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守衛さんのお願い(1)

【今回の登場人物】

ミツカ・ヨツカ…レイク村で宿屋を経営する姉妹

ラフロ…家族を森で失ったレイク村の守衛

 宿に戻る途中、俺は疑問に思っていた事をミツカに聞いてみた。


「そういえばあの湖にはなんで魔物がいないの? 水に住む魔物がいないとか?」


「何ででしょうね。でも水に住む魔物はいますよ」


 何故だろうという表情でミツカはそう答えた。どうやら湖に魔物がいないというのはこの村の人々にとって当り前の事であり、今更それを深く考えるような事も無いらしい。もっとも、ツアー客もいる事だし魔物がいないに越した事は無いけれど……。


 宿に戻り、着替えるからっとミスズに部屋を追い出された俺は、ミツカから借りた地図で守衛さんがいるという詰所と森の場所を確認しておく事にした。


 どうやら詰所までは遠くないみたいだし、散歩しながら行ってみる事にしよう。


「ねえミツカ、この辺りの森はハイウルフが結構出没するの?」


「えっ、そんな物騒な魔物が出たんですか!?」


「いや、この村の守衛さんが森で遭遇したって話を聞いたんだけど」


 うーん……としばらく何かを考え込んでいたミツカはこう答えた。


「うちには旅人もたくさん泊まりに来るので、その手の話があれば耳に入る筈なんですが……。最近村の近くにそんな強い魔物が出たって話は聞いた事がありません。……何かあったんでしょうか」


 そういえばこの国ではハンターギルド的な場所は無かったっけ。そうなると必然的に魔物に関する情報は旅人の拠点である宿屋に集まるって訳か。


「今から詳しい話を聞きに行くから、また何か分かったら報告するよ」


「ありがとうございます、もしそんな魔物が出没しているのであれば宿でも注意喚起をしなければいけませんので」


 着替えの終わったミスズと入れ替わりで部屋へ入り、急いで着替えた俺は一緒に行くっ!というミスズを連れて守衛さんがいる北の詰所へと向かった。


「ここかな?」


「ここじゃないですか?」


 教えられた場所にあったのは守衛の詰所というより普通の民家のような建物だった。レイク村は小さな村だしこんな物なのかもしれない。


「「こんにちは」」


 恐る恐る扉を開けると、そこには数名ガタイの良い男性が座っていた。王都の守衛さんから話を聞きラフロさんという人を訪ねて来たと話すと一人の男性が歩み寄って来る。


「私がラフロだが、そうかあいつから……」


「何かお手伝いできることがあればと思ったのですが、詳しくお話を聞かせて頂けませんか?」


「君たちの事は聞いているよ、国王陛下からの信頼も厚いそうじゃないか。まあ入りな」


 奥の個室へと案内され、俺たちの前に腰かけたラフロさんは経緯を話し始めた。


「実は、まだ誰にも言っていない事なんだが……単にハイウルフと遭遇して家族を連れて行かれちまったってだけじゃ無いんだ」


「「それはどういう事ですか!?」」


「まあそう焦るな。この辺りの森はハイウルフ程のランクが高い魔物が出るような森じゃないんだよ。だから俺も安心して家族連れで薬草を取りに行ったんだ。そしたら突然木の陰から三匹のハイウルフが出てきて、あっという間に妻と娘を咥えてどこかへ行ってしまいやがった。


俺は必死になって追いかけたけど、さすがにハイウルフには追いつけない。でも俺は見たんだ、そのハイウルフが隣国の紋章付きの首輪を付けているのを!」


「「隣国の紋章!?」」


「ああ、間違いない。ハイウルフってのは仕留めた獲物はその場で食うか、腹がいっぱいなら放置してどっかへ行ってしまう。持ち帰るなんて聞いた事無いし、隣国はまるで犬や馬みたいに魔物を飼い慣らして何かに利用しようと企んでいるんだ」


「もしそれが本当なら大変な事じゃないですかっ!?」


「ああ、俺もそう思って上に報告したんだが、家族を失ったショックで頭がおかしくなったと思われただけ。証拠も無しにそんな非現実的な事を信じる奴なんて居やしないよ。だから王都へ行った時に親友へ愚痴をこぼしたんだ」


「そういう事だったんですか……でもハイウルフを飼い慣らすなんて……」


「「あっ!!」」


 俺とミスズはハイウルフを飼い慣らして悪事を働いていた者、そうオーラド村の村長の事を思い出した。

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