夜の張り込み(1)
【今回の登場人物】
クラ…国王様の孫娘
ミツカ・ヨツカ…レイク村で宿屋を経営する姉妹
衛兵三人…クラちゃんの護衛で同行している王宮の兵
「湖楽しかったですか!?」
「「はいっ!」」
宿へ戻った俺たちへ食堂にいたミツカが声をかけて来た。ちょうど良いタイミングだし魚の事を聞いてみよう。
「そういえば前に来た時は沢山いた小魚が今日は全然いなかったんだけど、何かあったの?」
「あー……そうなんですよ。なんだか最近湖の小魚が少なくなてきたって村でも噂になっていて。普通の大きさの食用のお魚は問題ないんですけど何ででしょうかね」
「その後急に小魚が大群で押し寄せて来たんだけど……」
「何ですかそれ!? そんな話は聞いた事無いですよ」
やっぱり……ハイウルフの件といい、この村の人達はまだ気づいていないらしいけどこの村には何か大きな異変が起きている。そんな印象だった。
「もー凄かったんですよ!お魚取り放題だったんですよ!網が必要ですよ網!」
クラちゃんがちょっと興奮した様子でそう言っているが、ミツカの話だと湖の小魚はあまり美味しくないらしいので魚すくいは止めておこう。
「それじゃ、そろそろ夕ご飯にしますね」
ミツカが夕食の準備……と言っても調理をするのは妹のヨツカなのでテーブルクロスを敷いたりという雑務を始めたので俺たちも衛兵三人と合流し、湖での出来事を報告して今夜の計画について話し合う事にした。
「わ! じゃあ今日はみんなでバスでお泊りですか!」
クラちゃんはバスでのお泊りという特別な体験に目をキラキラ輝かせている。その気持ちは分かるけど、今回は危険が伴うそう楽しい物じゃないので、護衛として同行している衛兵三人の顔は真剣そのものだった。
「では、夕食を食べ終えたらバスに移動しましょう」
「「「「「はい」」」」」
「でもラフロさんはどうするんですかっ」
そういえば忘れてたけどこの依頼の発端はラフロさんの家族の行方を探すという事だった。
しかし国王様から直々に調査依頼も受けた事だし、まあ……俺達だけでも良いでだろう。決してラフロさんを迎えに行って経緯を説明するのが面倒とかそういう事ではないから。
「ひとまず今日の所は俺達だけで調査をして、ラフロさんには明日報告に行こう」
食後、ご機嫌なクラちゃんと非常食と言ってお菓子を抱えて乗り込むミスズ、神妙な面持ちの兵三人を乗せバスは宿の裏手から大通りの見張り位置へと移動した。
「それじゃあ気配を悟られるといけないので、窓のカーテンは閉めてエンジンも切ります。緊急時にはエンジンを始動させますので教えて下さい」
「はーい!」
やっぱりクラちゃんだけは元気だった。ミスズは遊び疲れたのか座席を倒してもうすでに仮眠体制に入っている。
というのも俺かミスズのどちらかが起きていて緊急時にはバスのエンジンをかける、必要に応じてバスを発車させるという事になっていた。
エンジンをかける位なら簡単な操作なので衛兵に教える事もできるけど、様々な事情がありできるだけバスの操作を部外者には教えたくない。
幸いな事にミスズは以前俺と一緒に運転の練習をしているので、いざという時の運転は難しいとしてもエンジンをかけるぐらいなら問題ないだろうという事でこの任務を任せた。
ガソリンはまだ満タンに近い量が残っており、今はまだ街には明かりが灯っていてハイウルフがどうこうと言うような時間帯ではない。俺はミスズが持ち込んだお菓子を食べながら兵の人達と小声で雑談をしつつ時間をつぶすことにした。





