接触した物のバスは順調に走り続け、十時過ぎには王都の門へと到着した。今回の事件が発覚する切っ掛けになった王都の守衛さんにも状況を報告してあげたい所だが、今日はあまり時間がない。
ひとまず隣国が絡む大事になっているという事を簡単に説明し、後日詳しく報告すると約束して俺はバスを発車させた。
「王宮に着いたら私がおじいさまを呼んで来ますね。詳しい事やハイウルフの映像とかはシュウさんからお願いします」
「分かった、クラちゃんお願いね」
時間はまだお昼前。準備にも多少の時間はかかるだろうし、暗くならないうちにレイク村まで戻りたいな……。