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守衛さんのお願い(2)

【今回の登場人物】

ミツカ・ヨツカ…レイク村で宿屋を経営する姉妹

ラフロ…家族を森で失ったレイク村の守衛

「まさか……そんな簡単にハイウルフを手なずける事なんてできる訳ないだろ」


 オーラド村での出来事を説明した俺達だったが、ラフロさんはまだ半信半疑。しかしこれで隣国がハイウルフを飼い慣らして何かを企んでいるという推測も全くあり得ない話では無くなってしまった。


 しかし、以前国王様に聞いた話によると隣国とは決して悪い関係ではないとの事。そうなるとラフロさんの家族を連れ去る理由が分からない。


「これは俺の想像だが、うちの妻と子供は何かまずい物を見ちまったんじゃ無いかな。もし隣国の兵士がこの森で何かをしているとなれば国家間の問題になりかねない。そこを魔物に襲われたって事にして消してしまえば……」


「そんな事でっ……」


 ミスズはそう言いショックを受けている様子だったが、動機としては十分すぎる。


「でもそれが本当なら大問題です。俺からもこの件は国王様に報告してみますし、手伝いますので今度その連れ去られたという場所へ行ってみましょう」


 今日はここまで歩いて来たし、明日はツアー客を王都に送り届けなくてはならない。今回はオーラド村の時のように帰りの日程を延ばす訳にも行かないので、どうせバスで二時間ちょっとの距離だし後日出直す事にした。


「それでは三日後にまた伺います」


「ああ頼んだよ」


 守衛さんたちに見送られながら詰所を後にした俺は考えていた。話を聞いた限り、今回は魔物が出没したから討伐という単純な話では無さそうだ……隣国が関わっているとすれば兵士の存在もある。


 魔物に対しては無敵なバスだが、人間である兵士に対しては何の効力も無い。二~三人であれば大型車としての優位性から万が一の時も何とかなるかもしれないけど、大人数で囲まれたり武器を使われるとどうなるか分からない。


 今回ミスズにはお留守番をお願いして俺だけで行った方が良さそうだな。


「私も一緒に行きますからねっ!」


 どうやら俺の表情を見て何となく考えている事を悟ったのだろう。


「でも相手が魔物じゃないかもしれないとなるとさすがにね……」


「大丈夫ですよ、その時はシュウ君が守ってくれますから。ねっ? でも最悪の場合は逃げちゃいましょうよ! ハイウルフが本気で走ったってバスには追い付けませんし」


「……考えておくよ」


 国同士の問題に発展するとなると下手に首を突っ込む訳にも行かないし、ひとまず国王様へ相談してみてその上でどうするかを決めよう。


 俺たちが宿に着いたのはもう日が傾き始めた頃だった。既にツアー参加者たちは戻っており、ロビーは歓談する人達で賑わっている。


「二人ともお帰りなさい、もう少しで夕食の時間ですからお待ち下さいね」


 宿の食堂ではミツカが忙しそうに食事の準備をしていた。と言っても調理の担当は妹のヨツカ。料理の苦手なミツカも料理を運んだりお皿を並べたりとちゃんと手伝っている。


「今夜の食事は何でしょうかねっ」


「この間まかないで作って貰った料理も美味しかったもんね」


 準備が終わったミツカがお客さんを食堂へと案内し始めた。いつもは注文に応じた料理を提供する食堂だが今回のツアーでは特別メニューを組んで貰った。


 裏の湖で取れた魚をふんだんに使ったスペシャルなメニューらしく、出された料理を見たお客の反応も上々のようだ。


 今回のツアーに参加しているのは全員が一般庶民、貴族であれば旅をする機会や娯楽も多くあるかもしれないが庶民はそうもいかない。


 "雑貨屋 旅のしっぽ" の為にも、そしてせっかく参加してくれたお客さんたちの為にも初実施のツアーで何かをやらかす事だけは絶対に避けなければならない……そんなプレッシャーを感じていた俺は一日目を何事も無く乗り切った事で内心ほっとしていた。


 明日はお昼過ぎにこの宿を出発する。

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