隣国の怪しい動き(1)
【今回の登場人物】
国王陛下…国王様
クラ…国王様の孫娘
「えー、二人だけで湖水浴行って来たんですか! 私も行きたかったのに!」
翌朝、ミスズと一緒に王宮へやって来た俺は早速クラちゃんを呼び出した。
事情を説明して国王様へと取り次いで貰おうとしたのだが、湖水浴に連れて行って貰えなかった事でクラちゃんは機嫌を損ねてしまい、三日後に再びレイク村へ行く事を知ると「私も行く!」と言い出した。
「隣国が絡む事件となると王宮関係者である私も同行した方が良いと思います!」
「「ひ、ひとまず国王様に……」」
「分かりました……おじい様を呼んできます」
さすがに俺達で判断できるような事では無いので、この辺りは国王様へ丸投げしよう……。渋々納得し部屋を出て行ったクラちゃんは暫くすると国王様と一緒に応接室へと戻って来た。
「「おはようございます」」
「おはよう、クラから大体の事情は聞いたけどもう一度詳しく聞かせて貰えないだろうか」
「はい、実は……」
俺達は西門の守衛さんに相談を受けた所から順番にレイク村で聞いた事を国王様へと説明した。
「なるほど……私の所にそのような報告は来ていないからレイク村の上層部で話が止まっているのだろうな」
「守衛さんも”報告はしたけど信じて貰えなかった”と言っていましたので、恐らくそうじゃないでしょうか」
「それに加えて個人的に少し気になる事があります。俺達がレイク村の宿に宿泊した日の夜、窓の外からハイウルフの遠吠えのような声が聞こえてきました。あれはそこまで遠く無い場所からだったと思います」
「あっ! そういえばそんな事がありましたねっ」
「あとミスズは変な夢を見たんでしょ?」
「えっ、あの村の中をハイウルフが歩いてたっていう夢ですか?」
「ほう、それは是非聞かせて貰いたいな」
国王様が食いついて来た。
「あっ、でも多分寝ぼけていて夢か見間違いかもしれないんですが……夜遅くに目が覚めてしまって、宿の窓から村の中を数匹のハイウルフが歩き回っているのを見たんです」
「なるほど、それがもし現実であればとんでもない話だな……。シュウ君、一つ確認したいのだがバスに乗っていればハイウルフに襲撃されたとしても安全なのだな?」
「はい、ハイウルフの襲撃は過去にも受けており安全な事は確認済みです。しかし、万が一隣国が関わっており兵士から攻撃を受けた場合は何とも……」
それを聞き、少し考えこんだ国王様はとんでもない事を言い出した。
「ではシュウ君、これは私からの個人的な依頼という事で、レイク村の守衛と一緒にこの件の調査をお願いできないだろうか? 隣国が関わっていた時の為に王宮からはクラと兵を何人か同行させよう」
「「えっ!?」」
「やったー湖だ!」
大喜びするクラちゃん。まさか国王様がクラちゃんの同伴を許可すると思っていなかった俺達は驚きのあまり次の言葉が出てこなかった。
「隣国兵からの攻撃については心配要らない、バスの目立つ場所へ我が国の紋章を付けて貰おう。こちらが王宮関係者と分かった上で攻撃を仕掛けて来るような事があれば、それは我が国への宣戦布告。隣国と我が国の兵力差は歴然なので間違ってもその様な事は無いだろうが」
「そ、そういう事であれば……」
国王様は王国の紋章が刻まれた金属板と共に、金貨の入った革袋を俺達へと手渡した。
「しかし国王様、何故クラちゃんも同行を……?」
「王国の紋章を掲示する以上、王宮関係者が一人はいないとまずかろう。危険が無いという事であれば本人も行きたがっている事だし問題無かろう?」
こうして、俺とミスズ、そしてクラちゃん、三人の護衛兵というメンバーで翌日レイク村へと旅立つ事になった。